御苗場2018 受賞作品&選考理由発表! レビュアー賞 [青山裕企 / テラウチマサト 選出]
日本最大級の写真展イベント「御苗場」。
22回目となる御苗場は、2018年3月1日(木)~4日(日)の4日間、横浜の大さん橋ホール(CP+2018 PHOTO HARBOUR内)にて開催しました。310を超えるブースのなかから選ばれた作品を紹介します。
青山裕企(写真家)選
Genta
「記憶の中の時間」
《select》青山裕企(写真家)
選考理由 写真に圧倒的な安定感がありました。今回の御苗場はとてもポートレートが多い印象で、被写体の美しさに依存するカメラマンが多いなかで、風景と被写体の美しさが見事に融合していて、見惚れる作品になっていました。
人物をシルエットで見せながら、背景の色味は鮮やかで、とても想像力をかき立てられます。ポートフォリオも安定感があり、完成度も高かったです。
壇上でも言いましたが、私のギャラリーで是非個展を開催してほしいと思います。正統派のポートレートもInstagramで公開していますが、とても巧いので今後の展開にも期待したいと思います。
■concept
風景写真なのかポートレートなのか曖昧な写真
■question
――この作品で伝えたいことを教えてください。
自然の中に佇む時間の儚さ
――撮影のきっかけを教えてください。
写真はどれも御苗場のために撮影したものではありません。普段の日常の中で撮影したものです。
展示の構想は1年前から練り始めましたが、展示に耐えうる複数の写真が揃い、テーマが決まったのは搬入前日。結局、1年かけて練り上げてきたいくつものテーマ案は搬入前日に全てボツになりました。今回は4枚の写真を並べましたが、撮影日は古いもので3年前、新しいものは1週間半前でした。
――作品をつくる上で苦労したことはありますか?
写真が高精細にならないように、周辺減光やフレア、色収差の多い癖のあるレンズを選びました。また、ボケがなるべくうるさいレンズを使い、ピントも合わせすぎないように心掛けました。
――作品に対する熱い思いを語ってください!
御苗場は3回目の出展でした。1回目は右も左もわからず、ただ展示しただけで終わり、2回目は少し雰囲気を掴み、レビュアー賞にノミネート。ノミネートだけされて受賞が叶わなかったことが悔しくて悔しくて、今回の展示への大きなバネになりました。
そこから1年間、「レビュアー賞を絶対に取る」ことを目標にし、どのような展示にするか、どのように臨めばいいかを考え続けました。
御苗場はポートレートの展示がとても多く、その中でポートレートを展示して目を留めて貰うには普通ではダメだと考え、ポートレートなのにモデルの顔がほとんど見えない写真を展示しました。
そのことによって「写真の中のモデルに自己投影した」という感想を多く頂きました。モデルの魅力を引き出すのがポートレート写真の基本ですが、それだけではない、見た人の心に響くようなポートレートを表現できたと思います。
また、いずれの写真も、人物を消し去っても作品として成り立つ風景写真でもあり、人物と風景がそれぞれの写真の中で高め合っています。
――今後目指していることなどあれば教えてください。
自分は旅行先で風景を撮ってInstagramに載せるということで写真を始め、まもなく人物写真が撮りたくなり、ポートレートを撮りはじめました。しばらくして、風景写真とポートレートは分けるものではないということに気づきました。
風景写真とポートレートは融合し、ジャンル分けは意味をなさなくなります。今後も風景写真とポートレートの融合をライフワークとして追求し続けていきます。
神奈川県出身。2014年、Instagramをきっかけに写真を始め、現在はインスタグラマーとして活躍している。2018年11月20日(火)~25日(日)にレビュアー青山裕企さんが主催する「ユカイハンズ・ギャラリー」にて御苗場展示写真でモデルを務めた画家の女性との二人展を開催予定。Webサイト:gentamasuda.com / instagram(@gnta)