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糸崎公朗 オリジナル作風の写真と改造カメラワールド
このように僕はカメラの改造を多く手がけてきましたが、最近、カメラとは何かということを考えていて、ようやくその正体が僕なりにわかりかけてきたような気がします。
コブシメというイカの一種は体の模様を瞬時に変え、砂地や海藻などとそっくりに擬態します。イカは原始的な生物ですが、目だけは人間と同じく水晶体と網膜を備えています。そして体表の色彩細胞は伸縮自在で、様々な色に変化します。そんなイカの目はレンズと撮像素子、表は液晶モニターというように、デジタルカメラの構造にとてもよく似ているんですね。
少し前にプラトンの想起説を読んで、人間が考えることは思い出すことである、ということを知りました。人間というのは期せずして技術を開発しているつもりでも、実は太古の生物の姿を再現しているのではないか。それがカメラにも当てはまるのではないか、そう考えたのです。
もしかしたら人類が出現する前に写真があって、人類はそれを“思い出している”のかもしれません。だから僕は写真のアイディアが出ない時は無理に“考える”のではなく、“思い出そう”とするのがいいんじゃないかって、最近そう思っています。