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HOW TO / 作品制作のヒント

考える余地を与えてくれる作品は良い|入選作品講評Vol.105


「PHaT PHOTO」の人気コンテストPPC。毎号異なる3名の写真関係者を審査員としてお招きし、座談会形式で審査を行います。

審査員:鷹野隆大/村越としや/テラウチマサト

PPCでは、自分の好きな写真を応募する「自由部門」と、毎号与えられるテーマを基に写真を応募する「テーマ部門」で作品を募集しています。自由とテーマ合わせて一次審査を通過した17点を座談会にて講評します。今号のテーマは「忘れたくない風景」です。順位は各審査員が選出した1位(10pt)、2位(6pt)、3位(4pt)、特別賞(3pt)の総計で決定します。


PPCへの応募はどなたでもOK!詳細はこちら

票が分かれた今回の審査。
本記事では、入選した20作品を一挙ご紹介します!

1位に選ばれた作品の良さは?評価の分かれ目ってなに?
審査員たちのさまざまな視点から、あなたの写真がレベルアップするヒントが見つかるかもしれません。

1位「永年の蓄積」根岸豊(東京都・49歳)

村越1位 鷹野3位 /計14pt/自由部門/オンライン応募

――今回の1位は、自由応募で根岸豊さんの作品「永年の蓄積」です。 村越さんが1位、鷹野さんが3位に選ばれました。

村越 とにかくかっこいい写真です。 看板の裏側の何かが貼られた跡や汚れを撮られたとのことですが、これは何だろう?と考えさせられました。 写真を見たときにすべてわかってしまうのではなく、考える余地を与えてくれる作品は良いですよね。 現像時にパラメータを触っていたら出来上がった、という過程に批判的な考えも出るかもしれませんが、僕は面白い制作方法だと思いました。

鷹野 かっこいい写真、というのは僕もこの作品を選んだいちばんの理由 です。村越さんの言うように、現像時に工夫をするというのは良いことだと思います。暗室でプリントをする際に色々な気づきがあったように、デジタル写真でも現像をする過程で、撮影者が新たなことに気づいていくのは大切なことです。こういった挑戦はしていくべきですね。

テラウチ 僕も最初に、これは何だろうと思いました。 現像に関しては、僕は「たまたま出来てしま った」ではなくて意図的につくってほしかったという気持ちがありました。もちろん挑戦をして学んでいくという姿勢は大事なので、今後はこの作品を意図的に再現できるようにしてほしいと思います。

 

2位 「家族の一場面」shikalovin( 山梨県・34歳)

鷹野1位/計10pt/自由部門/オンライン応募

――続いて、2位は自由応募でsikalovinさんの作品「家族の一場面」です。鷹野さんが1位に選ばれました。

鷹野 画面構成がすばらしい作品です。特に、真ん中に福袋があったことが、この写真を完成させていますね。そういった偶然の要素みたいなものをうまく写真の中に取り込めているところも高評価です。なかなか撮ろうと思ってこういう写真が撮れるわけではないので、このような出合いは作品をつくるにあたって本当に大事なことだと僕は思います。出合って撮る、という写真の原点的なものがこの作品にはありますね。

村越 タイミングも良いし、構図も面白いですよね。最初に赤ちゃんとお母さんに目が行き、そこから福袋、お兄ちゃん、大きな柄の絨毯、最後にテーブルの上の料理 にたどり着く。視線の移動が、画面をスムーズに一周するような構図です。非常に上手い写真だと感じました。

テラウチ 僕もお2人が言われた通り、構図が心地良い写真だと思いました。主役と脇役を両サイドに配置したことで、画面の中にフレームが出来ていますよね。その中に真っ赤な福袋があるので、とても目を引く作品に仕上がっています。偶然とは思えないくらい、面白い要素がたくさんある作品だと思います。

 

2位「急襲」崎田憲一(東京都・67歳)

テラウチ1位/計10pt/自由部門/オンライン応募

――同列の2位、自由部門で崎田憲一さんの作品「急襲」です。テラウチさんが1位に選ばれました。

テラウチ はじめにこの写真を見たときに、偶然撮れたものかと思って驚きました。撮影者のコメントにディスプレイのものだとあったので、自分で構成して撮ったものなんだと納得しました。偶然出合ってその場でシャッターを切った、という写真ももちろん良いのですが、自分で画面を考えてねらって撮る、というこの写真のような姿勢も僕は評価したいと思います。また、右上の赤い部分の入り方も絶妙ですね。

村越 確かに全体的に抑えた色合いの写真なので、この赤の部分がとても効いていますよね。カラスの黒に対してこの赤があるからこそ、印象的な作品になっているといえます。ただねらって撮っているなら、もう少し色や人の配置を考えて撮ってほしかった。どうい った人を選ぶか、色はどこに入れるかを試せる環境にあったなら、プ ラスαの工夫をすると、さらに目を惹きつける作品になると思います。

鷹野 ねらって撮ったものだからこそ、僕はテーマ性をもっと重視してほしかったと思いました。「日常の中に面白いものがあった」という見せ方だけではもったいない。 撮影意図のコメントが違っていたら選出していたかもしれません。

 

4位「シンクロ」岡本和宏(富山県・43歳)

村越2位 テラウチ特別賞/計9pt/自由部門/オンライン応募

――続いて4位は、自由部門で岡本和宏さんの「シンクロ」。村越さんが2位、テラウチさんが特別賞に選ばれました。

村越 普通の方は、このような訓練に立ち会ったら、もっと派手なシーンを撮ると思うんです。珍しい場面の中で、撮影者の方がこの写真の風景に目を向けたというのが面白いですね。ただ、切りとり方が少し気になりました。空が余計な感じがするので、スクエアの方が伝わりやすいと思ったのですが、どうでしょう。

テラウチ スクエアの方が確かに目立ちますが、僕はいまのままで良いと思いますね。空があるからこそ、空間に広がりが生まれて、抜け感も出ます。この写真の面白いところは、訓練の一環として真面 目に取り組んでいる被写体と、それがほのぼのとした風景として見えてしまっている差異。その違和感を捉えて撮影しているのがすご いと思います。

鷹野 オレンジの服が効いていま すね。目立つ写真だと思います。 ただ、1枚では少し撮影者の意図が読みとりづらいので、複数枚で見たい作品だと感じました。どちらにしろ、この1枚は面白い一瞬を切りとっていると思います。

 


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