知ってた? サインの入れ方とそのルール|写真「販売」基礎知識 6/12
写真を売ってみたいけれど、何から始めていいかわからない。
急に「作品を売ってほしい」と言われたけれど、値段の付け方やサインの入れ方など知らなくて困った。
そもそも、写真って売れるの?
作品制作を行う写真家やアマチュアの方で、そんな経験をしたり、疑問を持っている人も多いのではないでしょうか。
いつか作品を売ってみたい写真家や、買ってみたいアートファンの方へ。
本記事は、作品販売を仕事にしているギャラリーPOETIC SCAPEのディレクター柿島貴志さんに、写真販売の基礎知識について詳しくご紹介いただく連載です。
※本記事は、Tokyo Institute Of Photography(T.I.P)で開催されていた、ギャラリーPOETIC SCAPEのディレクター柿島貴志さんによる人気講座の内容を一部抜粋してご紹介しています。
柿島貴志/Takashi Kakishima
大学卒業後に渡英。ロンドンBlake Collegeを経て、Kent Institute of Art and Design(現UCA)ビジュアルコミュニケーション・フォトメディア卒。ITやアート関連企業を経て、2007年にアートフォトレーベルphotta-lot、2011年にギャラリーPOETIC SCAPEを設立。現在はPOETIC SCAPEの経営・ディレクションのほか、写真作品の額装ディレクション、他ギャラリーでの展覧会・イベントディレクション、写真系企業へのビジネスコンサルティングなどを行う。
写真「販売」基礎知識 1/12 作品が売れる場所とは?
写真「販売」基礎知識 2/12 日本におけるギャラリーの種類
写真「販売」基礎知識 3/12 作品のエディションって何?
自分の作品の価値の付け方|写真「販売」基礎知識 4/12
重要!プリントの選択と額装のポイント|写真「販売」基礎知識 5/12
成約から納品、次の展示までのTIPS
写真販売シミュレーション
さて、前回は、プリント技法や額装の選び方についてお話をしました。
今回は特に知りたいという声も多かった、作品へのサインの入れ方やそのルールについてお話いただきます。
プリントに記載する主な項目
販売する作品については、最低限、下記を基本セットとして記載しておきましょう。
サイン
入っているかいないかで、作品の価値が決まります。ない場合、最悪、その作家の作品と認められないケースもあります。作品に記載するべき項目として、サインは最も重要とされます。
エディションナンバー
1/20、1/9、1/7など、作品のエディションを記載します。サインと同じくらい、記載しておいた方がいいものです。作品の価値に大きく影響してきます。
オープンエディションではなく、リミテッドエディションなのにエディションナンバーがないと、後々トラブルになることもありますので、きちんと管理しましょう。
撮影年とプリント年
これはマストではありませんが、撮影年とプリント年も書くケースが、推奨され始めました。撮影した土地の名前を書く人もいます。
去年、サンフランシスコMoMAのキュレーターと話したとき、いつ撮ったのか、いつプリントしたかは両方分かった方がいいと言っていました。
作家が撮影後、時を置かずに直ちに撮影したプリントのことをヴィンテージプリントと言いますが、そこに価値を置く美術館もあります。
それがいいかどうかは別として、正直に書かれているとその作家の信頼につながります。
サインとエディションはどう記載するの?
筆記用具は何がいいか?
作品そのものに、耐久性の良い筆記具で記入しましょう。
消しゴムで消えてしまうので不安と思う人もいるかもしれませんが、揮発性ではないので実は長く残ります。
揮発性の油性のペンやボールペンは、紙にダメージを与えたり、月日が経つにつれ消えてしまったりします。
プリントのどこに書くべきか?
基本的にはプリントの裏面、右下などに入れることが慣例です。
たとえばパネル作品などプリントに直接入れられない場合は、パネルの裏に書いてもいいですし、額と一体化しているプリントの場合は、額の裏に入れたりします。
私の考えとしては、作品から近い距離に入れるというのが良いと思います。あまり離れない場所に入れるようにしましょう。
また、購入者の希望で、「作品のイメージにかかるように大きく入れてほしい」などと言う場合には、なるべく答えています。
イメージの上にサインを入れる場合、鉛筆だと書きにくいので、耐久性のある質の良いペンを使用します。ボールペンだと、飾って光に当たっているうちに、消えてしまう恐れがあるのでやめた方がいいです。
作品は買った人のものなので自由ではありますが、「冷静に考えた方がいいですよ」とアドバイスはしています。
値段の表示方法
作品価格の掲示方法は、販売場所や作家やギャラリーの方針によっても異なります。
ギャラリー
■プライスリスト
作品を売るのが目的の場所ですが、空間全体で作品を表現する場所なので、その世界観をこわさないように目立つ場所に貼ることはあまりしません。プライスリストが椅子や受付のテーブルなどにさりげなく置かれていることが多いです。
デパートやアートフェア
■プライスカード
高齢の方が買いに来ることも多いデパートでは、作品のすぐ横や下に、1点1点わかりやすくはっきりと記載されていることが多いです。あくまでデパートのいち商品として扱われます。展覧会というより展示即売会として、より購入に繋がりやすい情報提供が求められます。
プライスリストには、タイトルや値段、サイズなどの基本情報にとどめ、それ以上の詳細な情報は書かないこともありますが、サティフィケート(証明書)は、できるだけ詳しく正直に書くのが主流となってきました。
たとえば、インクジェットの場合、プリントしたプリンターのメーカー名や機種名まで書く人もいるほどです。
いかがでしたでしょうか?
今回はサインの入れ方や、プリントに何を記載すべきか、具体的なお話をしていただきました。
次回はサティフィケート(証明書)や注文を受ける際のオーダーシートのつくり方なども詳しくご紹介します。
写真「販売」基礎知識 3/12 作品のエディションって何?
自分の作品の価値の付け方|写真「販売」基礎知識 4/12
重要!プリントの選択と額装のポイント|写真「販売」基礎知識 5/12