内藤由樹の海外武者修行ログ vol.3 学校見学とNYの人情に触れた話
2012年関西で行われた日本最大級の写真イベント「御苗場」でレビュアー賞を受賞した注目若手作家・内藤由樹。
現在世界各地を旅しながら写真を撮影している。
http://yuki-naito.tumblr.com
わたしはNYにあるICP(国際写真センター)に通いたいのですが、授業料がとても高いので無理です。
なので1週間くらいのショートプログラムを受講しようと思っていました。
けれど、いざ来てみると想定していたよりも英語がわからなくて諦めていたのですが、
オープンスクールとポートフォリオレビューが行なわれることを知り、参加することにしました。
ドキドキしながら学校へ。
校内ツアーを待っている間、用意されたお菓子や軽食をつまんでいました。
食べかけたケーキは、チョコレートクッキーにピーナッツバターがたっぷり乗っていて、
それをチョコレートソースでコーティングし、更にその上にナッツがたっぷり乗っているという恐ろしいもので、
緊張していたのもあってひとくちで気持ちが悪くなってしまいました。
前に座っていたおじいさんはご飯もお菓子もいっぱい食べていたので
よく食べんなーと思いつつ、いくつになっても学ぶ姿勢は素晴らしいなあと感心して、
あなたも見学に来たの?と聞くと「no。タダ飯食べに来ただけ」と言われてしまった。
学校をぐるっと回り、説明を聞いて、ICPやっぱりいい。と思いました。
レビューも受けながら、ショートプログラムを受けるならどれがいいかという相談をして、
受けたいクラスがふたつ、高いのと安いのが見つかりました。
どう考えても高い方がいいのにお金のことを心配して1時間以上悩んで、やっと受講することを決めました。
申込みをしにオフィスに行くと、ついさっき定員が埋まってしまったよ、と言われました。
きっと自分のためになることがわかっているのに、語学のことやお金のことを言い訳にして
ぐちぐち言っていたバチが当たったのです。
クラスを受けられなかったことよりも、
ここまで来てすぐに飛び込めなかった自分に腹がたち、悔しかったです。
寒い空気にあたってシャキッとしようと街を散歩しました。
タイムズスクエアで信号待ちをしている時、こんなNYのど真ん中に何故自分がいるのかわからなくなって
情けなくって辛抱たまらんで泣き出してしまいました。
そしたら隣にいた大きいおばさんが抱きしめて
「何があったのか知らないけど大丈夫だから心配しなくていいのよ」と言ってくれました。
嬉しかったのですが、そのおばさんはわたしを抱きしめたまましばらく離さなかったので
周りの人にじろじろ見られて恥ずかしかった・・・
この街はとても大きくて、いろんなものがいっぱいあっていろんな人がいっぱいいて、怖くなる時もあるけれど、こういう遠慮のないコミュニケーションが地元の大阪と似ていて安心します。
そんなNYの一面に癒やされながらも、自分がここにいる目的を見失わずに、
必要なものが手の届くところにある時はしっかりつかもうと決意した夜でした。
これはただの旅行ではなくて武者修行ですから。
内藤由樹 / ないとうゆき
1987 年大阪府生まれ。2013年 キヤノン写真新世紀 佐内正史選・佳作/第2回御苗場夢の先プロジェクトグランプリ/キヤノンフォトグラファーズセッション ファイナリスト/2012 年 御苗場vol.11 関西 レビュアー賞/写真集に「being」(2013年・TIP BOOKS)がある。
次の話を読む
vol.4 新しいところに移るのは怖い話
vol.5 新しいものに慣れていく話
vol.6 病気になって回復して、砂漠の美しさに感動した話