写真を撮る”目的”の重要性 フォトコンPPC vol.117 総評
「PHaT PHOTO」の人気コンテストPPC。vol.117の総評をWebでもご紹介。
現実を確かな技術で切りとったものや、鑑賞者に違う解釈をさせる遊び心のあるもの。
さまざまな作品が集まるコンテストで、今回の審査員が作品を評価したポイントは?
そして、写真を撮るすべての人が考えておかなければいけない問題とは。
<今回の審査員>ハービー・山口(左)、小松整司(右)、テラウチマサト(中央)
5秒以上見つめられる作品
テラウチ 今回でPPCは最後の号となります。小松さん、ハービーさんは今回はどんな観点で作品を選ばれたのでしょうか。
小松 まずは自分が家に連れて帰りたい作品を選ぼうと思ったら、それはなかなか難しかったんですね。それで、やはり写真をすごく楽しんで撮っている人にしようと。コンテストの場ではそういった方をピックアップしてあげたいなと思いました。
ハービー 僕は自著『良い写真とは? 撮る人が心に刻む108のことば』という本の中でも書いているのですが、いい写真を判断するひとつに、5秒以上見ていられるというのがあるんですね。
5秒間見つめるというのは、その人は作品を読み込んでいると思うんです。それなりの内容をキャッチボールしている。そういうことで、今回は5秒見つめることができる深みのある作品を選びました。
小松 確かに5秒を続けていき、噛めば噛むほど味のでてくる作品というのはありますね。
鑑賞者にどんな気持ちになってもらいたいか
テラウチ そうですね。今オークションで写真を売ろうとしているのですが、写真が欲しくなるのはどんな時だろうと考えるんです。
たとえば南の島のホテルに行きたいと思っている時は、実はそのホテルに宿泊したいのではなくて、ホテルに行った時のリラックスした感情や、幸福感が欲しいんじゃないだろうかと思うんです。
写真を買う時にも、そして写真を評価する時にもそれは重要で、作品を見た時に、鑑賞者にどんな気持ちになってもらいたいかということが、写真に込められているものが強いんじゃないかと思います。
ハービー 写真の性質というのもありますよね。報道写真は事実を伝えるのが大事なので、 そういう意味では今回僕が1位に選んだ「お大事に。。。」(イマイモコさん)は現状を訴えるものとしての価値は高い。
ただ、家に持って帰って鑑賞するという意味ではまた違います。その作品からイマジネーションが掻き立てられるもののほうが、家に飾りたい、あるいは傍に置いておきたいと思いますよね。
写真を撮る人が考えるべき問題とは
小松 現実に起こっていることに、自分で手を加えるということについては、お2人はど う考えられていますか?今回入選された「はざまにて」(岩本ゆうな)では、鳥は偶然現れたものとのことでしたが、たとえばこれが足されたものだったとしたら。
テラウチ この作品に鳥を入れ込むとなると、相当なセンスが問われると思いますね。自然さを演出するのはひとつの才能です。人間の意志でそうやって絵と同じようなことをやっていくと、大概うまくいかない。
僕は写真がいいなと思うのは、その偶然性をねらって予想外な部分に何かが入り込むところです。そこは他にはない写真の面白さだと思いますね。
小松 テラウチさんが仰るように、偶然性が滑り込んだ写真は魅力がありますよね。それは私も今回選ばせていただいたポイントです。
決まりすぎているとコマーシャル的というか居心地が良くないと感じることがあって、現実を意図的に操作しているような。
テラウチ それもすべて、写真を撮る時の目的を何にするのかが重要なんでしょうね。
娯楽として家に飾るのか、報道写真として世に出したいのか、あるいは誰か特定の人に贈るものなのか。自分が撮る作品が、どこへ、そして誰へ向けたものなのかということは、写真を撮る人はずっと考えていかなければいけない問題だと思います。
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