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現代アイドル写真論


Vol.4 “アイドルが撮る写真”の読み方


いま、女性アイドルのブログやSNSが盛況だ。その先駆けはなんといっても中川翔子だろう。とりわけ、「しょこたん♡ぶろぐ」は2004年の開設以来、アイドルブログのロールモデルとなっている。
主要なコンテンツはアイドルの書くテキストだが、それと同等もしくはそれ以上の魅力を放っているのが「アイドルが撮る写真」だ。しかも複数のブログとSNSを運用し、それぞれにテイストの異なる写真をアップする強者もいる。
撮る対象はさまざまであるが、楽屋裏の様子や自分の部屋などオフショット的、プライベート的な写真も多く、ファンにとってアイドルの日常を垣間見れる貴重な機会となっている。最近では携帯やスマホで自らを撮影する「自撮り」も人気で、AKB48の「ギンガムチェック」(2012年)の特典映像には自撮り講座が収録されている。また、グラビアアイドルの倉持由香が2014年1月に発起人となり企画したツイッターの「グラドル自画撮り部」は、新たな「メディア露出」の場をつくったとも言える。
こうしたアイドルが撮る写真に対するファンの視点は非常に多様だ。握手会での会話の糸口とすべく、アップされた写真の細部を隈なく見たり、贈り物をアイドルが身に着けているかどうかを確認したりするファンがいる一方で、解析班と呼ばれる、写真(と様々な情報)からアイドルの住所を割り出そうとするファンもいるようだ。
ファンの性別によっても視点は異なる。アップされた女性アイドルの私服を自らのファッションのお手本にする女性ファンも少なくない。このように写真はアイドルとファンをつなぐ架け橋となっている。
さて、写真はアイドルの秘めた思いも可視化させるようだ。今年11月に卒業するモーニング娘。’14のリーダー道重さゆみのブログには、しばしば本人の写らないメンバーの写真がアップされている。「他のメンバーのことを第一に考える」と心に決めたリーダーの決意表明のようにもみえる。ここにもアイドルが撮る写真の魅力があるのだ。

調文明 / しらべぶんめい
11980年東京生まれ。写真史/写真批評。日本女子大学/京都造形芸術大学/東京綜合写真専門学校非常勤講師。『アサヒカメラ』『日本カメラ』などで執筆中。

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