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フォトまち便り「Hello Local」vol.16 下田写真部 ~海と共に生きる町~


紀南、富山、郡山、下田の4つの地域写真部が綴っていく連載企画「Hello Local」。今回は下田写真部の渡邉さんによる「海」をテーマにしたフォトエッセイ。伊豆・下田には大小さまざまなビーチが点在し、その美しさは下田観光の代名詞とも言えますよね。下田で生まれ育ったことと、その視点で切り取られた写真を見ると、下田の海の美しさを色んな面で感じられる。この夏は下田に行きたくなる、そんな気持ちにさせてくれます。


下田で生まれ育ち、大学入学を機に東京へ。下田で生まれた人たちの多くが、このような道を辿ります。その内、ほんの数パーセントの人が下田に戻ってくる。私はその数パーセントの下田生まれ下田育ち。でも、帰ってきて思ったのは、下田は他の地域と比較してもとても素晴らしい町だということ。

今回は、そんな素晴らしい町の「海」をテーマにご紹介し、海の撮り方についても書かせていただきます。

まず、見ていただきたいのがエメラルドグリーンと白砂のビーチ「外浦海岸」。ここは遠い国のリゾートかと思うほどの美しさ。このビーチは小さい頃によく魚を見に潜っていたところ。でも、当時は海が綺麗とか、そんな感想を持っていたかが定かではないくらい、あまり意識をしていませんでした。大人になって見たこの外浦海岸は、とても美しく見え、天気の良い日に通ると車を止め、レンズを向けてしまいます。しかも、何度と撮っているのに懲りずに撮ってしまう…。それほどまでに私を飽きさせないビーチです。下田にはこうした美しいビーチが一つではなく、おそらく小さいビーチも含めると10箇所以上はあります。小さな町にこれだけのビーチがあるのだから驚きです。

春の数日だけゼリーのようにトロトロとした表情を見せる多々戸浜海岸。こちらの海岸はサーファーのメッカと呼ばれるほど、多くのサーファーに愛され、年中多くのサーファーが波乗りをしている

ちなみに、下田のビーチを撮影する時は午前中をおすすめします。ビーチは東と南側に位置するので、午前中の方が太陽の光がバッチリ当たり、綺麗な青色が出ます。

ダイナミックな岸壁の龍宮窟

海といっても、おすすめしたいのはビーチだけではありません。下田には他にも魅力的な海があります。

次に紹介したいのが龍宮窟。海にできた洞窟なのですが、天井にぽっかり大きな穴が空いて、そこから光が射しこんでとっても神秘的な空間なんです。最初にこの空間を体験する人はみんな感動する、そんな場所です。もう一つ、この空間が凄いところは、洞窟上の遊歩道から洞窟を見下ろすとハート型になっていることです。波の侵食によるものですが、ハート型なんてロマンチックですよね。このことから、龍宮窟はラブパワースポットとしてもカップルに人気のスポットになっています。

遊歩道から見下ろした龍宮窟

この龍宮窟ですが、撮影には広角レンズか魚眼レンズが活躍します。これらのレンズで撮らないと、この洞窟感が表現できません。また、晴れた日は時間によって影が強く出ます。明るいところと暗いところの差が大きいので、撮り方や現像に工夫が必要となります。

爪木崎と白亜の灯台

次に紹介するのは、白亜の灯台のある爪木崎。映画のワンシーンを思わせるビーチと岬が一緒になった海岸です。実際にロケも多い場所です。私は小学校の時に春の遠足で毎年行っていたということもあり、思い出深い場所です。前述のように小さな頃は海の美しさにはあまり目がいかなかったので、海岸に漂着していたクラゲに興味津々だったことを思い出します。

爪木崎の水仙

1月には海岸に300万株の水仙が咲き誇り、アロエの赤い花と海の青を美しいコントラストのある写真が撮れます。

寝姿山自然公園から撮影した下田湾

続いてこちらは下田湾です。下田の街のすぐそば、教科書に出てくるペリーが乗った黒船が来たのもこの湾です。当時の下田は大阪と東京の間にある港として、多くの船が行き来をしました。「入船出船三千艘」という言葉が残っていることでもその賑わいが伝わってきます。今のように車がなかったので、船が物や人を運んでいましたから、海運に恵まれたことで下田は発展しました。車と電車が主流となってしまった現在は陸の孤島になってしまいましたが、逆に独特な文化や風景が守られているともいえます。

下田湾を撮影する際は、湾の周囲の高台に上がるのがおすすめ。下田ロープウェイで寝姿山に上り、俯瞰からの撮影も可能です。

下田湾には黒船を模した観光クルーズ船が運航しています。乗船して、海から街を撮るのもよし、陸から望遠レンズを使って海に浮かぶクルーズ船を撮るのもおすすめです。

最後の一枚は白浜大浜の夕景です。夕景を撮影する際は雲が出ていると空に表情があっていいですね。太陽は西側に沈むので、撮影する際は北側の岸から狙うと陰影が出て、印象的な写真になります。

いかがでしたでしょうか。写真を見返して私が感じたのは、学生時代に下田から離れ、また大人になって帰ってくると生まれた町に対して見方が大きく変わっていることに気づきます。昔は田舎に住むことに劣等感がありましたが、今は田舎に住むことをとても楽しく幸せに感じるようになりました。日々、移り行く自然の景色を見て、季節の移り変わりを感じ、旬の地元の幸を食べる。地元に生きてきた先人も同じように歴史を繰り返してきたのだと思うと感慨深いです。

これからも下田の海を見続けて、写真に撮り収めていきたいですね。

text&Photo:渡邉一夫(わたなべ かずお)


渡邉 一夫

1979年、静岡県下田市生まれ。東京の大学を卒業しUターン。下田市内にて起業。下田写真部に創部当時から参加。

下岡蓮杖の生誕地、伊豆下田で、写真好きな仲間が日々の暮らしを発信したり、高校生とのフォトツアーなどを開催しながら「写真のまち」を目指して活動中。現在、部員12名。
下田写真部公式Facebook https://www.facebook.com/shimoda.photo


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