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フォトまち便り「Hello Local」vol.7 郡山写真部~五感で感じシャッターを切った新たな磐梯熱海の魅力~


熊野、富山、郡山、下田という4つの地域で活動する写真部が週替わりで投稿するリレー式連載「Hello local」。今回は郡山写真部による投稿です。
郡山の奥座敷とも言われる磐梯熱海は、豊かな自然と泉質に恵まれた郡山の中でも有名な温泉街です。そんな磐梯熱海に昔から営んでいる梨農園があります。農園での撮影と取材を通して気づいた新たな磐梯熱海の魅力を、郡山写真部2期生が綴ります。


磐梯熱海で営む「上の山彩果園」との出会い

「磐梯熱海で営んでいる梨園の写真を撮れることになりました。」
暑さが和らぎ過ごしやすくなってきたある9月の日、郡山写真部メンバーのグループLINEにメッセージがあった。10月に磐梯熱海で写真展を開催する私たち郡山写真部は、それまでに「もっと磐梯熱海のことを知りたい」とメンバーで話し合い、とあるご縁を通じて地元の梨園農家に撮影を依頼していた。その撮影許可がもらえたのだ。
伊豆の温泉地・熱海に由来しているという磐梯熱海は、静岡出身の私にとって、初めてその地名を聞いたときから親近感が湧く土地だった。
そんな磐梯熱海にある「梨園」。温泉以外の事を知り、どんな所だろう?撮影してみたいと感じて撮影会に参加することにした。
当日は曇り時々小雨。カーナビに従って走り細い道に入る。本当にこの先に農園があるのかな…と少し不安に思いながら抜けると目の前に鈴なりに実った梨農園が見えてきた。

訪れたのは「上の山彩果園」。主に梨を育てており、撮影した時期は収穫の最盛期間近。豊水の収穫時期が近くお忙しい中、時間を作っていただき、阿部さんご夫婦が温かく迎えてくれました。

たくさんの種類の梨を育てている。知らない品種の名前も。

阿部さんからお話しを聞くところ、磐梯熱海地区で梨の栽培が行われたのは明治20年代からだそう。当時は150軒ほどの果樹農園があったが、現在は50軒ほどに減少しているという。代々引き継がれて阿部さんが現在5代目。食卓で「美味しい」と喜んで食べていただけるように安心安全で品質の良い梨の栽培を続けている。そんな長年梨園を営んでいる象徴として、樹齢100年以上の梨の樹がある。農園入ってすぐ目の前に枝が伸び広がる大きな樹で今でも現役だ。
この土地にどっしりと根付きながら、今もなお多くの実をならす姿を見つめていると、この木を大切に育てて繋いできた人の姿を想像してしまう。

見て聞くことで知れること。

柔らかい農園の土を踏み奥に歩き進めると、隣同士の梨の樹が接ぎ木をして並んでいたことにきづいた。私は梨農園に足を運んだのは初めてだったので、てっきり梨の樹が一本ずつ並んでいるのかと思っていたのだが、接ぎ木されていて驚いた。
なぜかの理由を阿部さんに尋ねると、それぞれの梨の樹は養分や実り方に個性があるそうで、お互いの樹を支えあって栄養を分け与えることでおいしい実ができるらしい。目で見るだけではなく、阿部さんのお話を聞くことで、ここに実る梨の魅力をさらに知ることができた気がする。

接ぎ木で連なる梨の樹。枝を支えたり、実る数が多すぎると翌年はうまく実らないため管理が大変だとお話されていた。一つ一つにつくり手の想いが込められている。

阿部さんは今回私たちの撮影を快く受け入れただけではなく、近くの小学校の子どもたちにも農園見学を行っている。今年はコロナ禍のため、実際に農園には来られないが、オンラインで紹介も行なう予定だ。「実際に目で見て感じてもらって、磐梯熱海にこれだけの産地があることを知ってほしい」と話す。

福島県は季節の移ろいがはっきりとし、恵まれた気候で様々な美味しい果物の産地である。そんなフルーツ王国である福島県で、磐梯熱海にある上の山彩果園に訪れてお話を聞けたのは貴重な体験だと感じた。

実際に子供たちに教える予定の阿部さん自作のスライドを使って教えていただいた。

土地を知るとは、五感で感じること

農園見学の終わりに、特別に梨をいただけるということになった。手のひらいっぱいに大きくずっしりとした梨を、私たちはひとり1個ずつ収穫した。香りをかぐと梨の甘い香りが鼻に抜けた。

「上の山彩果園」の梨はそのおいしさからファンがいるほどで県外からわざわざ買いに来られる方もいるという。帰宅後、私は収穫したての大きな梨の皮をむいて切って口にほおばった。とてもみずみずしくてさわやかな甘さが口いっぱいに広がった。

阿部さんのお子さん手描きPOP とてもかわいらしい。

磐梯熱海の広々とゆったりした土地で紡がれる梨農園の光景は、足を運んで話を聞かなければ、郡山に住んでいる私でも知ることのなかった風景だった。
もし、普通に生活をしていたら、温泉地のイメージのままだった土地の魅力を知れたのは、観光で有名な場所を写真に収めるだけでなく、日々の営みの中から抜け出し、その地域に興味を持ち、五感で感じて写真に収めることができたからではないだろうか。
上の山彩果園の柔らかな土の感触、梨のずっしりとした重さ、実のさわやかな香り、小雨にしっとりと水滴が緑と美しく映る景色、そして阿部さんのお話と、五感をフル回転で感じとった景色の余韻の中で、阿部さんの言葉を思い出した。
「自分で手掛けた梨を責任もって出荷し、お客さんに食べてもらっておいしいと言ってもらうのが嬉しい」
磐梯熱海で誇りをもって梨を育て、食べる人たちの笑顔のために生き生きと誇りをもっている阿部さんの笑顔こそ、磐梯熱海の大切な風景なのではいないだろうか。

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上の山彩果園
http://uenoyama-saikaen.com/index.html
〒963-1303
福島県郡山市熱海町玉川字平九郎内10
郡山駅から車で30分
電話:090-1039-7162
※お問い合わせやご来園の際には、お電話お願いします。
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こおりやま写真部フォトフェス 〜あったか、ばんだいあたみ!~

今回紹介した磐梯熱海で10月22日(金)〜24日(日)の3日間、フォトフェスを開催予定です。磐梯熱海に住む人々の写真や風景をはじめ様々な郡山市内の写真を展示し、郡山の魅力を発見できるイベントです。JR磐梯熱海駅の周辺4カ所に展示し、磐梯熱海をまち巡りしながら楽しめます。
五感で楽しめる工夫がされていますので是非街中を散策してみませんか♪

郡山市の写真はInstagramでハッシュタグ「#郡山写真部」をつけて発信もしているので、ぜひ見てみてくださいね。

「こおりやま写真部フォトフェス 〜あったか、ばんだいあたみ!~」 はコチラ


Non. (のん)
1989年静岡県静岡市生まれ。
2019年結婚を機に福島県郡山市に引っ越し。
郡山を知りたい・写真仲間を作りたいという理由で同年、郡山写真部2期生として入部。
普段は会社員として勤める中、福島での日々の景色が新鮮で撮り続けている。
写真は社会人になってからずっと続けて趣味以上のライフワーク。
フィルムとデジタルで日々の暮らしを撮影している。


STORY TELLER / 写真家達の物語 vol.37

フォトディレクターの推し写真集

まちスナ日和