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内藤由樹の海外武者修行ログ vol.24 乞食のプロ根性を垣間見た話

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2012年関西で行われた日本最大級の写真イベント「御苗場」でレビュアー賞を受賞した注目若手作家・内藤由樹。
世界各地を巡り、現在ペルーにある「Centro de la imagen」のマスタークラス在籍中。
http://yuki-naito.tumblr.com

シャーマンの儀式が終わった後も、しばらくその村に居ました。
観光客というより、そこに沈没しているヒッピーが多くて、
もうそこに3年も住んでる旅行者とかいて、ビザはどうやってるの?と聞くと、
いろいろと抜け道があるようです。
糸や石でつくったアクセサリーや、なにかよくわからない怪しいものを売っているヒッピーもいて、なんだかよくわからないけど、収入があるとビール買ってみんなに振る舞ってくれていました。みんな貧乏だったけど、楽しかった。
旅行に疲れていたし、飽きていたし、湖が綺麗で癒されて、1日4$の個室の快適な部屋も見つけたので、そこにいることは自分にとってもとても良かったです。
ペルーのマスタークラスに送るためのポートフォリオを作っていました。
朝湖を散歩して市場で果物を買って宿に帰ってきて台所のある屋上、湖が見える、で提出資料を作っていました。
ステートメントも全てスペイン語で書かなきゃいけなかったけど、スペイン人のヒッピーの友だちに助けてもらったりしながらやってました。

さて、その村にいる有名な、現地人の乞食老夫婦の話をします。
本当にお金が必要そうな出で立ちで、短期滞在の観光客はけっこうお金をあげていたけど、
私は絡まれてもノーと言っていました。
しかしなぜだか彼らは私をターゲットにロックし、なんとか金を巻き上げようと何度もトライしてきました。
私を見かけると、先回りして待ち受け、腹が減ったと嘘泣きしてせびってきたり、何故かキレながら金をよこせと言ってきたりもしました。

ある日男性の方にしつこく腕に絡み付かれ、本当に嫌だったので振りほどいたら大げさによろけたフリをして(だってタイミングが全然あっていなかった)、この日本人に突き飛ばされたー!と叫びましたが、周りの人も慣れているので無視してて、私も宿に帰りました。
次の日、道で見かけると男性の方が目を閉じて横たわっていて女性が私を指差して、あいつのせいでウチの旦那が死んだ!云々というようなことを言い出した。
それから私に寄って来て、慰謝料をよこせ、的なことを早口でまくしたてて
チラッと男性の方を見たらものすごい蠅がたかっていたのでもしかしたら…と思い、
さすがに焦り、気がサーッと引けていって、どうしようどうしよう、となっていたら、
野良犬が一匹やってきて男性の顔を舐めたくった。
そしたら
舐めんなあっちいけコラ!
ってその男が急に起きて犬を蹴った。
死んだフリだった。
嘘つき!ばか!といって走って逃げた。
やっぱプロは根性がある。本物だ。私もいつか本物になろう。と、
美しい湖を見ながら思いました。

写真はその村の友だち、ぶーちゃんというあだ名の少年です。

内藤由樹 / ないとうゆき
1987 年大阪府生まれ。2013年 キヤノン写真新世紀 佐内正史選・佳作/第2回御苗場夢の先プロジェクトグランプリ/キヤノンフォトグラファーズセッション ファイナリスト/2012 年 御苗場vol.11 関西 レビュアー賞/写真集に「being」(2013年・TIP BOOKS)がある。

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