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HOW TO / 作品制作のヒント

考える余地を与えてくれる作品は良い|入選作品講評Vol.105


5位「刈りのこし」 福井悟( 奈良県・53歳)

テラウチ3位 村越特別賞/計7pt/自由部門/プリント応募

――次に、5位は自由部門で、福井悟さんの作品「刈りのこし」で す。テラウチさんが3位、村越さんが特別賞に選ばれました。

テラウチ 発見したものを「面白い!」と感じて撮ることは、写真の楽しみの1つですよね。この写真からはそんな素直な気持ちが伝わってきました。最初は何の模様だろうと思ったんですが、稲を刈った後に残る跡なんですね。稲株の切りとり方を工夫したことで、造形的に面白い作品に仕上がっています。

村越 不思議な写真ですよね。どうしてこの形になるんだろう、と気になったので選びました。考えるのが楽しい作品だと思います。 色の綺麗な作品なんですが、モノクロにしてみるとさらに形の面白さが出たかもしれません。

鷹野 確かにモノクロだと形の面白さやラインが綺麗に出るので、より意図が伝わりやすくなると思います。そういった工夫はとても大事。単写真の難しいところは、思い付きで撮ったものを作品として思い付き以上に仕上げなければならないことだと思っています。そういったことを意識しながら作品 をつくっていってほしいですね。

 

6位「ねこ使い」 okirakuoki (東京都・40歳)

テラウチ2位/計6pt/自由部門/オンライン応募

――続いて6位は、自由応募で さんの作品「ねこ使い」です。テラウチさんが2位に選ばれました。

テラウチ 本当によく出来た写真ですね。背景にシンプルな場所を選んだことで、猫の形が際立っています。この瞬間がくるまでに、相当待っていたのではないでしょうか。偶然撮ったにしても、落ち着いて切りとれている1枚だと思いました。猫写真はコンテストでは 選ばれづらいですが、ただのかわいい猫写真では終わらない作品ですね。

村越 被写体のポーズも面白いし、 とっさにストロボを焚いているところにも驚きました。人間のスナ ップやポートレイトとは違って、当たり前ですが猫だと背景を選ぶのがぐんと難しくなりますよね。そんな中でこの写真が撮れたというのはすごいと思います。

鷹野 背景や構図を含めて、きちんと作品として成り立っていますね。タイミングも絶妙です。猫が立って、こんなポーズをしているところは、撮ろうと思って撮れるものではないのでとても面白かったです。

 

6位「風の強い日」奥村幸夫(福岡県・64歳)

鷹野2位/計6pt/自由部門/オンライン応募

――同じく6位は、自由部門で奥村幸夫さんの作品「風の強い日」。 鷹野さんが2位に選ばれました。

鷹野 「風の強い日」というタイトルの通り、風の表現の仕方がいい ですね。ジャケットのしわやはためき方のかっこよさに惹かれまし た。ただ、正方形の画面よりも縦 長のほうがよかったのかなと思います。少し中途半端に感じてしまいました。

テラウチ 僕は被写体の人間性やキャラクター性のようなものが見えてくると、もっとよかったように思いました。たとえば、ジャケットがくたびれていたり、財布がはみ出していたりといったポイントがあったら、違った要素が加算されて、さらに面白いものになるのではないでしょうか。

村越  鷹野さんが言ったように、切りとり方は僕も気になりました。 縦位置にするか、ジャケットのしわを重視してもっと寄ってもよかったかもしれません。そうすると、 撮影者の方が見せたかった場所や撮影の意図がより伝わりやすくなると思います。

 

8位「岩手の子供たち」 増田真喜子(京都府)

村越3位/計4pt/自由部門/オンライン応募

――次は、自由部門で8位の増田真喜子さんの作品「岩手の子供たち」です。村越さんが3位に選ばれました。

村越 ねらって撮ったのではなく、きっとこれは偶然撮れたもの ですよね。被写体が思いもよらない動きでファインダーの外へと出ていく瞬間をおさえている。子どもの顔が全部入っていない構図がとても面白くて、子どものパワフルさを写真から感じられました。 一般的には失敗かもしれない、こういう写真をセレクトできることは素晴らしいことです。写真らしさを感じました。

テラウチ 口元だけでも、本当に楽しそうなのが伝わりますよね。 後ろの子もまた、この写真においては良い役割をこなしていると思います。

鷹野 僕にはその部分が少し物足りなく感じました。後ろの子が違ったアクションを起こしているともっと面白い写真になっていたと思うんです。この構図の中途半端さが良いのか悪いのかは少し難しいところで、この少女の目が見えたらもっとよかったのかも、と思いました。

 

9位「雨もわるくない…」 関恵子

鷹野特別賞/計3pt/自由部門/プリント応募

――次に9位は、自由部門で関恵子さんの作品「雨もわるくない」。 鷹野さんが特別賞に選ばれました。

鷹野 とにかく目を引く写真でした。写り込みというのはありがちですが、やっぱり面白いものです。 個人的にかなり好きな作品でした ね。ただ上下を逆にした方が面白いんじゃないかなと思いました。そこが少しもったいなかったですね。

テラウチ ありがちだけど、かっこいい作品ですよね。センスがい い。被写体と出合うことを運にまかせるのではなく、自分自身で見 つけようとしているところがすばらしいです。ただ、上手に切りと ること以上のことを考えて撮らないと、ありがちな写真で止まってしまうこともあるので気を付けないといけないんじゃないかな、と。 そうすればありがちから脱却できるんじゃないでしょうか。

村越 かっこいい写真だとは思ったんですが、僕も鷹野さんと同じで逆にした方が良かったんじゃないかと感じました。地面との境もわかりづらく、見る側に入ってく る情報が曖昧になってしまっています。逆なら違った読み方が出来て、面白かったかもしれません。

 


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