デジタルで作品をつくる上で欠かせないものとは一体?
写真家 藤安淳さんによるBenQ SW271Cレビュー
今回、写真家の藤安 淳さんにカラーマネジメントモニターBenQ SW271Cをレビューしていただきました。
10月末から中国上海にある榕异 (ロンイー)美術館で開催されるグループ展に参加するという藤安さんに、
数あるモニターの中からSW271Cを選んだ理由、使ってみた正直な感想を語っていただきます。
text:藤安 淳
皆さん、こんにちは。写真家/美術作家の藤安 淳です。
僕は「他者との関係性」をテーマに自身が「双子」であることを見つめ直し、カメラという機械を使って客観的に対象を捉えることから作品制作を始めました。
そして「アイデンティティ」や「物事の境界」を考察しながら、普段から「身体的な寄る辺なさ」を感じている自分の感覚をよりクリアにするために、作家活動を行っています。
その目的のために、今までの作品づくりはフィルムで行うことが必然でした。
▽藤安さんの作品「empathize」の一部
しかし、最近では海外での展示機会が増えてきたこと、デジタル技術の進歩、時代の流れ、
そして何よりも自分の興味の変遷に伴って、デジタルで作品をつくることにも興味が湧いてきました。
そこで、制作環境のデジタル化を推し進めるために、カラーマネジメントモニターを手に入れることにしました。
自分なりにいろいろ調べて、価格や品質クオリティ、僕が持っている機材との組み合わせなどを考慮して手に入れたのが、このBenQ SW271Cというカラーマネジメントモニターです。
SW271Cの製品はこちら
重厚な存在感と機能的なデザイン
BenQ SW271Cが手元に届いてから組み立ててみて、まず思ったのが、
「え?!モニター、でっか!」でした。
僕は普段、MacBook Proの15.4インチを使って作業しているので、27インチという存在感に圧倒されました。
いざ組み立てを開始。
この組み立てがめちゃくちゃ簡単で、20分くらいでセッティングが完了してしまいました。
そして何よりも、遮光フードが標準装備されているのが嬉しいところです。
同じくらいの性能の遮光フードを購入すると数万円は掛かってしまいますから。
また、キャリブレーション用に蓋付きの窓があるので、遮光フードを外さなくても測定器を入れることができ、簡単にセットすることができる点もしっかり考えられていますね。
実際に使用し始めて、まず最初に「めっちゃ、良いやんっ!」と思ったのが、
MacBookとSW271CをUSB Type-Cで直接繋げるという点でした。
僕は今までデジタル環境がきちんと整った場所で制作をしたことがほとんどなかったので、パソコン周りの配線は複雑で難しいものだという思い込みがあったのです。
それが60W充電可能USB Type-C端子1本で繋げられる、しかも同時にMacBookも充電できてしまうというのも、とても魅力的なポイントだなと思いました。
作品制作のためのモニターと言っても過言ではない
いざモニター上で写真を見ていくと、やはりそのイメージの大きさに驚きます。
さらには4K UHD(3840×2160)の解像度による描写力、カラー再現力の高さに度肝を抜かれました!
これから僕はデジタルカメラでの作品制作を考えているので、レタッチ作業のことなどを考えると、とても安心できますね。
また、今までにないコーティング方法を採用したARTパネルで反射が最小限まで抑えられていて、MacBookよりもモニター上でイメージを見るほうが眼が疲れにくいのも嬉しいポイント。
そもそも、僕は今までモニターの色についてあまり信用していませんでした。
MacBookから自分が持っているプリンターで写真をプリントしてみると、色や彩度がいつまでたっても合わず、そのクオリティに全然納得できなかったからです。
無駄にプリント枚数だけが増えていき、コストパフォーマンスが悪くなるという悪循環に陥っていたのです。
だからこそ、作品制作のためにデジタル環境を整えようと思った時にまずこだわったのが、
ハードウェアキャリブレーションに対応しているカラーマネジメントモニターでした。
今回、恥ずかしながら人生で初めてハードウェアキャリブレーションに挑戦。
手順としてはまず、ハードウェアキャリブレーションソフト「Palette Master Element」がBenQのサイト上で無料提供されているのでダウンロードします。
次に、遮光フード上部のキャリブレーション専用蓋を開けてキャリブレータを通し、画面にセット。
あとはソフトウェアの指示通りに進めていくだけ。
所要時間は10分も掛からずに終わってしまいました。
ハードウェアキャリブレーションはとても難しい作業だと勝手に思っていたので、なんだか拍子抜けしてしまいました(笑)
極め付けに、「今までありそうでなかった!なにっ??このめっちゃ便利なものは?!」と思ったのは、付属のホットキーパック(OSDコントローラー)です。
今までのモニターでは、モニターの詳細設定などを変更したい時、いちいちモニター右下の小さなボタンを何回もカチカチと押して設定変更をしていたと思うのですが(しかもどのボタンがどの設定変更か分かりにくい・・・)、
このOSDコントローラーを使えば感覚的に、しかも簡単に操作ができます。
コントローラーキー1、2、3にはデフォルトではAdobe RGB、sRGB、モノクロの3種類のカラーモードが登録されていて、ワンタッチで瞬時に切り替えることができるので、まさに画期的です。
この3種類に割り当てることができるモードも自分好みに変更ができます。
ちなみに僕の場合は、
1.校正1(ハードウェアキャリブレーション済みのAdobe RGB)、2.sRGB、3.モノクロ
にして、 プリント、Web、モノクロに瞬時に対応できるようにしています。
この機能は、モニター上でカラーモードを瞬時に変えながら自分の作品を多角的に見ることができるので、作品づくりに多大なインスピレーションを与える可能性があるのではないかと、個人的にとてもワクワクしています!
そして、これからデジタルで作品制作をしていこうと考えている人にはマストのカラーマネジメントモニターだと改めて思いました!
BenQ SW271C
主な仕様
●Adobe RGB99%対応写真・映像編集向けカラーマネージメントモニター
●27インチ4K UHD(3840×2160)の解像度のIPSパネル採用
●正確な色再現を可能にする「AQCOLOR」技術採用
●Adobe RGB99%、sRGB/Rec.709 100%、DCI-P3/Display P3色域 90%までカバー
●スムーズなカラーグラデーションを可能にする10bit色深度
●ムラ補正技術により、均一なユニフォミティを実現
●ハードウェアキャリブレーション対応
●キャリブレーションソフトPalette Master Element(付属)が利用可能
●カラー写真をモノクロでプレビューできる3段階のモノクロモード
●異なる色空間の映像を左右に並べて同時に表示できる「GamutDuo」機能
●Pantone認証、CalMAN認証を取得
●HDR10(PQ方式)・HLG方式対応
●60W給電可能なUSB Type-C搭載
●モニター(遮光)フード標準搭載
●3年間保証/修理期間中に代替機貸出できる「センドバックサポート」対象製品
SW271Cの製品はこちら
藤安 淳(ふじやす じゅん)/写真家・美術作家
1981 東京都生まれ
2005 同志社大学経済学部卒業
2007 写真表現大学修了
京都市在住
主な個展
2019 「Sense of Wonder」元淳風小学校、京都
2017 「focus–feel–think」ビジュアルアーツギャラリー、大阪
2017 「empathize」The Third Gallery Aya、大阪
2014 「empathize」The Third Gallery Aya、大阪
2013 「empathize @ Fundokin Apartment in OITA」フンドーキンマンション、大分
2012 「empathize」The Third Gallery Aya、大阪
2009 「34」The Third Gallery Aya、大阪
2009 「DZ dizygotic twins」塩竈フォトフェスティバル2009、宮城
2009 「DZ dizygotic twins」ギャラリーPIPPO、東京
2008 「DZ dizygotic twins」彩都メディア図書館、大阪
2007 「DZ dizygotic twins」Gallery H.O.T、大阪
主なグループ展
2019 「至近距離の宇宙 日本の新進作家vol.16」東京都写真美術館、東京
2019 「double trouble/double grins/is it so with/twins」Lothringer13 Halle、ミュンヘン、ドイツ
2016 「I Only Have Eyes For You」中之島バンクス de sign de >、大阪
2016 「Satellite824」gallery make、京都
2015 「the Grand Prize Winners of ShaShin Book Award in Paris」tokyoarts gallery、東京
2015 「Portraits」The Third Gallery Aya、大阪
2015 「timelake −時間の湖−」KUNST ARZT/新風館、京都
2015 「record vol.14 “ShaShin Book Award 2014”」in)(between gallery、パリ、フランス
2014 「PHOTO Off 2014」La Bellevilloise、パリ、フランス
2014 「neo-824」The Third Gallery Aya、大阪
2013 「viewing —写真家とポートフォリオ— +鋭漂」塩竈フォトフェスティバル2013、宮城
2012 「第3回ディベロッピング展」海岸通ギャラリー・CASO、大阪
主な出版物
2019 『KG+ SELECT 2019「Sense of Wonder」展 記録集』私家版
2018 『Jun Fujiyasu’s Work 2008-2017』私家版
2008 『DZ dizygotic twins』塩竈市
受賞
2014 in)(between. ShaShin Book Award 2014 優秀賞
2008 第1回塩竈フォトフェスティバル写真賞 大賞
パブリックコレクション
東京都写真美術館