フォトコンテストで上位に選ばれた理由は?PPC vol.117の講評をチェック!
写真表現の面白さを感じさせてくれた
6位「Bias」船見征二(栃木県)
——続いて6位は、自由応募で船見征二さんの作品「 Bias」。テラウチさんが3位に選ばれました。
テラウチ パイプ椅子が並んだ様子を撮影されたとのこと。同じものが連続していて、いろんなものに見えました。顔にも見えるし、カニの身を取るスプーンのようにも見えたり。どこかの部分を切りとってくるのは、写真の楽しさの1つですよね。それに、そこまでグラフィックすぎず、写真という感じを残しながらうまく撮られていて、改めて写真表現の面白さを感じさせてくれる作品でした。
小松 抽象的な作品に見えて惹かれたのですが、それ以上の魅力が少し欠けました。最初は小さい針のようなものを接写しているのかと思いましたが、パイプ椅子だと知って、その現実がわかった瞬間に少し冷めてしまったんですね。
これは一体なんだろうと探している時は、非常に面白かった。もしかしたら、パイプ椅子という言葉をキーワードにせず何なのかわからないものにしてしまった方が、想像力を掻き立てる1枚になったうな気がしました。
ハービー 僕も小松さんが言われたように、表面を捉えているだけのように感じてしまいました。もう少し何か深みを出す表現がほしかったですね。
人生を思わせる道路の発見
7位「S字の道」福井悟(奈良県)
——次に7位は2作品あります。まずは、自由応募で福井悟さんの作品「 S字の道」。ハービーさんが特別賞に選ばれました。
ハービー 面白い場所を発見されましたね。くねくねと曲がりくねった道路は、人生を思わせ、いろんなものを想像させてくれました。理想を言えば、もう少しドラマが欲しかったですね。たとえば1人の女の子が風船を追いかけ、お母さんが後を追う。もう1人の女の
子はそれを見て笑っているとか。
コマーシャルであればきっとそこまでしますが、現実での演出は難しいかもしれません。でも、夕日が斜めに影を落としている瞬間をねらうだけで、ぐっと物語性が出てくる。この道を発見した後に、さらに面白さを重ねるための工夫をしてみてほしかったです。
小松 黒く締まったところと明るいところの潔いコントラストは美しいなと思いました。この状況の中で、若い女の子2人がこの道を通るというのは珍しいと思うので、そういう意味では決定的瞬間だったのかもしれません。
テラウチ どこでこの女の子たちが歩いてくるのに気づいたのかということも、この作品を評価する重要なポイントだと思います。ガードレールを面白いと思って待っていたのであれば、もっと違うところを捉えてもよかったですね。
小松 この場所は、写真を試せるシーンですよね。写真という装置の可能性を引っ張り出してくる舞台としてすごく面白い。ぜひこの場所で、もっとさまざまな撮り方を試してみてほしいです。
四角に収まる理想的な配置
7位「競り市場」森田耕司(富山県)
——同じく7位は、自由応募で森田耕司さん「競り市場」。テラウチさんが特別賞に選ばれました。
テラウチ 色味と画面の中を占める配置が絶妙だなと思って選びました。四角いメディアサイズの中で、ペンギンの旋回の具合もいいし、左下の手も面白く、理想的に収まっている気がしました。水の中と、それを見る人々。2つのレイヤーが重なっていて、見ごたえがありました。
ハービー 確かにうまくまとまっていますよね。ただ、僕は水族館の餌やりの時間なのかなというところで終わってしまいました。いちばん手軽に幻想的なものを撮ることができるのが水族館なので、その点で少し残念に思いました。
小松 この美しい色味に目が留まったのですが、僕は左下の手はないほうがいいと思いました。手がない方がもっと絵画的になったんじゃないかなと。
ただ、テラウチさんが言われたように1枚にまとめあげる力は十分にお持ちですし、絵画的にものを捉える目線もとてもいいです。無駄なものをもう少し排除していくと、もっとエッジが効いた作品になると思いますよ。
いかがでしたか?
次回は入選作品9点の講評をご紹介します!