内藤由樹の海外武者修行ログ
vol.18 自転車で有刺鉄線に突っ込んで牛にモオオーと鳴かれた話


2012年関西で行われた日本最大級の写真イベント「御苗場」でレビュアー賞を受賞した注目若手作家・内藤由樹。
世界各地を巡り、現在ペルーにある「Centro de la imagen」のマスタークラス在籍中。
http://yuki-naito.tumblr.com

ジャングルに居る間はする事もなかったので、家族の自転車を借りて毎日徘徊していました。
居候先の集落をでて1本道をずっとずっと走っていきました。
暇なのでひたすら、同じ道を1日に何回も走るもんで、途中の集落の間で
変なアジア人が毎日必死に自転車こいでる。
と話題になっていました。

ある日集落の人に呼び止められて、果物をもらい椰子の木の下で座って食べていると、
半裸の、でかい鉈を持った男の人が近づいてきたので、
怖い、何かされるのだろうか。と思ってビビりつつビビりすぎて動けないでいると、
鉈をいきなり振りかざし振り下ろし、椰子の実をもいで割ってくれ、
脱水症状になったらいけないから飲め。と渡されました。
何なんだその優しさ。
他にも、知らない人たちに、頑張れーと応援され、手を振られ、
市民マラソンとかにでるとこんな感じなのかなあ。となった。

また別のある日、いつも通る道沿いの広場でバスケットボールをしている若者たちに、
ちょっとセニョリータ!こっちへこい!
と呼ばれた。
着いて行くと、一緒に遊ぼう、フリースローやろう。と誘われました。
対決して負けたらビール奢りね。と。
私は、やだよー、勝てないもんーできないよー、
みたいなことを言ってハンデをもらったのですが、 フリースロー、かなり得意です。
実は、小学生の時に入っていたミニバスのチームが全国1位でした。
更にぶりっこをしてハンデをもらったことにより、わたしは、ぼろ勝ちしました。
圧勝です。
彼らはきっと、わたしに声をかけたのはいいカモを見つけたつもりにでもなっていたのだろう。
ミニバスの、コーチのスパルタ教育に感謝。
1人につき1本づつビールを奢られ、上機嫌で再び自転車をこぎ始めました。

ずっと続くビーチを横目に、ああ、海、綺麗だなあ。
と思った瞬間、わたしの身体はなにかちくちくする痛いものに絡まっていました。
酔っているのとよそ見していたことで方向感覚が狂い、
牧場の牛を逃がさないように道路沿いに張っていた有刺鉄線に突っ込んだのです。
牛たちがびっくりして、モオオオオオオオオ!!!と鳴きました。
ついでにその家の子どももびっくりして、叫んでいました。
パパー、変な、外人の、女が、血まみれ、怖いー!!!
だけ理解できました。
家の中から、カールおじさんみたいな格好をしたその子のパパが出てきて、
有刺鉄線をほどいてくれました。

痛かったです。

内藤由樹 / ないとうゆき
1987 年大阪府生まれ。2013年 キヤノン写真新世紀 佐内正史選・佳作/第2回御苗場夢の先プロジェクトグランプリ/キヤノンフォトグラファーズセッション ファイナリスト/2012 年 御苗場vol.11 関西 レビュアー賞/写真集に「being」(2013年・TIP BOOKS)がある。

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