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フォトまち便り「Hello Local」vol.15 郡山写真部 ~ファインダーを通して見えた飲食店の温かい人たち~


紀南、富山、郡山、下田の4つの地域写真部が綴っていく連載企画「Hello Local」。今回は郡山写真部の太田さんによる「温かい人×食」をテーマに、飲食店を営んでいる人の想いを語るフォトエッセイ。東京から移住したからこそ分かる郡山の人の温かさを綴っていただきました。お店の方の笑顔とごはんの写真と文章は「そのお店に行って食べてみたい」「会いに行ってみたい」自然と読む人の気持ちまでも温かくなりますね。


私は飲食店を巡るのが好きです。理由はお店でただ食べるだけでなく、予想外の新たな発見や出会いが生まれやすい場所だと考えているからです。郡山は飲食店が多く、その中でも昔から常連客に愛されているような店も多く存在します。東京から郡山に移り住んで出会った、特に温かいと感じた3店舗のお店を紹介させていただきます。

父の紹介で知った個人居酒屋店「門土庵」

郡山駅西口から歩いて10分ほど。郡山駅前アーケード通りから離れた静かなところにある居酒屋「門土庵」。ここは10年ほど前に、父が郡山で単身赴任していた時に常連客として通っていた場所らしく、「店主さんが良い人だから、行ってみたら?」と勧められ、実際に足を運んでみたのがきっかけで出会いました。店内はこじんまりしたアットホームな雰囲気で、おいしいそうな手料理がカウンターに並べられていました。お店に入った時に「いらっしゃいませ!」と優しい笑顔で迎え入れたのが最初の印象でした。

門土庵の奥さん「恵子さん」。どんな料理があるのかメニューを見せてくれたときに撮った一枚です。

家庭の手料理をコンセプトにみんなが幸せに、元気になってほしい!

ここは店主と奥さんの2人で営んでいます。メニューの種類が豊富であるほか、毎日メニューが日替わりで奥さんの手作りです。手書きで書かれているこのメニューも心が籠っていると感じさせられます。その中でも名物は「かぼちゃの醤油バター煮」「玉子焼き」。そして郡山の郷土料理の「いかにんじん」です。かぼちゃの醤油バター煮は奥さんのオリジナル料理でホクホクとした食感にバターの香りに包まれます。

福島県の有名郷土料理であるいかにんじんは、そのまま食べることが多いですがここではマヨネーズをつける他とは違った食べ方を楽しめます。名物であるこの3つは外せません。

左からいかにんじん、玉子焼き、かぼちゃの醤油バター煮

奥さんはもともと料理が好きで、お兄さんが働いていた場所で料理を提供していた時、お客様から「おいしい」との評判もあって、自分で店をやりたいと思うようになり暖簾を出したそうです。奥さんが大切にしている想いは、「夕飯を食べて幸せな気持ちになってほしい」こと。来店したお客様がたくさん食べて元気になっている姿を見るのが奥さんにとっても一番嬉しいとのこと。食べながら楽しく会話をし、お客様にとっても私たちにとっても、一番居心地がよい場所にしたい」。そんな想いがありお店の名前も世界で一番居心地が良い場所、モンド=世界、アン=一番、からとって門土庵とつけられたそうです。

奥さんの温かい手料理。ごちそうさまでした!

思いがけない出会いが生まれやすい場所

私が来店したときも奥さんと店主、その従業員同士や、初めましてのお客さん同士でも会話が生まれてアットホームな空間でした。私の父が昔通っていたことを話すと、当時の頃を思い出話のように語ってくれたりしたので私自身も話しやすくなりました。店主や奥さんの人柄から、会って話したい、手料理を食べたいという常連客も多く、中には毎日通っている人もいます。常連客が集まるため、常連客同士とも仲良くなり、自然と人と交流する場にもなっているような印象です。

居酒屋というと、一人で行くのに抵抗があり、お酒も飲まないといけないという先入観がありましたが、このお店は夕飯だけ食べに行く目的でも温かく受け入れてくれるので、これからも何度も会いに行きたいと思えました。

奥さんの名前は、恵子さん。お客様からは恵子さんと呼ばれたいそうです。奥さん、いや恵子さんに会いにぜひ訪れてみては?

門土庵
定休日 基本日曜日(不定期で月曜日)
席数が限られているので、事前に電話をお勧めします
営業時間 18時から22時
電話番号 024-923-9242
住所  福島県郡山市大町1丁目12-15

お客との距離を縮める!地鶏ラーメン ありがとう

近年、郡山市はラーメン屋が続々と新しくオープンしており、白河、喜多方と並んで福島県の中でもラーメン激戦区の街です。そんな激戦区の街に、店主の人柄が温かいラーメン屋があります。郡山駅東口を出て、歩いて15分ほどにあるラーメン屋「ありがとう」。このお店は土日になるといつも外にまで待っている人がいるほどです。

行きやすく、気取らない、お客さんと会話しながら提供するのがモットー♪

店内に入ると「いらっしゃいませ!」と元気で明るい声が響き、笑顔で迎え入れてくれました。ここのお店は夫婦2人でラーメン屋を経営しており、オープンしてから今年で5年目を迎えます。もともと2人はサラリーマンでしたが、自分でお店をもってお客様を笑顔にして街の人に貢献したい想いが2人とも強く、定年というタイミングも重なり、ラーメン屋を始めました。

注文後、カウンター席からラーメンを作っているところを見せてくれました。

ここのラーメン屋で大切にしていることは気軽に行きやすく、立ち寄りやすい空間にすること。お手頃な価格でラーメンをお客様に提供することを大切にされています。また、お客様同士や店員とお客様が楽しく会話をする場にしたい想いから、ただラーメンを提供するだけでなく、お客様とのコミュニケーションも大事にされています。

人気ナンバーワンメニュー「塩バターラーメン」

実際私が来店したときも、店員さんの笑顔で接していただいて非常に話しやすい雰囲気づくりを心掛けていると実感しました。ラーメン屋と聞くと、作っている人や店員と会話することはほとんどなく、黙食で食べたらすぐに帰るイメージが多いのですが、このお店は会計時や食べている最中に話しかけても笑顔で接していただきました。

常連客が大きく変化していく姿を見れる嬉しさ

このお店がいつも心がけているのは、一人一人のお客様を大事にし、お客様を笑顔にすることだそうです。そして、お客様だけでなく、スタッフにもお互い感謝する気持ちを忘れないように「ありがとう」と、店名の由来にもなっています。実際私もこのお店を訪れ、おいしいラーメンの感想をSNSにアップしたところ、なんとDMでお礼のメッセージをくれたのです。一般のお客さんにここまでしてくれたことに感動を覚えました。この温かい対応に嬉しさを感じ、私自身も4回ほど訪れています。店員さん自身が嬉しいことは、こうして何度も足を運んでくれる常連客が増えることだそうです。開店から5年間で常連客が増え続け、回数を重ねるごとに大きくなっていくお子さんの成長の姿など、地域の方々と一緒にお店を続けていこうといった熱意がすごく伝わるお店でした。

寒くなる季節はラーメンが美味しく感じると思います。ここのラーメンを食べて、ぜひ店員さんにも話しかけてみてくださいね!

「いつもありがとうございます!夫婦2人でまたお待ちしております♪」。お二人の笑顔がそう言っているかのような一枚でした。

地鶏ラーメン ありがとう
定休日 月曜日(たまに臨時休業がありますので、事前にインスタグラムのチェックをお勧めします)
営業時間 昼の部(10時30分から14時30)/夜の部(17時から19時30分)(スープが無くなり次第終了)
住所 福島県郡山市昭和2丁目2-15
インスタグラム @jidoriramen_arigatou

温泉街にある、昔ながらの食堂「乙女食堂」

乙女食堂と書かれた暖簾をくぐると、店内は昔ながらの雰囲気の食堂でした。

郡山駅から約15分の磐梯熱海駅。そこからさらに歩くこと約20分。温泉が集まる場所から少し離れた場所にあります。今年で創業60周年になるこのお店はラーメン、丼ぶりなど幅広いジャンルのメニューが取り揃えており、おすすめは味噌タンメン、カツ丼。

おすすめメニューであるカツ丼

創業当初は奥さんひとりで営んでいましたが、店主と結婚を機に夫婦で営んでいます。店主がサラリーマン時代に出張で磐梯熱海に行ったときに出会い、そこで結婚に至り、奥さんのお店を一緒にやりたいという強い想いに打たれ現在に至ったという素敵なお話しも。もともとラーメンが中心でしたが、店主が郡山の定食屋で修行を重ね、丼ものなどメニューのレパートリーが増えた歴史があります。

ちょっとしたサービスから出てくる磐梯熱海温泉街の人々の温かさ

今回訪れた際に、奥さんが「これ食べて!」と漬物や果物をサービスで提供してくれました。すべてが手作りで、特にたくあんの生漬けは甘い香りとともに、カリカリしすぎない食べやすい食感でした。初めて来たお客さんに、ここまでサービスをしてくれて本当に温かい人だと感じました。私が話すときも、まるで息子のように話を聞いてくれて、熱海町の人々の温かさを表しているようにも感じました。

サービスで出してくれた旬の果物と、たくあんの生漬け

話したいこと、聞きたいことに優しく答えてくれるご夫婦。話を聞いていくうちにお二人だけでなく、熱海町の人は温かい人が多いのでは?と感じるようにも。

お二人にとって一番嬉しいと感じるのは、「お店をずっと続けてほしい」と言われるときや、お客様に感謝されるときだと語っています。かつて熱海町も飲食店などでにぎわっていましたが、時代と共にお店の数は減少。乙女食堂も店をたたむことを考えていた時期もあったそうです。しかし、お客様からの感謝、地元の人が何度も足を運んでくれることによって今日もこうして元気に営業を続けています。ふだん飲食するだけでは分からないですが、写真で見ると、これが磐梯熱海の人柄です!と伝えられているように感じます。奥さんと店主の優しい人柄と美味しい料理で心もお腹もいっぱいになること間違いなしです!磐梯熱海温泉に行ったら、ぜひ足を運んでみてください!

奥さんと店主。今年で一緒にお店をやるのは45年目。節目の年でここまで一緒にお店をやってこれたことに嬉しさいっぱいです!

乙女食堂
定休日  月曜日 営業時間 11時から20時(途中、休憩あり)
住所  福島県郡山市熱海町熱海5丁目162
電話番号 024-984-3718

終わりに

今回は3店舗(夫婦で経営している)計6人の郡山にいる飲食店を営んでいる温かい人を紹介させていただきました。共通する点としては、ただ料理を提供するだけでなく、お客様との会話を大切にしているところです。ふだん飲食店となると料理の写真がほとんどですが、お店の人の笑顔や接客をしているところなどを撮影することによって、お店の人が「お客様に会えることをいつでも楽しみにしています」というメッセージを写真を通じて伝えているように感じました。

また同時に料理を作っている人がお客様にどんな想いで作っているのか考えさせられました。私自身、自分からお店の人に話するのがあまり得意ではないですが、向こうから話しかけてくれることによって楽しい時間が過ごせました。今回紹介した人たちの温かさに触れ、ますます郡山という街が好きになりました。ぜひ、郡山を訪れた際には食べるだけでなくお店の人に目を向けてみてください!


太田 航平(こうちゃん)

1995年生まれ。もともとは東京に住んでいたが、ふくしまの魅力を発信したいという想いから2019年に福島県に移り住む。2020年郡山写真部に入部。
写真を通じて、まちの人と関わりながら郡山の魅力を発信中。

郡山に住む写真好きの仲間が集まり、2018年から活動をしている「郡山写真部」。

郡山のまち、人の魅力を「写真」を通じて見つめ直し、「#郡山写真部」で発信しています。

郡山写真部が取材・記事を書いて作ったデジタルフォトマップ「郡山フォトスポットガイド」コチラ


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