2016年 東京国際写真 コンペティション受賞者作品
世界の写真コミュニティの懸け橋になることを目的に設立された、東京国際写真コンペティション(TIPC)。全世界で作品が募集され、世界で活躍するキュレーターや写真家、写真ディレクターたちによって、2016年(第4回)は約1300名から8名が選ばれました。今回の募集テーマは「ORIGIN―起源―」。私たちは何者で、どこからきて、どこに属しているのか?アメリカ、ベルギー、イタリア、カナダなど、さまざまなルーツを持つ写真家たちからの回答となる表現を、お楽しみください。展示作品は、東京、シンガポール、ニューヨークにて展示され、世界で好評を博しました。
同コンペティションの募集も現在受け付けていますので、こちらもぜひ挑戦してください。
応募締切:2017年10月2日(アメリカ太平洋夏時間23時59分まで)
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GRAND PRIX WINNER
ベネディクテ・ヴァンダレイト/ Bénédicte Vanderreydt(ベルギー)
「I Never Told Anyone」
MERCREDI DES CENDRES ©Bénédicte Vanderreydt
ブリュッセルのIHECS、バルセロナの演劇学校Xavi Gratacos卒。パリのGobelins Schoolにて写真の知識を深める。このシリーズは「女であること」について民族神話のプリズムを通して探索しようとするもの。パリ・フランス国立図書館、彫刻/写真部門ディレクターであるエロイーズ・コネサからは、「幼少期から大人になるまでに起こり得る連続した女性の役割、たとえば子ども、妻、情婦、母のような、女性のアイデンティティが構築される異なる段階を探索する作家であり、彼女のプロジェクトはいずれも、場の演出と並外れた美学と結びついている。その極めて映画的なイメージは、作品を見た人の記憶に長くとどまる」と評されている。www.benedictevdr.com
エリサヴェト・タモリドー / Elisavet Tamouridou(イギリス)
「State of Things」
View of Amaseia, Amasya 2011(Girls playing during a Pontic Festival in Athens and Amasya landscape, Turkey)©Elisavet Tamouridou
1980年生まれ。ロンドンを拠点に、主に写真に取り組むアーティスト。ロンドン・カレッジ・オブ・コミュニケーションで写真学の修士を取得。20世紀初めのトルコ・ギリシアにおける民族国家形成期に、ポントス人として知られる黒海沿岸のギリシア人は、民族浄化され旧・オスマン帝国の何百万ものキリスト教徒と共に力ずくで追放された。この出来事から約100年経ち、失った家族のアーカイヴを再構築しようと黒海南岸にあるポントス人の歴史的な場所を旅した。本作品は、アーカイヴを生み出す知識や経験、真実と、アイデンティティや民族の歴史をつくる上でのそれらの役割の力関係を探求している。www.elizatamo.com
カイ・ケンマー / Kai Caemmerer(アメリカ)
「Unborn Cities」
(上)Unborn Cities, No.18, 2015.(下)Unborn Cities, No.07, 2015. ©Kai Caemmerer
1988年生まれ。カリフォルニア州ロサンゼルスで活動中。写真学において、Western Washington Universityで学士、Columbia College Chicagoで修士を取得。本作は中国本土の内陸部にある新興都市の建築構造と成長を探求しているシリーズ。この一帯は、西洋における多くの都市モデルとは違い、人間が居住し始める何年も前に建設がほぼ完了している。写真は、まだ人が住んでいない都市で感じられる現実的感覚のシフトについて思いをめぐらした作品。現時点では住まいと言うより建築モデルに見えたとしても、いずれ数百万人の故郷となるだろう未来の大都市の起源を示している。www.kaimichael.com
マグダレーナ・ソール / Magdalena Sole(アメリカ)
「American Roots: The Delta」
(上)TWO BROTHERS’ WANGZ ‘N’ THANGZ RESTAURANT IN CLARKSDALE
(下)KA’LEISHA HURT WITH HER MOTHER IN BAPTIST TOWN, GREENWOOD ©Magdalena Sole
ソーシャルドキュメンタリー写真家。独特の色使いで幅広い感情表現を得意とする。2002年コロンビア大学にて映像の美術修士号を取得。本作品は、ミシシッピ州デルタ地域を撮影した作品。「デルタをはじめて訪れたのは2009年。そしてある意味で、私はまだそこを離れられていない。いや、正確には、デルタが私を離してくれない、というべきだろう。それは北西ミシシッピの肥沃な平地に住む人、この場所によってかけられた魔法のようなものだ。ここでは、土地との繋がり、季節のゆったりとしたリズムによって人々の暮らしが形どられる。おそらく、アメリカのどこでも、これほどまでに生き方において極端であり、感情的な歴史がとても密接に存在する場所はないだろう」www.solepictures.com
ナオミ・ハリス / Naomi Harris(カナダ)
「EUSA」
(左上)Sheriff, Westernstadt Pullman City, Eging as See, Germany, 2010(右上)Street Scrubber, Tulip Festival, Orange City, Iowa, 2014(左下)Dutch Cheerleaders, Tulip Festival, Orange City, Iowa, 2014(右下)Indian Wearing Birkenstocks, Brezno, Czech Republic, 2014 ©Naomi Harris
カナダ生まれ。ポートレイトを専門にする写真家。被写体を通じ、興味深い文化トレンドを探しドキュメントしている。受賞作はヨーロッパ内のアメリカをテーマにした場所、またアメリカ内のヨーロッパをテーマにした場所のドキュメント。2008年6月に南スウェーデンにある開拓時代の西部をテーマにした遊園地ハイシャパラルを撮影することでスタート。ドイツにおけるインディアン祭、アイオワ州オレンジシティのチューリップフェスティバル、アメリカ国内のさまざまな場所で開催されるオクトーバーフェスト、ヨーロッパ中にあるカウボーイとインディアンをテーマにしたアミューズメントパークなど、25以上の場所で撮影。2017年に同タイトルの写真集が出版予定。www.naomiharris.com
ヴィッキ・リード / Vicki Reed(アメリカ)
「What We Leave Behind」
新聞社のカメラマンや雑誌のアート編集者を務めた経歴を持ち、ヴィンテージカメラやピンホールカメラ、デジタルカメラだけでなくプラスチックカメラも使用し、自然環境や自身の私生活を探求。多数の受賞歴があり、さまざまな雑誌で広く掲載されている。本作は、記憶障害や認知症に悩まされている、80代後半の両親のポートレイト。介護施設に入所するまえに、彼らの等身大のポートレイトをサイアノタイプで制作。彼らが置いて行った私物と共に写したものもある。彼らは何者なのか、作者がどこから来たのかを残そうとした試みだ。
www.vickireed.com
長谷良樹 / Yoshiki Hase(日本)
「First Composition」
(上)Building Structures (下)Ritual ©Yoshiki Hase
1999~2006年にニューヨークに滞在し、現在は東京で活動。2014年「Un
seen Photo Festival」(アムステルダム)、2015年「fotofever」(パリ)に出品。「これはヒトの原始的行動の次の行為、つまりヒトの〝創造性によるはじめての行為〟とそのあとに残る風景である。言いかえれば、はじめて大地で行うヒト特有の行動とその創造物から成り立つ風景『First Composition』である」。写真のなかの人工物はフォトモンタージュ(画像合成)ではなく、作家自身が製作した物体で、実際に風景の中に配置され撮影されている。www.yoshikihase.com
アンドレア・フォリーニ / Andrea Foligni(イタリア)
「Apuan Carbonate」
1965年トスカーナ州プラート生まれ。社会的・環境的な問題に焦点を当てて活動し、天然資源に重大な影響を与え、そのしるしを残すような景観や人為的な変化の研究に興味を持つ。受賞作は、アルプス・アプアネ山脈の環境変化を取り上げたもの。この山脈は、特有の地質学的・植物学的な特徴や景観特性を持ち、有名な白大理石カッラーラ・ビアンコの採掘地でもある。毎年、山の採石場から約500万トンもの石が切り出されているが、装飾用に利用できるのはほんのわずか。環境への影響は日々大きく、景観には取り返しのつかない変化が起きている。それでも採掘を続け、山脈は縮小し続けている。この山脈は世界にとって重大な環境問題の象徴だ。www.andreafoligni.it
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応募締切:2017年10月2日(アメリカ太平洋夏時間23時59分まで)