内藤由樹の海外武者修行ログ vol.16 動物と仲良くなった話
2012年関西で行われた日本最大級の写真イベント「御苗場」でレビュアー賞を受賞した注目若手作家・内藤由樹。
世界各地を巡り、現在ペルーにある「Centro de la imagen」のマスタークラス在籍中。
http://yuki-naito.tumblr.com
ジャングルの家では、たくさんの動物と一緒に住んでました。
牛とか、犬とか、ブタとか、鶏とか、アヒルとか、
イグアナ?大きいトカゲ、小さいフクイラプトル(恐竜)みたいなのもいた。
泊まっていた家は、よくあるジャングルの家!という感じで、家の内と外の境目がないです。
窓も無く風がそのまま入る、子どもが通り抜けられそうな荒めの木でできた格子があるだけです。
どこまでが内なのか、もはや、どこまでも外なのだ、という感じです。テリトリー観が揺らぐ。
そんな家なので、愉快な仲間たちの動物が、よく家の中に入ってきてました。
動物と一緒に生きていました。
朝は5時頃、鶏の鳴き声に起こされます。
そして挨拶をしにいって、朝ご飯に使う卵をいただきます。
ある日、その鳴き声がとても近かったので、そして腹部に違和感があったので何かおかしい…
となって起きたら、鶏が私の部屋に入ってきて、お腹の上でコケコッコ言ってました。
タンクトップ1枚しか着てないお腹の上に。爪が、お腹にちくちくしました。
夕食後にハンモックで寝ているとヤモリの鳴き声がキュウキュウ聞こえてBGMでした。
ある夜、顔面にヤモリが落ちてきました。とてもびっくりしたけど、ヤモリの方がびっくりしていたので冷静に対応しました。
飼っている犬には始めは警戒されてたけど、慣れてくると私のことも認めてくれました。
ある日森の中で野犬に吠えられて怖くて泣きそうになっていると、その犬がやってきて助けてくれました。わんわんわんわん!!!と鳴きながら茂みの中からザザーっと飛び出してきて、野犬たちの前に立ちはだかる。かっこいい…
昔、キャラクターショーで、悪者に捕まって、子どもたちと一緒にヒーローの助けを呼ぶお姉さんのバイトをしていたことがあって、いちいち毎回ヒーローにときめく、ということがあったのですが、まさにそんな感じでした。
わたしを怖い野犬から救うために来てくれた犬に、ときめいた。
家まで一緒に帰ってくれました。
彼には名前が無かったので、太郎と名付けた。
ハンモックで昼寝していると太郎も飛び乗ってきて一緒に休みました。
けっこうでかいのですがそれでも無理矢理乗ってきて、バランスをとるのが難しかった。
たくさんの友情と、ノミをくれました。
しばらく痒かった。
蚊も、それはそれは、朝夕はめちゃくちゃたくさんいて、決して動きを止めてはいけなかった。
常に動き続ける。それでも食らいついてきます。
噛まれまくりの腕はアレルギー反応でぼこぼこになりました。
そして、飼っている子ブタがとても可愛かったです。
家の周りにはマンゴーの木がたくさんあって、
飛び蹴りをしたら落ちてくるのでお腹が減ったらそれを拾って食べるのですが、
わたしが蹴っていると寄ってきて、ブーブー言って応援してくれます。
落ちたマンゴーはブタと私で競争して、早いもの勝ちです。
でも、家のかーちゃんに「あんまり木を蹴っちゃいけません!」って怒られたとき
ブタだけ逃げました。
ブタも、かーちゃんの怒りは感じとるのだろうな。と思いました。
写真はそのブタたち。特に仲のいい子が2匹いたので、
ブーちゃんとターちゃん。と名付けました。
内藤由樹 / ないとうゆき
1987 年大阪府生まれ。2013年 キヤノン写真新世紀 佐内正史選・佳作/第2回御苗場夢の先プロジェクトグランプリ/キヤノンフォトグラファーズセッション ファイナリスト/2012 年 御苗場vol.11 関西 レビュアー賞/写真集に「being」(2013年・TIP BOOKS)がある。
次の話を読む
vol.17 居候先のじいちゃんがポートフォリオの編集を手伝ってくれた話
vol.18 自転車で有刺鉄線に突っ込んで牛にモオオーと鳴かれた話
vol.19 神様みたいになってしまった話