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HOW TO / 作品制作のヒント

写真展や組写真のセレクトで迷わない!はじめての写真編集


枚で表現する「単写真」に対して、複数枚の写真でテーマやストーリーを表現する「組写真」。写真展やフォトブックをつくる際に、複数枚でどう見せるか迷ったことがある方も多いのではないでしょうか?

「どうやって写真を並べればいいんだろう?」「思ったように意図したことが伝わらない」そんな風に感じたことがある人もいるはず。
そんなとき、必要なのが「写真編集」と呼ばれる作業です。難しそう…と思われるかもしれませんが、基本のルールがあるので、ご安心を。

本記事では、組写真、取り組んでみたい!というみなさまに向けて、組写真の基礎をお伝えします!

写真編集には、
・事象順に並べる「時系列型」
・自分の作品のダイジェスト「カタログ型」
・ルールを決めて同じジャンルの被写体を撮る「タイポロジー型」

などがありますが、今回は
・ストーリーで読ませる「物語型」
の編集方法を、PHaT PHOTO写真教室講師の、松本友希先生の写真を使用してビギナー向けの編集レッスンをしていきます。

この記事の内容
1.編集をするうえでいちばん大切なこと
2.2つのステップ「仕分ける」と「並べる」
3.実際に編集してみた!

1.写真を編集するうえでいちばん大切なこと

「編集」をはじめるまえに、みなさんに質問です。
「写真を組もう」と思ったときの「ゴール」は何でしょうか?
写真展?写真集?
…写真集とまではいわず、フォトブックやポートフォリオですか?
あるいは、「PPC道場」でもいいかもしれません。
どんなゴールであっても、「写真を組む」ということは、
誰かに写真を見せようと思っているということですよね。

みなさんの手元にある写真を使って、
見てもらう人に何を伝えたいのでしょうか?

当たり前のことなのですが、
写真を組むうえでもっとも大切なことは、
「その写真で何を伝えたいか」を持つことです。

「自分が見た美しい風景を見せたい」でもいいし、
「旅での体験」でも構いません。

表現するということは、「見る人に何かを届ける」ということ。
写真を並べる前に「この写真で言いたいことって、なんだろう?」
ということを、少し考えてみてください。

2.2つのステップ「仕分ける」と「並べる」

さて、伝えたいメッセージが少しでも浮かび上がってきたら、
写真を並べる作業にはいりましょう。

今回はPPC道場のルールに沿って、5枚で組みます。
5枚というのは非常に汎用性があります。
5枚をベースに10枚にも増やせますし、
20枚にしてブック構成も可能になります。

ステップその1「仕分ける」

最初に、ずらっと写真を机の上に並べます。
今回用意したのは写真は、23枚。

大切なのは、「プリント」にしてみることです。
パソコン上で選んでもいいのですが、写真全体を俯瞰するためには
小さいサイズでいいのでプリントアウトすることが重要です。

これを、ざっくり「仕分け」します。
写真を客観的に見ることで、編集は格段にしやすくなります。
自分の撮影の傾向や、メッセージが明確になることにもつながります。

はい、こんな感じで仕分けました。
大まかですが、左上は「空」、右上は「花」、
「植物」や「水」、「人」でまとめています。
厳密な仕分けでなくて構いません。

5枚という少ない写真でまとめるので、
「空」の写真が5枚中2枚あっても、伝わる情報量はほとんど変わりません。
同じ情報が伝わる写真より、違う写真を入れた方が良いですよね。
それを明確にするために、この仕分け作業を行います。

ステップその2「並べる」

では、仕分けた写真をもとに5枚の組写真をつくっていきましょう。
今回の松本先生の作品のテーマは「ひっそりと息づくもの」。

並べる順番ですが、下記を参考にしてみてください。


これは、「物語」をつくりやすい組み方です。

1枚目:ツカミ

まず自分の作品に興味を持ってもらうための1枚を選びます。
見過ごされないよう、多少インパクトのある写真を選んだ方が良いでしょう。
この写真を入り口に、自分の写真の世界観に入ってもらうような目的で選んでみましょう。

2枚目:シーン

1枚目で相手の心をつかんだら、このシリーズがどのような場所、
シチュエーションで撮影されているのかを伝える必要があります。
小説や映画も、「どんな場所が舞台か」を伝えず物語が進むことはありませんよね。
状況を説明したうえで、伝えたいことへとつなげていきます。

3枚目:ツナギ

2枚目で説明した「どんな状況か」から、
「メイン」カットに繋げるための1枚を選びましょう。
ただし、「ツカミ」や「シーン」と同じ意味の写真は必要ありません。
仕分けた写真を見ながら、メインの写真を引き立てる1枚を選んでください。

4枚目:メイン

ここが、一番伝えたいこと、もっとも言いたいことを伝える写真が入ります。
もっと言うと、1~3枚目は、この1枚を伝えるための下準備、といってもいいでしょう。
そして、伝えたいことがはっきり伝わるような、
インパクトの強い写真である必要もあります。

5枚目:エンド

メインの写真を見せた後の「締め」の写真です。
「エンド」だからといってドラマチックな写真を入れるよりも、
静かに終わるように心掛けた方が全体の流れとしては見心地がよくなります。

 

3.実際に編集してみた!

それでは、以上を加味して組んでみます。
テーマは、「ひっそりと息づくもの」でしたね。

例1:

▲1枚目

▲2枚目

▲3枚目

▲4枚目

▲5枚目

こんなふうに組んでみました。
まず、「ひっそりと息づくもの」のメインになる写真を決めます。
ここでは仮に、「身近で儚い生命」を伝える1枚として、アゲハ蝶の写真をメインにします。
それを4枚目に置き、「これを伝えるための他の4枚」という意識で並べ始めます。

まず1枚目と2枚目。この2枚で見る人を引き込み、
どんなシーンなのかを伝えます。
おばあさんの周りの景色が都会から離れた場所であることや、
入道雲によって季節が「夏」であることを伝えてくれます。

3枚目は、少しトーンを変えて静かな印象を与え、
メインカットと同じ「日の丸構図」にすることで、
視線が中心に寄るような意識をしてみました。

そして4枚目を入れて、5枚目で締め。
「息づいている」というテーマでもあるので、
明るい印象を終わり方をするために「光」がメインになっている写真を置いてみました。

…という感じで、いろんな並べ替えをしながらつくっていきます。

もちろん、これが正解ではありません。
あくまでひとつの例なので、まだまだ可能性はたくさんあります。

たとえば、上記をもとに少し変えてみると、
こんな組み方もできると思います。

▲1枚目

▲2枚目

▲3枚目

▲4枚目

▲5枚目

メインの4枚目は変えずに、別の組み方をしてみました。
最初の組みとは「季節感」が変わりますよね。
「はかなさ」を強調させるために、
2枚目に落ち葉の写真を入れて、季節の設定をしています。
5枚目の印象が少し暗いので、寂しい印象を受けるかもしれません。

次はこちら。

▲1枚目

▲2枚目

▲3枚目

▲4枚目

▲5枚目

こちらも最初の組みをベースにしたのですが、
まんなかに被写体を置く構図が構図が5枚とも似てしまい、少し単調な印象に。
特に3枚目と5枚目がどちらも花の写真なので、
「かぶっている」印象が強くなってしまいました。

例2:

ではもう1例。
今度は、「ひっそりと息づくもの」というテーマの中で、
「祖母との記憶」ということに重点を置いてみましょう。

▲1枚目

▲2枚目

▲3枚目

▲4枚目

▲5枚目

まず4枚目に、「祖母の背中」を置きます。
それを伝えるために、他の4枚を組んでいくんでしたよね。

1枚目、2枚目は、最初の作例と同じように、
「夏」や「海」という、祖母との暮らしについて
伝えるような写真を(想定して)置きました。

2枚目と4枚目は、光のトーンや雰囲気が少し違うので、
3枚目に強い光の写真を置くことによって、メインカットに繋げます。
そして、空を見上げた穏やかな締めくくりかたでフィニッシュ。

次に、別の組み方を見てみましょう。

▲1枚目

▲2枚目

▲3枚目

▲4枚目

▲5枚目

2枚目に女性のシルエットの写真を入れてみました。
写真全体のトーンとしてはそれほど外れていないのですが、
この女性が「祖母自身」なのか、「撮影している私」なのか、
が少しわかりづらい気がします。
「祖母の物語」のはずが、少しブレてしまい、
見る人を少し混乱させてしまいそうです。

組写真は面白い!

こんなふうに、写真の編集を進めていくことで、
「どこから手をつけていいのかわからない!」
という人も、編集ができるのではないでしょうか。

作業を進めていくとわかるのですが、
「これを伝えるためには、今この写真が足りないな」
というテーマに沿って「逆算」した作品づくりができるようにもなります。

もちろん、他の人の写真を見るための訓練にもなります。
写真を「読める」ようになっていくということですね。

「撮る」とはまた違う面白さがある写真編集。
組写真の基礎については、こちらの記事でさらに詳しく解説していますのでぜひチェックしてください。

組写真の作り方|写真集や展示のセレクトに役立つ!知っておきたい編集の“型”[前編]

組写真の作り方|写真集や展示のセレクトに役立つ!知っておきたい編集の“型”[後編]


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