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発表! 写真評論家・飯沢耕太郎が選んだ 2017年の写真集ベスト3とは?

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今回は、飯沢耕太郎が選ぶ「時代に残る写真集」の番外編。2017年に記憶に残った素晴らしい写真集3冊を選んでいただきました。

テキスト=飯沢耕太郎(写真評論家)

2017年にもたくさんの写真集が出版された。日本の写真集のクオリティの高さは世界的に注目を集めているが、近年はさらに高度な編集・デザインの写真集が増えているように思える。

今回は特別にその中から3冊を紹介し、日本の写真集出版の現在の状況について、あらためて考えてみることにしよう。

-飯沢耕太郎が選んだ2017年の写真集ベスト3はこちら!-

まず野村佐紀子の写真と、坂口安吾が1946年に発表した小説「戦争と一人の女」とをカップリングした『Sakiko Nomura: Ango』。

この写真集の最大の見どころは、町口覚(Match &Company)による装丁・デザインである。写真と文章を、端を斜めにカットした台形の紙に印刷し、それを少しずつずらして製本している。

見ていて、何とも落ち着かない不安定な気分になってくるのだが、それはむろん想定済みで、戦時中の男女の心理を追った小説の内容に合わせて構成しているのだ。

男性ヌードが多い野村佐紀子には珍しく、女性ヌードを中心に構成された写真も、本の中にぴったりとおさまっている。

田中義久の装丁による荒木経惟『愛の劇場』も、どちらかといえばデザイン先行の写真集だ。

このところ、町口や田中のような才能あふれるグラフィック・デザイナーが、杉浦康平や田中一光らが進めてきた日本の写真集作りの伝統を受け継いで、それをさらに先に展開しようとしている。

『愛の劇場』は、荒木経惟が電通在職中の1965年にまとめて、キャビネ判の印画紙の箱の中に保存していたプリントの束を、背を綴じる形で写真集に仕立てたものだ。


印画紙の箱も、そこに記された手書きの字を含めてそのまま複製していて、蓋を開けるとそのまま1965年にタイムスリップするような気分になる。


なお、出版元のCase Publishingは大西洋を中心に2015年に設立された「独立系」の出版社で、少部数、高品質の写真集を次々に刊行している。

個人的に2017年の写真集のベスト1に挙げたいのが、松本篤(AHA!)が企画・編集し、尾中俊介(Calamari Inc.)がデザインした『はな子のいる風景 イメージを(ひっ)くりかえす』。

武蔵野市の井の頭自然文化園で、69歳という長寿を保って亡くなったアジア象のはな子と一緒に撮影した記念写真、169枚がおさめられ、撮影された日の象の飼育日誌が添えられている。

原寸大の写真を、印刷された図版の上に貼り込んだり、象舎の見取り図、新聞記事、市民から寄せられた思い出の文集などを挟み込んだりする編集上の工夫によって、はな子と市民一人ひとりの個人史(家族史)が絡み合い、重なり合って、多くの読者の共感を呼ぶ写真集になった。


無名の作者による写真(ヴァナキュラー写真)の持つ喚起力を活かしていくための、よきサンプルになるのではないだろうか。

写真左から、
荒木経惟『愛の劇場』(禪フォトギャラリー/Case Publishing)
野村佐紀子/坂口安吾『Sakiko Nomura: Ango』(bookshop M)
松本篤編『はな子のいる風景 イメージを(ひっ)くりかえす』(武蔵野市立吉祥寺美術館)


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