タカザワケンジ文章講座 第2回 伝わる書評を書くための練習方法
ツイッターやFacebookなどのSNSやブログで写真展や写真集の感想を書いてみたい!
写真展に行った後、記録として感想を書いているけど、うまく書けているかわからない。
そんな風に思ったことはありませんか?
写真評論家のタカザワケンジさんに、写真についての魅力的な文章を書くコツを教えていただく連載、第2回目。今回は写真を見るということについて教えていただきました。
※本記事は、写真評論家・タカザワケンジさんによる「写真展・写真集の感想をSNSで書くための文章講座」の内容を一部抜粋してご紹介しています。
1.見るとは何かを考えてみる
2.実践!写真を言葉にしてみよ
3.写真を言葉にするための見方とは?
1.見るとは何かを考えてみる
前回は、面白い文章を書くヒントや、リサーチや執筆など書評を書くプロセスをお伝えしました。実際に、写真展や写真集の評論を書くということにあたって、みなさんにまず考えて欲しいのは、「写真を見る」という行為そのものについてです。
写真の見方が良く分からない、どう解釈したらいいのだろうと疑問に思う方もいると思います。写真も絵画と同じで、見方のセオリーのようなものもありますが、今回はそれ以前の「写真を見る」ということについて考えていきたいと思います。
写真を見るときに、自分の頭のなかで何が起こっているかを考えてみましょう。そして、自分が写真をどうみているかを言葉にしてみてください。
伝えるということは、言語化して書いたり、話したりすることです。自分自身が考えていることを言語化できないと、読んだり、聞いたりする人も理解できません。
まずは、自分自身がどのように写真を見ているか、解釈以前に、1枚の写真をどう認識しているのかを、今回はテーマにしたいと思います。
2.実践!写真を言葉にしてみよう
実際に手元にある写真集などから1枚写真を選んで、2つのステップで、写真を見て言葉にすることを実践してみてください。
たとえば、写っているものやその背景、写っているものの意味や撮影手法など。1枚の写真を見ている自分の視点がどう動いているかを意識しながら書いてみてください。誰もがみな呼吸するように無自覚に「見る」ことをしていますが、まず、自分がどうやって見ているかを意識してほしいのです。
たとえば、写真の主題となる(と思われる)ものについて考えてみたり、撮影者の表現したかったことについて推測してみたり。直接的に関係がなくても、写真から連想したことを書いてみても良いです。
写真を見て感じたこと、考えたことは、たとえ同じ写真でもみなさんそれぞれ異なると思います。
写っているものから状況を推測するときに、見ている人の知識や教養が総動員されます。したがって、バックグラウンドが違うと、異なる解釈が生まれます。
この解釈は、あくまで推測なので、文章として発表するときは事実確認をする必要はありますが、自分の知識や教養を前提に写真を見ていると意識することはとても大事です。そして、そこが写真を見ることの深みでもあると思います。
3.写真を言葉にするための見方とは?
実際に見て、言葉にしてみると、どう見ているかを意識できると思いますが、「写真を見ること」について、整理してみましょう。
いろんな見方があるので、私の場合ですが、大きくわけて2つの点で見ていくと、写真を深く見ることができると思います。
1.写っているものを見る
1-1.何が写っているか、写っているものの意味を考える
1-2.写っているもの(人)同士の関係にどんな意味があるかを考える
2.撮影者の意識について考える
2-1.撮影手法などの「方法」:使用機材(カメラ、レンズ、三脚など)やどのようにして撮ったかを想像する。(後で事実確認が必要)
2-2.シャッターを切った「動機」を考える
撮影者の意図を想像する(作者自身の言葉があれば参照すべきだが、それが唯一絶対の「正解」ではない。撮影者が意識していない動機が隠されている可能性がある)
芸術表現の解釈に正解はないので、撮影者の意図については必ずしも作者自身の言葉が正しいとは限りません。写真家自身が気づいていないこと、意識していないことを言葉にするのが評論の仕事です。また、写真を多様な視点から「深く読む」ための入り口でもあるのです。
ぜひみなさんも、写真集や写真展を見る時は1枚1枚の写真を、これらのことを意識しながらじっくり見てみてください。