1. HOME
  2. Magazine
  3. 決定! 東京国際写真コンペティション2017 受賞者と受賞作品を紹介
Magazine

決定! 東京国際写真コンペティション2017 受賞者と受賞作品を紹介

Magazine


世界の写真コミュニティの懸け橋になることを目的に設立された、東京国際写真コンペティション(TIPC)。全世界で作品が募集され、世界で活躍するキュレーターや写真家、写真ディレクターたちによって、2017年(第5回)は約1,000名から8名が選ばれました。今回の募集テーマは「境界線」。イタリア、日本、スペイン、ロシアなど、さまざまなルーツを持つ写真家たちからの回答となる表現を、お楽しみください。作品は、東京、ニューヨーク、台北、シドニーで開催される受賞作品巡回展にて展示予定です。

(記事内のステートメント及びバイオグラフィーは要約しています。全文は東京国際写真コンペティション(TIPC)のWebサイトでご覧いただけます。)

GRAND PRIX WINNER
Daniel Castro Garcia/ ダニエル・カストロ・ガルシア(イタリア)
「Foreigner」

Madia/ Catania, Sicily, Italy, November 2015 ©Daniel Castro Garcia

Sudanese men playing cards/ Calais, France, November 2015 ©Daniel Castro Garcia

移民、難民問題――個人の体験を伝え、ただ知らせたい

About Foreigner
“Foreigner”は、ヨーロッパにおいて、移民/難民問題に使われる視覚文化や政治的レトリックに異議を申し立てる、現在進行中の多分野プロジェクトです。

このプロジェクトは、地中海で転覆した移住船に関する英国メディアの報道に応答する形で、スタートしました。これらの船に乗っていた移民に対して使われた形容詞は「ゴキブリ」。
保守的かつ民族主義的な政治的偏重は、一般市民にバランスのとれた考察を提供せず、本来起こるべきではなかったヒステリーを引き起こしました。

(左)Aly Gadiaga/ Catania, Sicily, Italy, November 2015 ©Daniel Castro Garcia 、(右)Zingale boys visit the beach/ Catania, Sicily, Italy, August 2017 ©Daniel Castro Garcia

「ヨーロッパ 移民」や「ヨーロッパ 難民」という言葉をウェブ上で検索すると、何百という人が入り乱れる混沌とした風景が見つかります。暴力的、衝撃的、または哀れみという印象を伴うそれらの画像は、一瞬を捉えられたものでしかなく、そこには、個人の物語は存在しません。
個人の尊厳やイメージは、守られ、明確に伝えられるべきものであり、同時に、オーディエンスの関心と知性は容易に過小評価されたり、操作されたりしてはならないものです。
Enoch/ Catania, Sicily, Italy, June 2017 ©Daniel Castro Garcia

私は、写真が持つ権限を与える力、協同性を使って、作品を一緒につくる人たちに個人の体験を伝える機会を持って欲しいと願っています。被写体とのコラボレーションを通じて生まれたこの一連の作品には、映像と証言書が含まれています。
これらは、誰かを聖別する意図も、非難する意図もなく、ただ知らせることを目的としたものです。

Artist Bio
Daniel Castro Garcia/ ダニエル・カストロ・ガルシア
写真家、フィルムメイカー。ストリートフォトグラファーとしてキャリアを始め、ソーシャルドキュメンタリーとポートレイトを中心としたパーソナルプロジェクトを手がけている。2015年5月、自身も運営に携わるJohn Radcliffe Studioのトーマス・サクスビーとジェイド・モリスと共に、人道危機に関する報道で伝えられる移民・難民のイメージとは、異なる視点を提供することを目的とした写真プロジェクト「Foreigner」を開始。www.danielcastrogarcia.com

 

Yuki Iwanami/ 岩波友紀(日本)
「Home Lost -FUKUSHIMA Landscapes-」

©Yuki Iwanami

引かれた境界線の、奇妙な風景

About Home Lost -FUKUSHIMA Landscapes
2011年、福島第1原発は水素爆発で放射性物質を撒き散らした。私は事故直後から取材を始め、福島における故郷の喪失と、目には見えない放射能の被害を可視化するために風景を記録し続けた。

事故から3年後、私は福島に移住した。そして、居住者として福島を撮影する中で、不条理の存在に気づいた。この原発事故の大きな被害は「分断」であると感じ始めたのだ。
©Yuki Iwanami

境界線、それ自体が問題だったのだ。
まず、一定の距離によって強制的に避難させられる区域とそうでない区域に境界線が引かれ、分断された。避難するか避難しないか、賠償金がもらえるかどうか、全ての線引きがこの境界線であり、その線は住民同士の心にも大きな境界線を引いてしまった。
人が全く住んでいない場所から線を一歩越えれば、一見なんら普通と変わらない人々の営みがある。その風景は奇妙であった。
©Yuki Iwanami

引かれた境界線は事故から6年のうちに、放射線量によってひき直された後、避難指示の解除で次々と線が移動して行った。物理的に土地に引かれた境界線は変化し続けても、人々の間に引かれた線はもう元には戻らない。

同じ地域に住み、福島の人たちと関わり、私は彼らの不条理を共有する。このプロジェクトは、福島に住むことを選んだフォトグラファーの個人的視点から、元に戻ることのない分断された生活と土地を視覚的にとらえたものである。

Artist Bio
Yuki Iwanami/ 岩波友紀
1977年長野県生まれのフォトジャーナリスト。2001年から活動をはじめ、アジア、中東、バルカン半島などの写真を撮る。2003年から日本の全国紙のスタッフフォトグラファーとして、東京、仙台、大阪、福島を拠点に国内外のニュースやストーリーを撮影。現在は再びフリーとして福島市に在住し、東日本大震災と福島第一原発事故の取材も続ける。www.yukiiwanami.com

STORY TELLER / 写真家達の物語 vol.37

フォトディレクターの推し写真集

まちスナ日和