初めて写真展示する人へ。展示方法の決め方と、ステートメントの必要性とは?|写真家・大和田良


写真家・大和田良さんの作品制作にまつわるさまざまな過程を記した連載「作品制作ノート」。
今回のテーマは、初めて写真展を開く人へ伝えたい、「展示方法の決め方」と「ステートメントの必要性」について。

テキスト=大和田良

基本的な作品展示数の決め方

 年間を通してさまざまな展示を見に行きますが、時折展示の方法さえ考えればもっと多くの人に伝えられたのではないかと思える作品に出合うことがあります。

 撮影やプリントなど、時間をかけて制作した折角の写真が展示でその意味や魅力を伝えられないのでは、すべてが無駄になってしまいます。

 以前、私が大学で写真を学んでいた頃は、写真における展示の仕方というのはほとんど一律に教えられました。

 たとえば 11×14インチサイズの作品を掛けるのであればマットをし、16×20インチ程度のアルミ額(最も多かったのはニールセン フレーム)に入れ、額の幅の半分のスペースをそれぞれ離して一直線に並べていく。高さは中央を145cmに合わせます。

 これによりどんな空間でも大体掛けられる作品数が決まります。写真の内容だけを見るのであれば基本的にはこの方法で十分でしょう。

表現や期間によって変わってくる額装方法

 しかしながら現在の写真表現はより多様化しています。額装ひとつをとってもマットの厚み、あるいはマットを使わず額のなかで浮かせたり、スペーサーを使ってくわえこんで押さえるなどさまざまな方法で展示されます。

 もちろんクラシックな見せ方が合う作品というのは多いのですが、アクリルパネルに仕上げて軽やかに見せるほうが合う作品もあれば、より重層的で立体感のある額装を施したほうが良いものもあります。

 また、展示が短期的なものなのか、誰かの手に渡り長期間展示、保管されるものなのかというところも考えたほうが良いと思います。たとえば長期間展示される作品に対して木製パネルを用いるとどうなるでしょうか。数週間、あるいは環境によっては数日でパネルが歪み始めます。

展示方法で作家の意図を伝える

 私自身の展示を考えると、大きく2つに分けられます。

①作品そのものを見せることが大きな目的である場合
②展示空間そのものを構成しようとする場合

 前者①の場合には作品のサイズ、あるいは点数は空間に関わらず決められています。作品には内容に応じて必要なサイズがあります。ディテールを見せようとする作品を小さいプリントで仕上げても作家の意図は伝わりません。

作品1点1点をしっかり見せることを重視した展示。額装方法や掛ける高さなどをそろえている。


 
 また、多くの点数を必要とする作品の数を絞って見せても同じでしょう。このような場合、作品ありきでその空間をどう構成するのが良いのかを考えていきます。私の展示で言うと盆栽を扱ったシリーズやワインを扱ったシリーズがそれに近いものです。

 後者②の展示空間そのものを構成しようとする場合、作品の大きさや点数はもっと自由に考えます。空間ありきで考え、1点1点の写真の繋がりや全体を見渡したときのバランスなど、さまざまな点を考慮して展示作品を選択します。

空間の構成を重視した展示。作品の大きさや額装の方法など様々に組み合わされている。


 
 照明や壁のニュアンス、空間のかたちなどその場の環境に合わせて構成していきます。多くのシリーズをランダムに使った展示や、写真集『prism』のようなさまざまなモチーフを捉えた作品の展示はこれに近いものでした。

 額装も多様でプリントを直貼りすることもあればアンティークの額を用いたりアクリルに仕上げたりと、より実験的な手法が多かったように思います。時にはトリミングして写真そのものを変えてしまうこともありました。

ステートメントは「説明書」。「言葉あそび」や「詩」ではない

 展示ではなによりも鑑賞者にどのように伝わるのかということを考えますが、額装や空間の構成と共に重要なのはタイトルやキャプション、ステートメントというものになるでしょう。タイトルやキャプションについての重要性や考え方はみなさん知っての通りかと思いますが、ステートメントに関してはいまいち悩んでしまう方が多いようです。

 謎かけのような言葉遊びであったり、詩のようなものに会うこともあります。大抵の場合、そのようなテキストは読んだところで「きれいだったから撮りました」「ハッとさせられたので撮りました」というような意味以上のものは無かったように思います。

ステートメントは作品の説明書のようなものです。その制作を通して何をしようとしたのか、あるいは何を感じたのか、知ったのか、それらを書くことで作品の理解を補助しようとするものであるということです。最も重要なのは言うまでもなく作品そのものです。

 鑑賞するために、読み解こうとするために邪魔になるくらいであればステートメントはわざわざ提示する必要は無いでしょう。一方で写真が全部含んでいるのだからステートメントなど不要という声も聞きますが、それは元の出発点がそもそも違ってしまうため、そういう考え方もあるでしょうという程度に感じています。

 たとえば私のワインコレクションのシリーズなどはステートメントが無ければただの赤の羅列になり、なんの意味も無いものになってしまいます。ワインコレクターの情熱やワインそのものの多様性をテーマにしていることを伝えて始めて作品の内側に入っていくことができるものです。

 ステートメントを書く上で重要なのは、簡潔に、簡易な言葉で自分が行いたかったこと、伝えようとするものをまとめることです。ただ、写真は作家の意図とは別にさまざまなものを写し取り、含みます。それは書こうとしたところでわからないわけですから、自分がわかっている点だけ書けば良いと思います。

 深いテーマがあるかないかという問題ではなく、表面的なビジュアルで「きれい」「かっこいい」と選んでいることもあると思います。その場合にもなぜそれをそう思うのか考えてみることがステートメントに繋がるでしょうし、以降の制作や撮影にも活きていくでしょう。

 

 ここまでは基本的に個展を念頭に置いて書いてきましたが、グループ展や御苗場」などの大規模な展示でのことにも触れたいと思います。まず数人から十数人程度のグループ展ですが、見ていていちばんつまらなく感じるのは個々の主張が消えてしまう、いわゆるまとまりの良い展示です。

 時には誰がどれを撮ったのかわからないほど写真に個性が無い場合もあります。それぞれ独自の規定はあるのでしょうが、折角の表現の機会ですので、出来る限り個性を発して欲しいと観る側は感じます。

「御苗場」でひときわ輝くためには?

 また、読者の方にも参知されている方が多いであろう「御苗場」ですが、ここで最も大切なのは制作の丁寧さ、クオリティの高さであると思います。もちろん内容も重要ですがあれだけたくさんの作品が並ぶなか、ひときわ輝いて見える作品は、やはりプリント、額装、見せ方のクオリティが一定の水準に達していることが条件になります。その水準というものを一言で説明するのは難しいのですが、ひとつのヒントとして、写真はやはり手仕事だということです。

 どれだけ丁寧に、直に取り組んだかがそのプレゼンテーションにはっきり表れます。逆を返せば適当にやれば適当なものにちゃんと伝わってしまうということです。

 これはデジタルやアナログという部分の問題ではありません。写真そのものに対する態度の問題であると言えるのではないでしょうか。深い取り組みが感じられる写真には、やはり観る者を引き寄せる力があるように思います。

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