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内藤由樹の海外武者修行ログ vol.4 新しいところに移るのは怖い話

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2012年関西で行われた日本最大級の写真イベント「御苗場」でレビュアー賞を受賞した注目若手作家・内藤由樹。
現在世界各地を旅しながら写真を撮影している。
http://yuki-naito.tumblr.com

NYには2ヶ月居ました。
わたしは2011年の東日本大震災後、ずっと日本を転々としていて数週間単位で動いていたので、
2ヶ月も同じところに居るなんてすごく珍しいことでした。 
それだけいると、友だちも増えてきて、メールが来て今日のみに行こうよーとか
近所の美味しいベーグルやさんのバイトのおねーさんに、いつものアレでしょ。って言われたりとか、
毎日行くカフェとか、会うと立ち話する人とか、そういうことが増えて
そこでの生活ができていく。

でも、これは生活とはちょっと違います。
生活ごっこみたいな感じです。
生活って、家を探して家賃を払って、ガスや水道や電気の契約だって英語でして、
仕事もしなくちゃいけない。
旅行をしていると、ここに住めるかもしれないと感じることがたまにあるけど、
それが実現することはない。
生活というのは厳しくて、良いとこばかりを見ていられない。
だから旅行者の自分は、どこにも行けるけどずっとはどこにも居られない。
次の場所に行かなければいけない。

ということで、この後はペルーです。
でも。新しいところに行くのはいつも怖い。
なにがあるかわからないのはわくわくするけど、その何倍もの怖さがあります。
南米だから怖いのかなあと考えたけど、これはなんというか、
転勤で新しい土地に行く不安とかそういうものに似ているのかもしれないと思いました。
転勤したことないから知らないけど。
友だちだって、できるかわからないし。
そこのものと合うかもわからないし。
楽しくなれるかわからない。

せっかくできた「いつもの」を全部手放して、悲しくて寂しくても行かなきゃいけないんだ。と、
JFKの空港でぼーっとしていました。
居候していたアパートにいた日本人の友だちが日本米のおにぎりをにぎってくれて、
それを食べながら、ああもう日本にも帰りたい、どこにも行きたくない。と思いました。
そのままぼーっと飛行機に乗ってペルーに向かう道すがら、
飛行機の窓から見える景色が美しくてハッとしました。
そうだ、見たことないものや経験したことないようなものに出会うために
移動するんだ、と思い出しました。
やっぱり友だちが作ってくれたおにぎりをもう1個食べながら、
その子がくれたお守りを握りながら、寝落ちしました。

 

内藤由樹 / ないとうゆき
1987 年大阪府生まれ。2013年 キヤノン写真新世紀 佐内正史選・佳作/第2回御苗場夢の先プロジェクトグランプリ/キヤノンフォトグラファーズセッション ファイナリスト/2012 年 御苗場vol.11 関西 レビュアー賞/写真集に「being」(2013年・TIP BOOKS)がある。

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