直径35m、周囲110mの小さな島 写真家・むらいさちが語るジープ島の魅力
太陽が照りつける季節がやってきましたね。
「Have a nice PHOTO!」vol.26の特集では、旅する写真家2人が、思い入れのある「奇跡の海」をご紹介。本記事では写真家・むらいさちさんがジープ島の魅力を語ります。
小さいところから世界を見ると面白い
直径35m、周囲110mしかない小さな島、それがジープ島です。グアムからチューク島まで約1時間、そこからボートで30分。宿はありますが、宿泊できるのは最大15名のみです。
僕は珊瑚が好きなのですが、ジープ島の周りには、見たことがないような、きれいな珊瑚礁が残っています。海の元気度合いは珊瑚でわかるのですが、元気な珊瑚礁を見ると僕も元気になって、希望がもらえるんです。
初日や2日目は、電波が通じないのにまだ携帯電話が気になってしまって、日本のことを考えてしまったりする。
でも3日目になると諦めがつくんです。しがらみが取れて無になれるというか、思考がどんどん広がってくる。小さいところから世界を見ると面白くて、考え方も変わったりします。
何もないからこそ、学ぶことがたくさんある。
ジープ島には何もないのですが、何もないからこそ、そこで学ぶことがたくさんあります。ふだんどれだけいらないものに囲まれて暮らしているかに気づいたりします。
たとえば、シャワーはためた雨水のバケツ1杯。それで体を洗うんですけど、足りるんですよ。人間ってそれで生活できるんだなって。
疲れた人がここにくると、本来自分の持っている力が目覚める。再生の島とも言われています。
珊瑚が台風から島を守った
そんなジープ島に、おととし台風が来ました。めったに当たらないのですが、何十年ぶりに直撃したんです。本島の人たちが心配して2度もボートを出したのですが、島にはたどり着けず、転覆して他の島に流されてしまいました。
その人たちは無事だったのですが、実は、珊瑚が防波堤になってくれたおかげで、ジープ島にいた人たちは何事もなくぴんぴんしていたそう。
珊瑚が身代わりになってくれていたんです。珊瑚がなければ、こんな小さな島なんてあっという間になくなってしまっていたかもしれません。
珊瑚はバキバキに折れてしまいましたが、もともと海の状態がいい場所なので、いまは回復に向かっているところです。
いちばん奇跡を感じる海
ジープ島は、僕がいちばん奇跡を感じる海。好きな写真が撮れるし、相性がいいんです。ジープ島を写した『きせきのしま』という僕の写真集は、台風が来る前に出したので、いちばんいい状態の珊瑚の写真を掲載できました。
今度はその「再生を撮りなさい」と言われている気がしています。島が元の状態に戻ることは、人類の希望でもある。それを伝えるのが僕の使命だと思っているので、これからも撮り続けていこうと思っています。
海や水中を中心に世界のさまざまな場所を旅して「しあわせな瞬間」を写す写真家。ジープ島を透明感あふれるタッチで描いた『きせきのしま』、世界各地を旅して写した『しあわせのとき』など写真集多数。muraisachi.com
むらいさち写真集「しあわせのとき」
パステルトーンの淡い色彩が、見る人を幸せな旅へと連れ出してくれます。優しく穏やかな気持ちになりたい時にお勧めの1冊。
muraisachi.com/happymoment
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