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HOW TO / 作品制作のヒント

考える余地を与えてくれる作品は良い|入選作品講評Vol.105


入選「ん?なんだ??」三木一美( 香川県・44歳)

2pt/自由部門/プリント応募

――ここからは入選作品です。自由部門で三木一美さんの作品 「ん?なんだ??」です。

村越 よく出来ている写真です。 面白い瞬間を捉えていますね。中央の女の子たち、手前の家族、撮影者の視点が一点に向いているので、何が起きているのか気になりました。ただ、左奥にいる人たちの視線が撮影者に向いていて、その分画面に情報が多くなり過ぎた気がします。

鷹野 言葉では納得できるんですが、写真としては少し甘い気もしました。この違和感を演出するなら、もっとやりきらないといけない。集まっている女の子たちだけに寄ってみたり、切りとり方を変 えたほうが良いのかもしれません。

テラウチ なんとなく良いと思った瞬間をそのまま撮って出してしまっているような印象があります。 画面が広すぎるので、撮った後にトリミングするなど処理を工夫し たらもっと良くなると思いました。

 

入選「秋分の日」イトウエージ(千葉県・58歳)

2pt/自由部門/プリント応募

――次に、自由応募でイトウエー ジさんの作品「秋分の日」です。

鷹野 主役があまり見えないなと思いました。横からブランコを撮るという視点は良いのですが、ベストなタイミングではないように感じます。きっと撮影者の方は、サラリーマンがブランコを漕いでいる身近にあった面白さを捉えたと思うのですが、その面白さがあまり伝わってこなかったですね。

テラウチ 不思議な光景に気付いて撮影した視点は面白いですね。 ただ、あまりに情報が少ないですね。もっと主役を生かす撮り方があったと思います。

村越 ブランコをする人を大胆に切りとったフォルムだけではなく、 ブランコを漕ぐサラリーマンの表情や「ブランコを漕ぐ姿をみんなが見ていた」とあるので、その「みんな」がどんな顔で見ているのかが気になった作品でした。

 

入選「年末くノ一お掃除隊」M.Tag(東京都)

2pt/テーマ部門/オンライン応募

――続いては、テーマ応募で M.Tagさんの作品「年末くノ一お掃除隊」です。

テラウチ 全員が同じ格好をしている状況が面白いですね。これだけ面白い場面なので、ただの記念撮影のようになってしまっているのがもったいないと思いました。たとえば、雑巾やほうきを持ったりして、もっと周囲のものを生かして撮ってほしかったです。

鷹野 記念撮影にしないために、 少しアクションを起こしてもらっ てから撮る、という方法もありますね。掃除をしている途中で声を掛けるとか。いまの写真だとこれから掃除をするという臨場感があまり感じられません。この状態で撮るにしても、目に影が入ってし まっているのでストロボを使ってみたり、もう少し工夫が必要だと思います。

村越 表情が暗くなってしまっているのは惜しいですよね。テラウ チさんが言ったように、家の中のものを使って演出できたら、さらに面白い写真になると思いますよ。

 

入選「鉄筋の筋」円山貫( 神奈川県・57歳)

2pt/自由部門/プリント応募

――次に、自由部門で円山貫さん の「鉄の筋」です。

鷹野 美しい写真で、選ぼうか本 当に迷いました。形やラインが綺麗に画面上に配置されていて、非常に厳密にアングルを考えて撮られことがわかります。シンメトリーなのが良いですね。

村越 僕もとても好きな作品です。 余白の入れ方が絶妙ですね。切りとりが丁寧なので、見ていて気持ちの良い構図になっています。ただ、画面構成だけで見せる写真なので、もう少し工夫があっても良かったかもしれません。

テラウチ 僕は真ん中の白く光る部分少し気になりました。この部分を光らせないように撮るのはかなり難しいと思うんですが、目立ってしまって惜しいですね。でも、綺麗で気持ち良い作品、というのはお2人と同意見です。

 


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