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HOW TO / 作品制作のヒント

撮った時の心情を再確認できる稀有な存在。 BenQ SW271Cを山本まりこさんがレビュー


美しい自然風景から海外の素敵な街並み、そして身近にあるささやかな日々の暮らしを写したものまで、どれもが一貫して温かな視点で捉えられている山本まりこさんの写真。自身の作風を“風が通り抜ける”という意味の「airy(エアリー)」と名付け、作品を制作し続けています。

そんな山本まりこさんにとってカラーマネージメントモニターとはどんな役割を果たすアイテムなのでしょうか。プロフェッショナルモデルとして人気を博す27インチカラーマネージメントモニターBenQ SW271Cを利用してもらい、その感想を伺いました。

SW271Cの製品はこちら


より鮮明に、美しく再現できることに感動
撮ったときの気持ちが蘇るハイスペックモニター

−山本さんの写真はどれも淡くやさしいトーンが印象的です。まさしくairyという言葉がピタリときます。とくに熊野古道の写真は荘厳ながらもどこか温もりのある、人の関わりを感じさせてくれるような独特のトーンが目を惹きます。熊野へはこれまでに40回以上、足を運んでいるそうですね。

山本 熊野古道に関しては、コロナが落ち着いたらまた通いたいです。熊野だけでなく、ほかにも足を運びたいところはたくさんあります。ただ、写真は身近な場所でも撮影できますよね。わたしは海辺近くの古民家で暮らしているのですが、現在はその暮らしの中で海町の様子を撮影したり、料理をつくってそれをスタイリングして撮影したり、コロナ禍にあっても日常の中でairyな写真を自分の視点で切り取っています。

▼山本まりこさんの作品

山本まりこさんの写真集。左が「AIRY COLORS」(玄光社)。右が「熊野古道を歩いています。」(日本カメラ社)。このほかにもカメラ、写真関係の著書も多数執筆している。

−今回、使っていただいたBenQ SW271Cについて伺いたいのですが、山本さんの写真は色や明るさが個性的です。ご自身の写真を映すモニターにもこだわりたいところですね。

山本 わたしの写真は色合いや明るさ、そしてコントラストに自分好みのテイストを加えていくことが多いのですが、モニターで見たときにそれが正しく再現されていなければ、自分で自分の写真を客観的に判断できなくなってしまいます。どんなモニターを使うかは写真制作ではとても重要なポイントになると思います。

例えば、わたしの写真はハイキー(明るい)な部分も多いのですが、どこまで階調を飛ばさずに表現できているのか、BenQ SW271Cであればきちんと判断できます。一般的なモニターではあたかも飛んで見えるようなところも正確に再現できていることに驚きました。色合いも同様です。わたしがこだわっているブルーやグリーンの色合いがきれいに再現されています。透明感のある青空の諧調なんかもすごくきれい。わたしは風景を斜光で撮ることも多くて、そうすると、どうしても青空のグラデーションなんかが表現しにくくなるのですが、BenQ SW271Cではとても鮮明に見えていました。

BenQ SW271Cは27インチ、解像度3840×2160(4K UHD)のIPSパネルに対応。正確な色再現を可能にするAQCOLOR技術で、色域はAdobe RGBで99%、sRGB/Rec.709では100パーセントをカバー。Pantone/CALMANの認証も取得している。

−山本さんは作品づくりではほとんどレタッチをしないんですよね。

山本 撮影後に調整しているように思われがちなのですが、作品はほぼノーレタッチです。撮るときにカメラ側ですべてを決め、JPEGで撮り切るスタイルが好きです。BenQ SW271Cだと撮ったときのダイレクトな気持ちが、そのままモニターに映るんですよね。それがとても新鮮で、嬉しかったです。

再現性に優れないモニターでは、やはりテンションが下がります。「あれ? こんなに色がくすんでたかな? 白飛びもしてたかな?」というように。でも、このモニターではそれがない。撮影したときと同じように映るから、そのテンションがありありと蘇ってくる感覚があります。これには高解像27インチという大きな画面サイズも影響していると思います。画面が大きく鮮明なので、自分が思いを込めて写した世界がさらに美しく見えるんです。

コロナになる前は撮影出張も多くて、フットワークの軽いノートパソコンで作業を完結することも多かったんですが、改めてやはり大きな画面で写真を見るのはいいなと実感しました(笑)。

−レタッチに関しては、仕事で撮る際は別ですか?

山本 仕事では建物の竣工写真やライフスタイル系の写真撮影のご依頼をいただくことが多いのですが、それらはRAWで撮ってばりばりレタッチします。こうした場面ではカラーマネージメントモニターは必須ですね。仕事を行う上で頼もしい存在です。

−正確に再現できるから、プリント作業もスムーズに進みますね。

山本 インクジェットで出力するときだけでなく、写真集などをつくる際にも、当然モニターに映される画像のトーンや色みを基準に制作できるのは大きなメリットになります。仕事では色見本を出すのもよりスムーズに進みそうです。

BenQ SW271Cのモニターに映し出される画像とプリントを見比べる山本まりこさん。

−最近では、動画を撮ることも増えているようですね。

山本 クライアントさんからご依頼をいただく機会も増えていますが、わたし自身も動画は好きでよく撮るようになりました。動画でもairyな風合いを大事にしています。それまで静止画として見ていたairyを動かして見せていくのはとても新鮮で、見てくださる方々にも好評です。

動画の撮影は静止画同様、カメラ側で色合いやトーンはほぼ決めてしまいます。撮影後の編集作業では、映像をどうつなげるかに意識を集約しています。

−BenQ SW271Cは“写真・動画編集向け”のモニターで、動画編集にも優れたスペックを備えています。出力が24/25/30Pに対応していて、4Kで撮った動画も滑らかで目を見張ります。

山本 そうなんですね! それはぜひ効果を確認してみたいです。

USB Type-Cで簡単に接続できる仕様が嬉しい

−今回、BenQ SW271Cを使っていただく際に、室内空間をあえて陽の光が射し込む窓際で試してくださったそうですね。

山本 モニターは陽の入らない場所で使ったほうが作業しやすいことはわかっているのですが、標準搭載の遮光フードを使ってどのくらい作業がしやすくなるか、確認してみたかったんです。正直、モニターを使った作業も、日の入る気持ちのいい環境下で行いたくて。ちょっと逆光の強い場所で、セットしてみました。こんなに明るい場所でもしっかりフードが遮光してくれました。モニター自体も反射の少ないノングレア。本当に見やすかったです。フードが付属になっているのはとても良心的だなと感じます。

明るい環境下でも作業しやすい。遮光フードは標準搭載だ。

-付属品には遮光フードのほかに、ホットキーパックG2(OSDコントローラー)もありますが、使い心地はいかがでしたか?

山本 デフォルトで使ってみました。色空間を簡単に切り替えできるのはとてもいいですね。sRGBでの見え方とAdobe RGBでの見え方を直感的に比較できます。

あと、カラー写真を3段階のモノクロでプレビューできるモノクロモードも面白いと思いました。気軽に切り替えできるので、ちょっと変換してみて、意外な発見があったり。それほど頻度は多くありませんが、時折モノクロで写真を仕上げたいときがあるんです。最初のイメージをつかむのに、最適な機能だと思いました。

ホットキーパックG2。ワンタッチで操作できる。

−セットアップについてお聞きしますが、実際に利用するまでの過程で気になった点などはありますか?

山本 箱から出して組み立てて…利用するまでの流れは非常にスムーズでした。わたしも結構な機械音痴ですが、機械に疎い人でも簡単にセットアップできるのではないでしょうか。

すごくいいと思ったのが、PCとモニターがUSB Type-Cひとつで簡単に接続できてしまうことです。シンプルですし、配線で迷わない。しかも、60Wで給電もできて。これは素晴らしいことですね。

−ハードウェアキャリブレーションはいかがでしたか? BenQ SW271Cは従来機と比べて、キャリブレーション時間が大幅に短縮されています。

山本 操作の手順も簡潔で、スムーズにできました。BenQが提供する校正ソフトウェア「Palette Master Element」をダウンロードして、あとは表示する手順に従うだけです。確かに作業時間も短く、ストレスがありませんでした。これならば億劫がらず、こまめにキャリブレーションを行うことができそうです。

キャリブレーション中の風景。表示される指示に従って、操作していく。

山本 ただ、「Palette Master Element」の扱い方の解説書とは別に、ハードウェアキャリブレーション自体については、もう少しわかりやすく解説されたマニュアルがBenQの中にあるといいなと思いました。

わたしは写真教室も主催していますが、アマチュアの方々にはカラーマネージメントやキャリブレーションについてはまだまだ敷居が高いイメージを持っています。

アマチュアの方々がもっと気軽に利用できるように、キャリブレーションそのものの予備知識を補いながら説明してくれるようなマニュアルがあると、正しい知識を持ちながらカラーマネージメントモニターを使い続けることができると思うんです。BenQのSWシリーズのように色再現に優れたモニターは、プロであろうがアマチュアであろうが、写真制作に非常に重要な役割を果たすものだと思いますから。

−最後に今後の活動について伺いたいのですが、先ほども写真教室の話がありました。主催している写真教室はこれまで数百人の生徒さんが通ってきたそうですね。最近ではスパイスカレーの料理教室も開催されていて、活動の幅が広いです。どこに向かっているのですか?(笑)

山本 確かにいろんなことをしていますが(笑)、全部写真につながっているんです。スパイスカレーの料理教室はつくって食べて終わりなのではなく、料理が完成したら、それをスタイリングして撮影するんです。料理教室でありながら、写真教室にもなっているわけです。好きなもの同士をつなげているんですよね。

写真を撮る活動は基本ひとり。意外に孤独だと思うんです。一方、こうした教室の活動は真逆。みんなでわいわいしながら学んでいきます。今はコロナの影響もあってオンラインによる授業ですが、変わらずみんないっしょに楽しめています。このような写真を撮る行為とのギャップが、今のわたしにはありがたい。写真を創作していく上で、教室はとても大事なかけがえのないひとときになっています。

−そして、カレー屋さんをつくりそうな勢いも感じます(笑)。

山本 はい、本当に考えてますよ! スパイスカレーのお店つくりたいな〜と。ほかにもスパイス農園つくって、みんなでそれを写真に撮ったり。楽しそう。

年齢的なものもあるのかもしれませんが、最近やりたいことは躊躇せずにどんどんやるべきだって強く思うんです。これは写真に限りません。そのとき、そのときにできることを、よく考えながら実行していきたい。自分の興味のあること、楽しいと思うことはやらなければ。人生は、一度きりですから。

山本さんがオンラインで料理教室を行なっているキッチン。写真も料理も本気に楽しく!

BenQ SW271C

主な仕様

●Adobe RGB99%対応写真・映像編集向けカラーマネージメントモニター
●27インチ4K UHD(3840×2160)の解像度のIPSパネル採用
●「AQCOLORコンセプトに基づく正確な色再現
●Adobe RGB99%、sRGB/Rec.709 100%、DCI-P3/Display P3色域 90%までカバー
●スムーズなカラーグラデーションを可能にする10bit色深度
●ムラ補正技術により、均一なユニフォミティを実現
●ハードウェアキャリブレーション対応
●キャリブレーションソフトPalette Master Element(BenQ HPの製品情報「ソフトウェア」よりダウンロード)が利用可能
●カラー写真をモノクロでプレビューできる3段階のモノクロモード
●異なる色空間の映像を左右に並べて同時に表示できる「GamutDuo」機能
●Pantone認証、CalMAN認証を取得
●HDR10(PQ方式)・HLG方式対応
●60W給電可能なUSB Type-C搭載
●モニター(遮光)フード標準搭載
●3年間保証/修理期間中に代替機貸出できる「センドバックサポート」対象製品
センドバックサポートの利用についてはこちら

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山本まりこ / 写真家

写真家。理工学部建築学科卒業後、設計会社に就職。25歳の春、「でもやっぱり写真が好き」とカメラを持って放浪の旅に出発しそのまま写真家に転身。風通しがいいという意味を持つairy(エアリー)をコンセプトに、空間を意識した写真を撮り続けている。撮影、執筆、講演、講師など活動は多岐。写真集「AIRY COLORS」「熊野古道を歩いています。」、著書「エアリーフォトの撮り方レシピ」など出版多数。写真教室Room5656主宰。好きな食べ物は、カレーとイカ。


STORY TELLER / 写真家達の物語 vol.37

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まちスナ日和