関西御苗場2017 受賞作品④
Wonder Foto Day賞


プロアマ問わず、誰でも先着順で参加できる写真展イベント「御苗場」
21回目となる御苗場は、2017年9月15日(金)~17日(日)の3日間、
大阪の海岸通ギャラリー・CASOにて開催。
100を超えるブースのなかから選ばれた作品を紹介します。

Wonder Foto Day賞

アジア圏を中心に、9ヶ国、150組の優れた写真家が選出されて作品を発表する「Wonder Foto Day」は、台湾を代表する大規模な写真イベントです。選出された2名は、このイベントに審査なしで「御苗場枠」として、無償出展ができる権利が授与されます。

 砂村栄力(Eiriki Sunamura)

「REST IN PEACE ARGENTINE ANT」

photo by 砂村栄力
concept
南米から世界へ運ばれて広まった「アルゼンチンアリ」を、原産地南米、初めて原産地の外で記録されたマデイラ島、そして日本を含む世界5大陸で撮影しました。このアリはいわゆる外来種で、本来の生息地でない所で生態系破壊、農作物加害、家屋侵入等を引き起こし、ヒアリと並んで「世界の侵略的外来種ワースト100」にランキングされるなど、“地味に”社会的に問題となっています。私はこのアリと人間生活との関わり合いを中心に撮影をしており、さまざまな文化の中での彼らの暮らしぶりを、展示写真とブックにまとめました。また、アルゼンチンアリは害虫として駆除しなければならない存在ですが、世界を流れ流れて安息なく生きている様は目を見張るものがあり、せめて死後は安息を、ということで展示ブースの下にアリのための墓標を置きました。

――この作品で伝えたいことを教えてください。
1種類の小さなアリが、広い世界を旅し、人間生活(ときには自然とも)と関わり、影響を与え合いながら生きてきたこと。

――この作品を撮影することになったきっかけは何ですか?
世界のアルゼンチンアリ生息地を巡ってみたいと以前から思っていましたが、「PHaT PHOTO」写真教室神戸校(北森幸先生)に学び、コンテスト入賞などを経て力がついてきたと思ったので、実行に移すことにしました。

――作品を作る上で苦労したことはありますか?
アルゼンチンのブエノスアイレスへはじめて撮影に行った際、3人組の首絞め強盗に襲われたことは特に苦い思い出です。この旅では他にケチャップスリ(※)にも遭いそうになりました。2回目の撮影旅行でもひどい目に遭い、このときは都市を離れて大河の脇にある廃船を改造した宿に泊まったのですが、湿気で部屋の壁や布団がカビており、床からはキノコが生え、さらにはゴキブリやコウモリ、ハチが入ってくる、ハードな環境でした。
(※)スリ手口のひとつ。ケチャップを背中に付け、「何か付いていますよ」と親切を装い近寄る。

――作品に対する熱い思いを語ってください!
私は長年アルゼンチンアリの生態や駆除方法を研究するうち、このアリに対し、愛着、強い生物としての畏敬、かけがえのない経験をさせてくれたことへの感謝、殺虫することに対しての罪悪感、といった万感の思いを抱くようになりました。これらの思いを写真から読み取ることはできないと思いますが、クオリティには反映されていると思います。また、今回展示したアリの墓標は、私自身がこうしたさまざまな思いを馳せるためにお墓や碑がしっくりくるように感じたこともあり、作製してみました。

――今後目指していることなどあれば教えてください。
将来の夢は、世界の博物館に収蔵してもらえるような写真集をつくることです。直近の目標は、来年3~4月にかけて安曇野の田淵行男記念館で予定されている個展をベストなものに仕上げることです。そして今回、新たに「Wonder Foto Day」という目標ができました。

《select》房彥文(Wonder Foto Day キュレーター/Group.G 谷汩文化創立者)
選考理由:

一見よく見かけるような1枚の生態学的写真に、何かを宣言しているように、画びょうが刺された世界地図が掛けてありました。さらに視線を下のほうに移すと、アルゼンチンアリの墓石と1冊の分厚い研究図書が見えてきます。

私はアルゼンチンアリという生物のことをよく知りませんでした。検索して、ようやくこの生物が侵略的外来種であることが分かりました。砂村氏は世界中を回ってアルゼンチンアリを駆除する薬剤の研究をしています。しかし、砂村氏は蟻が大好きで、アルゼンチンアリを駆除すべきとの認識を持ちながらも、その都度罪悪感を強く感じるそうです。

多くの現代作品の作者達は大低何かに興味を持ち、理解を深めてから作品を通して自らの観点を述べます。しかし、砂村氏は徹底して研究を重ね、人々が心を強く打たれるようなことを作品で訴えているのです。彼の作品を目の前にし、単なる一種の罪悪感だけでなく、我々人類と環境の関係までを深く反省させられるのです。この表現形式の中で、1冊の分厚い書籍は、研究が作品の一部であることを我々に語っているようで、「科学と芸術は山頂で再会するものである」との名言が思い出されました。一学者である砂村氏は現代アーティストの感性を持ちながら、科学の研究にも励んでいることを我々は知りました。彼の個性だけでなく、彼にとって新しい可能性が広がっているのを感じます。

砂村栄力
Eiriki Sunamura

1982年東京都生まれ。東京大学大学院農学生命科学研究科博士課程修了(農学博士)。大学在学中に外来種アルゼンチンアリの生態および駆除に関する研究を行う。博士の学位を取得後、化学メーカーに就職し、現在は殺虫剤の研究開発に従事。2013年より写真をはじめ、アルゼンチンアリを中心に、専門とする都市害虫等について生態の記録や思うことの表現をテーマに撮影を行っている。共著に「アリの社会:小さな虫の大きな知恵」(東海大学出版会、2015年)、「アルゼンチンアリ 史上最強の侵略的外来種」(東京大学出版会、2014年)など。2016年、第5回 田淵行男賞 写真作品公募 アサヒカメラ賞受賞。
www.eirikisunamura.com

 

 ほりともみ

「食」

photo by ほりともみ
concept
食べるということ。

――この作品で伝えたいことを教えてください。
食べることに対する人々の考え方、感じ方の違いを伝えたいです。

――この作品を撮影することになったきっかけは何ですか?
私は食べることが凄く好きです。しかし食べたいのに食べられないという友人を見て、友人がなぜ食べられないのかが理解したくても理解できなかったのですが、身をもってやっと理解できたからです。

――作品を作る上で苦労したことはありますか?
私が表現したいものが見てくれる人に伝わるかということと、受け手側に何か考えてもらえるものを制作することです。

――作品に対する熱い思いを語ってください!
私は、私の制作した作品がどんな評価を受けても大好きです。

――今後目指していることなどあれば教えてください。
今後目指していることは、たくさんの人に私の存在・作品を知っていただくことと、自立し写真のお仕事だけで生活していくことです。

《select》房彥文(Wonder Foto Day キュレーター/Group.G 谷汩文化創立者)
選考理由:

食べ物を好む人は大勢いますが、無我夢中になる人はそれほどいないと思います。ほりともみ氏は色々な食べ物を生活のあらゆる場面に溶け込ませ、無邪気な子ども心を写真に収めています。ほりともみ氏の作品を見て自然と笑みがこぼれました。まだたくさんの課題が残されていると思いますが、ますますの成長が期待されます。

ほりともみ
Tomomi Hori

1998年大阪府生まれ。日本写真映像専門学校 卒業見込み。2016年4月より本格的に写真をはじめる。2017年、「御苗場vol.20 横浜」レビュアー賞エモン・フォトギャラリーディレクター 小松整司選/西武そごう アートコーディネーター 寺内俊博選。2017年11月21日(火)~12月3日(日)に「シブヤスタイルvol.11」(西武渋谷店 B館 8階 美術画廊・オルタナティブスペースほか)にてグループ展を控えている。

 

選出者:房彥文 Fang Yen Wen
キュレーター、写真芸術家。Wonder Foto Day キュレーター/Group.G 谷汩文化創立者。
写真芸術家として活動するだけではなく、新たなジェネレーションの写真家・アーティストが輝ける舞台を提供するため、2015年に台北国際写真芸術交流会Wonder Foto Dayを開催。2017年にサムスン台湾とコラボして、若い写真芸術家の新たな視野を通し、台湾を再認識した「Urban Exploration 城市探索」写真展を主催。経営している台北農安街の「居藝廊」と迪化街の「谷居」二つのギャラリーを統合して、谷汩文化を成立。キュレーションから出発して、芸術、撮影、出版、国際交流、アンティークとコーヒーの香りを繋いだように、各分野の優秀なクリエーターたちが交流できる場所を提供しようと活動している。
www.ianphotostudio.com