写真集
ポートレート好きにお勧めの名作写真集⑤ナン・ゴールディン
ポートレイト撮影は、楽しいけれど難しい。それは撮影技術だけでなく、撮影者のアイディアや人間性が、仕上がりに大きな影響を与えるから。先人たちの有名な撮影エピソードを改めて知れば、「自分はどうする?」そんなワクワクする気づきに出合えるはず!
※PHaT PHOTOvol.92「ポートレイトマイスターに学べ!」号 p.30より抜粋
セクシャルな生活を包み隠さず写し、世間に衝撃を与えた元祖「私写真」
ナン・ゴールディン Nan Goldin(1953 ~)
『The Ballad of Sexual Dependency』Aperture 1986 年
ボストンの中流家庭に育ったナン・ゴールディンは14歳で家出し、女装のゲイたちと一緒に暮らしはじめる。そして18歳頃から、彼女自身が「拡大家族」と呼ぶ、濃密な感情で結びついた仲間たちをスナップし、彼らの誕生パーティなどでスライド上映するようになった。
それが次第に評判になり、音楽を加えた大規模なスライドショーに発展していく。1986年には、最初の写真集『The Balladof Sexual Dependency(性的依存のバラッド)』が出版され、プライベート・ドキュメンタリーの旗手として注目を集めるようになった。
ポーズもとらせない。構図も整えない。生々しい写真の数々
彼女のポートレイトは、モデルにポーズをとらせたり、構図を整えたりするものではない。出合い頭に、ごく近い距離で、どんどんシャッターを切っていく。
その獲物に飛びかかるような撮影ぶりは、時には自分にも向けられることがあって、恋人に殴られて目から出血し、痣だらけになった生々しいセルフポートレイトも残している。
ここがすごい!Master’s Episode
ナン・ゴールディンの有名なセルフ・ポートレイトの話。恋人だったブライアンに殴られ、目の周りを赤黒く腫らした写真を見ると、口紅を塗ってカメラに向かっているのがわかる。本人によると、自分の姿をしっかりと写真に記録しておきたかったので、あえて覚悟を決めて、口紅を引き直して撮影したという。(参考文献:『デジャ=ヴュ』「9 号 私生活」1993 年7 月刊)
ナン・ゴールディンの有名なセルフ・ポートレイトの話。恋人だったブライアンに殴られ、目の周りを赤黒く腫らした写真を見ると、口紅を塗ってカメラに向かっているのがわかる。本人によると、自分の姿をしっかりと写真に記録しておきたかったので、あえて覚悟を決めて、口紅を引き直して撮影したという。(参考文献:『デジャ=ヴュ』「9 号 私生活」1993 年7 月刊)