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御苗場2018 受賞作品&選考理由発表! レビュアー賞 [青山裕企 / テラウチマサト 選出]

Event, 御苗場


テラウチマサト(写真家・御苗場総合プロデューサー)選

 渡邊 慶太

「渋川の恋」

《select》テラウチマサト(写真家・御苗場総合プロデューサー)

選考理由 ポートレイトというジャンルで応募されていたが、壁に掛けた写真にもブックの中にも、屋根瓦が写る街並みや小さな町を連想させる商店の写真などがあり目を惹いた。むしろ風景写真の中に、女性の街中スナップに近いポートレイト写真が入っていた。そしてそれらの写真のすべてが色をなくしたような、光であせたような写真だった。
レタッチで明るくしただけと思う人もいたかもしれない。しかし、彼の狙いは、住み慣れた街を出ること、そして憧れた東京に行くこと、行ってみてわかった故郷への思い。そして一旦離れてしまった後に故郷に帰ったときの心持ち。
そんなことを表現するための考え尽くした明るさと粒子の粗さだったように感じる。改めて帰った街のよそよそしさ。一度は感じる青春を少し過ぎた年代の感情。それを見事に写し撮っていたと思い選ばせてもらった。1枚1枚の写真の切り取り方や構図も見事だった。



concept
写実絵画に魅せられ、写真でその世界を創りたいと思い、「Anti Realism」というテーマで作品を作っています。
写実絵画には命が宿ります。ただ、それはどれだけ見た目が実物と似ていても非なるものであり、描かれたものに宿る命は画家の願望です。描いた画家以外にとっては得体のしれない、その命こそが写実絵画の魅力です。

一方、写真を撮るということは実物から命を写し取る行為です。その写真にどんな加工をしても、自身が実物を前に撮影した事実を否定することはできません。この時点で、写実絵画と同じ世界にたどり着くことは不可能なことがわかります。
だから、キャプションによる言葉の力を借りて、写し取った命を私の願いを込めた現実とは似て非なる世界に入れてみました。

「渋川の恋」は私自身のノスタルジーで構成される世界(似て非なる世界)を舞台とし、撮影した人物のコピー(写し取った命)を主人公とした並行世界の物語です。
今回の作品のモデルは実際に渋川で生まれ育ち、東京で夢を叶えたいという「恋心」を抱いています。彼女は近い将来上京するでしょう。その後の夢の行く末は知る由もありませんが、いつかふと振り返ったときに渋川が特別に美しいことに気づく。
私はこの作品に、ここがそんな世界であって欲しいという願いを込めています。

question
――この作品で伝えたいことを教えてください。
故郷の美しさと、誰もがそう思える世界であって欲しいという願い。


――撮影のきっかけを教えてください。
画家の諏訪敦さんが描く写実絵画との出会いです。作品から溢れる生と死の匂い、その美しさに圧倒されました。

――作品を作る上で苦労したことはありますか?
写実世界についての思考とレタッチ手法の確立に長い時間をかけました。

――作品に対する熱い思いを語ってください!
写実世界を描写するため、反現実化を施した絵画的なビジュアルとしていますが、この作品は写真である必要があります。
これからも「Anti Realism」をより「写実」に近づけるべく写真表現を追求していきます。

――今後目指していることなどあれば教えてください。
人の心を抉るような世界を表現したいです。

渡邊 慶太
1979年東京都出身。2012年に一眼レフカメラを購入し、友人の誘いで人物撮影をした事をきっかけにアートとしての写真に取り組む。以降、ストリートスナップと人物撮影を軸とした写真活動を行っている。webサイト:www.keitawatanabe.com

 


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