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フォトまちだより「Hello Local」vol.28 郡山写真部 ~ご当地マンホールからたどった素敵な郡山~


紀南、富山、郡山、下田の4つの地域写真部が綴っていく連載企画「Hello Local」。今回は郡山写真部、鈴木さんによるフォトエッセイです。皆さんが暮らすまちの道路、足元に必ずある「マンホール」にはその地域の特色がデザインされていることをご存知でしょうか?郡山市に住む鈴木さんは身近な存在であるマンホールのデザインに興味を持ち、それぞれのシンボルのルーツをたどりました。そこで出会った景色、人、文化、郡山の魅力を紹介します。


まちの魅力を発信する企画「Hello local」。郡山写真部の編集会議の際、何を書いてみたいか悩んでいたところ、「身近なものを記事にするのもいいですね」と部員の方からアドバイスを貰いました。

なるほど、身近なもの…。

自分がまちを歩く姿を想像して、

「そうだ、マンホールについて書いてみよう」と思いました。

理由は、外出すると必ず見かけるマンホールは身近すぎて忘れられている存在であること、また以前テレビで観たご当地マンホールの番組で、出演されていたマンホールマニアの方が『マンホールは足元の芸術だ!』と言われたのが印象に残っていたからです。

今回は、結婚を機に移住して1年の鈴木が郡山市のご当地マンホールを深掘りし、そこで出会った郡山の魅力をお伝えします。

郡山の特色を表現された2種類のマンホール

早速ネットで「ご当地マンホール 福島県郡山市」と調べると「マンホールカード」と言うものを見つけました。これは下水道プラットフォーム(下水道のPRを目的とし、それらに関連した任意の団体)が企画をしています。
マンホールカードの魅力は、そのまちの特色があること。さらにマンホールを撮影して、指定の場所に画像を見せるとマンホールカードが貰えます。まちの探索としても面白いですよね。

郡山市には2種類のマンホールカードがあります。
1つ目は「ヤマザクラ(木)」と「カッコウ(鳥)」、「ハナカツミ(花)」のマンホールです。これらは郡山市が制定しているもので、このマンホールは郡山市内にたくさんあります。マンホールカード配布場所は熱海町にある磐梯熱海観光物産館です。

公共下水道マンホール

2つ目のマンホールは「磐梯山」と「猪苗代湖」「水芭蕉」がデザインされているマンホールです。これは湖南町にあります。配布場所は湖南公民館で、マンホールカードが貰えて、公民館の窓口の隣に大きなパネルの展示蓋があります。

特定環境保全下水道マンホール

また、湖南公民館で貰ったマンホールカードを磐梯熱海観光物産館で見せるとカード用台紙と一本水路のマグネットクリップも貰えます。

マンホールカードと一本水路のマグネットクリップ

マンホールデザインのルーツを辿る旅

私の家の周りは、買い物や病院など徒歩圏内で完結するくらい環境が整っていることから、郡山=都会と言う印象でした。

でも調べてみると郡山のマンホールデザインで共通することは「自然があふれる郡山」だったこと。
まだまだ知らない郡山がある。
そう思った私はマンホールデザインに表記されたシンボルから自然や歴史、文化などを辿ってみたいと思いました。

まず1つ目の木、鳥、花のデザインのマンホールです。

この中から市の花「ハナカツミ」に古い歴史があることが郡山市のHPより分かりました。
ハナカツミが有名になったのは、古今和歌集で詠まれてからです。

“諸説ありますが、ハナカツミは幻の花とされ、奥の細道で有名な松尾芭蕉とその弟子もハナカツミを求めてこの地を訪れましたが、見つからなかったようです。しかし、明治天皇が東北訪問の際、安積山の休憩所で、ヒメシャガをハナカツミとして叡覧しました。その後昭和49年に市施行50周年記念で、市の花に制定されました。”

ハナツカミを探しに

松尾芭蕉が訪れた場所は、現在の安積山公園だと言われています。
安積山公園は郡山駅から北へ7㎞、車で15分の所にある日和田町にあります。自宅から安積山公園の道中は、交通量の多い国道沿いの小学校やショッピングモールを横目に見ながら、途中、県道沿いに入り車を走らせると小高い丘にあるのが安積山公園です。近くには住宅地やコンビニ、介護施設があります。公園に着くと大きな松の木のトンネルが出迎えてくれました。

公園内を散策すると遊具や野球グランドがあり、奥の細道の石碑や北側には「芭蕉の小径」の名所で散歩道になっていました。そして、丘の頂上まで登ると車の音などが気にならないほど、静かな雰囲気に変わります。来月から桜やツツジが見頃を迎えて、色とりどりの公園になります。

奥の細道の石碑

残念ながら、開花時期ではなかったため、ハナカツミの撮影は出来ませんでした。
「幻の花」ともいうように私も見れず、、、、いつかは見てみたい。
5月下旬頃が見頃のハナカツミは、小さな淡い紫色の花を咲かせるそうですので行かれる際はぜひ。

ノープランで訪れた湖南町、トンネルを抜けた先には

次に別の日に磐梯山、猪苗代湖、水芭蕉がデザインされたマンホールがある湖南町に行きました。実は初めて行く湖南町、目的地の公民館まで車で40分。カーナビでは途中通行止めの表示が…
たどり着けるか不安もありましたが、市街地を離れていくにつれて、のどかな雰囲気に変わっていきました。車をさらに走らせると急な坂をどんどん登って、気がつくと雲と同じ目線まで高いところにいました。

山合から見える郡山市街

4つ目のトンネルを出ると湖南町の標識が現れ、真っ先に飛び込んできた一面の銀世界。大袈裟かもしれませんが、同じ市内なのに秘境にきた気分になりました。

光の反射でまぶしくも綺麗な景色を道なり更に走り、この日5つ目となるトンネルを通り抜けた所に湖南公民館がありました。湖南公民館に着くと出会いがありました。そこには、館長の佐藤忠男さんと事務員の武藤智子さんが在籍していました。突然の訪問にも関わらず、事情を話すと快く、湖南町について教えて頂きました。大変ありがたいことに、湖南町独自の資料もご提供頂きました。

湖南町についてより深く分かったこと

話を聞く中で、湖南町は月形(つきがた)、中野(なかの)、三代(みよ)、福良(ふくら)、赤津(あかつ)地区から成り立っており、各地区、魅力がたくさんつまっていました。

湖南町には民話や逸話がたくさんあります。ご提供下さった資料によると湖南町には全部で213の民話などがあります。200以上の話があると知って、ただただ驚きました。

町内には所々、民話のモデルとなっているモニュメントがある。↑こんな感じで

館長さんのお話や資料をもとに1部紹介します。

月形地区は、映画にもなった座頭市が湖南町で怪我をしたのではないか?と言う逸話があります。
十数メートルある断崖絶壁の裏山は明治時代から「座頭ころばし七曲り」と呼ばれており、急な山道で座頭市が突き落とされたところと言われているようです。九死に一生を得ましたが、足が不自由になってしまいこの地で暮らしていたようです。湖南町と座頭市に繋がりがあることにも驚きました。

湖南町の入口で出迎えてくれた民話マップと座頭市の像

中野地区には大仏が建立されている東光寺があります。隣には廃校になってしまった小学校がありました。東光寺の境内に県の天然記念物「大仏のケヤキ」があります。資料によると推定樹齢800年、樹高22m胸高直径2.8mの大きなケヤキの木で市内でも随一の太さを誇ります。

湖南町の歴史と共にしてきただけに、神々しくそびえ立っていました。また、「紅葉の季節は境内を背景に大仏のケヤキは圧巻で綺麗だろうな」と思いました。東光寺には、大仏のケヤキを含めて、合わせて4つの重要文化財と天然記念物があります。同じ場所に複数の文化財があるのも中々見られないと思います。湖南町の大きな特徴の1つとして文化財、天然記念物が多く登録されています。町内だけで24個あります。

マンホールデザインにもある水芭蕉もそのひとつ。水芭蕉は馬入新田水芭蕉群生地にあり、開花時期は4月中旬頃に咲き始め、「ミズバショウ祭」が開催されます。

水芭蕉群生地分布マップ

館長さんにおすすめスポットを聞くと、福良浜をご紹介頂きました。そこから一望できる猪苗代と飯豊山、磐梯山、西吾妻山は館長さんのおすすめスポットです。公民館から福良浜まで車で5分のところ。天気もよかったので、早速行ってみました。到着すると圧巻の景色、マンホールのデザインになるのも納得です。

猪苗代湖と磐梯山

波の音、冷たい風、その音、鳥の鳴き声、そして荘厳にそびえ立つ磐梯山。自然のパワーを体で感じながら、おそらく1時間くらいはボーっとしてしまいました。この景色に魅了されてしまいました。
桜の時期に桜と猪苗代湖、磐梯山を一緒に撮ると、またひとあじ違った景色が堪能できるとのことでした。
湖南町は桜の開花が郡山市内では1番遅く、4月末からゴールデンウィークが桜の見頃だそうです。

他にも「布引山にある展望台(現在は冬季のため通行止め)から見下ろす猪苗代湖と磐梯山も圧巻です」と館長さんは言います。季節が変わるたびに違った雰囲気が味わえる、撮影スポットがたくさんあるのも湖南町の魅力の1つだと感じました。

身近な存在、”マンホール”を辿って感じたこと

以上が、マンホールのデザインから深掘りした内容になります。特に湖南町については、興味深い話、見どころがたくさんありました。マンホールだけを手がかりにどこまで探れるか…個人的には思っていた以上に探ることが出来たと思う反面、「もっと湖南町を知りたい、見てみたい!」と思いました。郡山は自然を慈しみ、目の前の一人を大切にするあたたかい「まち」だと知って、郡山の良さを伝えていきたいと思いました。
また、実は今回の取材・撮影が偶然にも3月10日~11日でした。東日本大震災から11年経つ今も毎年大きな余震があり、何度も当時の事を思い出します。その度に引き戻されそうになりながらも、前進し続けられたのは、心に刻まれている思い出などが支えとなって負けない日々を送ってこれたからだなぁと。今回のフォトエッセイを書きながら振り返っていました。
私は、震災の翌年に写真と出会い、写真が持つパワーに心の復興を感じました。写真はこの日、この時、この一瞬にしか存在しない価値を切り取ることができるからです。そして写真は心を分かち合うこともできます。これからも写真を撮り続け、たくさんの人々の心の復興のきっかけとなるものになればいいなっと願っています。


鈴木陽子

1992年生まれ。福島県白河市出身。
2021年結婚を機に郡山市に移住。
同年、郡山写真部に入部。
2012年、大学進学を機に写真と出会ってから、ありのままの姿、日常、風景を中心に写真を撮っている。

郡山に住む写真好きの仲間が集まり、2018年から活動をしている「郡山写真部」。

郡山のまち、人の魅力を「写真」を通じて見つめ直し、「#郡山写真部」で発信しています。

郡山写真部が取材・記事を書いて作ったデジタルフォトマップ「郡山フォトスポットガイド」はコチラ


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