【速報】御苗場vol.26 受賞者作品&選出理由を発表!
前半(5/22~5/25)・後半(5/28~5/31)会期に分かれ、全面オンラインでの開催となった御苗場vol.26。今回は海外・国内併せて総勢11名のレビュアーが参加。ほかにもスポンサー賞やオーディエンスの投票による賞も。個性豊かな展示の中から選ばれたのは?受賞作品と選出理由を発表します!
御苗場vol.26の賞はこちら!
【海外レビュアー】
・マーク・プルースト
・パーパン・シリマ
・房彥文
・エリック フローンス
・ジム・キャスパー
【国内レビュアー】
・きりとりめでる
・林紗代香
・小林正明
・小松整司
・遠藤みゆき
・テラウチマサト
■スポンサー賞
・Sony World Photography Awards 御苗場賞
・「写真の町」東川町賞
■オーディエンス賞
■グループ賞
レビュアー賞【海外レビュアー】
マーク・プルースト(ヴィジュアルストーリーエディター / フォトキュレーター)選出
白組:SS04 内藤雅子
穏やかで整った写真群で構成された美しいシリーズです。フォーマット、光と構図は一貫しており、明浜という島の美しい景色を提供しています。作品の順番、シークエンスが良くできていて、私たちはゆっくりと島とその住民を紹介されていきます。
残念だったのは、画像9が編集を弱めているように見えたこと。突然、カメラと(ぼやけた)子供たちとの間で起こるアイコンタクトで、写真家の存在が浮かびあがります。その瞬間までは、観察の静けさがあったのですが、突然、インタラクションが起こります。フレームの大部分にピントが合っていなかったこともあまり効果的ではなったかもしれません。ですが、それを差し引いても、素晴らしい編集がされた力強い作品でした。おめでとうございます。
紅組:SS02 Tokyo Takashi / 白組:T14 OHO KANAKO / 白組:T05 水池葉子 / Yasuhiro Mitsuhashi
パーパン・シリマ(インデペンデントキュレーター)選出
白組:T14 OHO KANAKO
60以上の応募作品から選んだトップ3の写真家の中で、私が1位に選んだのは、「OHO KANAKO」さんです。私にとっての彼女のモノクロの作品「passed away」は、とてもパーソナルな詩のような作品で、それは不安、痛み、恐怖、悲しみといった様々な感情を美しく表現していて、それでいて母の愛にあふれた作品でした。
家族というのは、よく選ばれる被写体ではありますが、モノクロの作風はこの作品のテーマによく合っていたと思いますし、それらがうまく重なりあって鑑賞者の心を動かす作品に仕上がっていたと思います。彼女の作品は、私が運営するウェブサイト-www.arctribemag.comにて紹介させていただきます。
紅組:SS01 松永奈々 / 白組:W41 船見征二
房彥文(Wonder foto day創設者)選出
紅組:W16 塩原真澄
古典科学のハンドブックを彷彿させる、分類学のような写真を撮られていて、それをご自分の果物農家やブリーダーの仕事につなげられている点が素晴らしいと思いました。仕事はシンプルで純粋ですが、それを同じスケールで表現するのは難しい事です。今回はウェブ経由でしか作品を見られませんでしたが、羊皮紙にプリントされている作品を実際に確認するのが楽しみです。
エリック フローンス(写真雑誌「GUP」総合編集長)選出
白組:T14 OHO KANAKO
一目見た瞬間に興味をそそられ、その後ゆっくりと問題に吸い込まれていく、ある種の謎に共鳴していくような作品を見ることが私は好きです。親密さというテーマを扱う際にこの事はとても重要で、現実世界でそうするように穏やかなアプローチが必要になります。ステートメントを読むと、この作品にはある種の重さがあるわけですが、にもかかわらず、鑑賞者が招かれていないだとか、あるいは不快に感じることなく、子供たちと近い距離を感じられる作品である点が素晴らしいと思っています。なぜなら、それは私たちがこの作品の写真家とであるOHO KANAKOさんと同一化し、その視点からこの家族の生活を見ることが許されているからです。さらに、比喩的な要素を加えることで、メランコリーな雰囲気が強調されている点も素敵だと思います。まさに嘘が無い作品のように感じました。おめでとうございます。
紅組:W04 Mark fujita / 白組:W07 ナカムラヨシノーブ / 堂島すいか
ジム・キャスパー(レンズカルチャー共同創業者・編集長)選出
白組:T05 水池葉子
この写真作品は、軽快で、遊び心があり、同時に哲学的です。シリーズとしてまとめて見たとき、鑑賞者は写真家の目を通して、気まぐれで、それでいて瞑想的な方法で物事を見ることを促されます。それはこの作家の独特な物の見方であり、孤立した無生物のオブジェたちからは、活発なキャラクターを連想させます。ステートメントにある「野良」に関する言及も、写真家の視点とこの作品の動機となった意図をさらに理解するのに役立ちました。
紅組:T10 中司雅信 / 白組:W35 ウエマリキヤ / 白組:SS03 紫垣 寧仁 / Yasuhiro Mitsuhashi
レビュアー賞【国内レビュアー】
きりとりめでる(写真研究 / 執筆 / 企画)選出
紅組:W16 塩原真澄
写真の意味は時代とともに変化してきました。それは「写真」が、表現や社会上の文脈と、記録や科学技術にとっての文脈、そして支持体の上に成立している制度の総称だからです。本作はこの「写真なるもの」について、「記録」に軸足を据えた上で、あらゆる角度から対峙し、「写真に向き合うこと」が、写真のための写真に充足することはありえないということを思い知らせてくれます。
まず作品に引用されている植物画は、写真機の発明以前の種の同定のための記録物であると同時に芸術表現と見なされていた描画法です。この記録と表現が一体となった植物画は19世紀以降写真が担いはじめ、現代では苗種同定という品種登録の制度へ流れ着き、純粋な記録として振る舞う写真の在り方を開示します。しかしその隣では、同質の撮影とレタッチによる「表現」が表明されるのです。
いずれの作品も精緻な植物の写真であることに変わりはありませんが、植物を記録するという欲望のなかで同着してきた表現と記録の歴史が複雑に絡み合い、いくつものパラレルな二項対立を鑑賞者に往復させ続ける作品構成になっています。
また、記録を目的とした時の写真における支持体への着目も見逃せませんが、支持体のリサーチは二項対立の往復にまでは到達しておらず、深化させて欲しいと思いました(顔料や現像についてのリサーチを行うのも良いかもしれません)。キャプションの情報は洗練の余地がありますが、とにかく拝見できてよかったです。今後の展開も非常に楽しみにしております。
紅組:W19 磯野ひろき / 紅組:T01 望月クララ / 紅組:SS06 ユウ / 白組:T01 大塚卓司 / 白組:T02 箱入り息子 / 白組:SS03 Yasuhito Shigaki
林紗代香(「TRANSIT」編集長)選出
紅組:T01 望月クララ
とくに3部作にまとめた編集が素晴らしいと思いました。
お父様の育った環境や人となりがわかるような情報をリズミカルに紹介する1部/2部があるからこそ、3部の寡黙でなんてことのない道とか建物といった風景写真のなかにお父様の気配が立ち上がってきて、余韻が残る作品になっているのだと思います。まるで1本の映画をみおえたような充足感がありました。
お父様の撮影された写真の情感・存在感が強いので、2部の、遺品を白バックでモノとしてクールに俯瞰で撮影しているコントラストもよかったです。
紅組:W16 塩原真澄 / 紅組:T07 GENTAROABE / 紅組:T10 中司雅信 / 紅組:T11 Masahiro Yasui / 紅組:SS05 へいにゃん! (平猫! :Hey-Nyan) / 白組:W54 くりはらはるか / 白組:T01 大塚卓司 / 白組:T09 Minae Kawada / 白組:T11 福岡陽子
遠藤みゆき(東京都写真美術館学芸員)選出
白組:W52 言の葉(小林真佐子)
写真と額装のとりあわせ、まとまりが良く、端正な佇まいとクオリティの安定感から、総合的に優れていると感じました。とくに、今回の出展者のみなさんはこの新型コロナウィルスという社会状況の中にあるということを作品に反映している方も多くいらっしゃいましたが、今回小林さんは「辰野金吾への手紙」というかたちで表現した点が非常にユニークでした。
辰野がスペイン風邪により亡くなったという事実(の偶然)に戦慄すら覚えます。壁面展示とは対照的なアルバム形式の写真構成も、写真の配置や手書きのテキストに細やかな配慮がなされ無駄がなく、表現方法とメディアの選択が上手く機能していました。
W04 Mark fujita / 紅組:W16 塩原真澄 / 紅組:T01 望月クララ / 紅組:SS01 松永奈々 / 白組:W52 言の葉(小林真佐子) / 白組:T01 大塚卓司
小林正明(gettyimages シニア・アートディレクター)選出
紅組:T01 望月クララ
10年位前からアートフォトの世界でファウンドフォトという言葉が歩き始めました。蚤の市などで見つけた昔の写真を「光を当てて、時代を繋いでいく」という、そういう手法のカテゴリだと思います。やはり会場を回っていて、圧倒されたのが、望月さんの作品の手作り感です。非常に自分と父親のパーソナルな、私的なテーマでありながら、そこにぐいぐいと引き込まれていく普遍的な力がありました。ギリシャ神話の昔から、父と娘の関係なのか、母と息子の関係なのか、いろんなことが取り上げられていますよね。とにかくやはり、その丁寧さ。圧倒的な愛や美しさというものに拍手を送りたいと思いました。(表彰式のコメントより)
紅組:W14 LION M / 紅組:W16 塩原真澄 / 紅組:W19 磯野ひろき / 紅組:T07 GENTAROABE / 紅組:T11 Masahiro Yasui / 紅組:SS01 松永奈々 / 白組:W07 ナカムラヨシノーブ / 白組:W32 深沢久美 / 白組:W54 くりはらはるか / 白組:SS01 雪鈴*Lin
紅組:W04 Mark fujita / 紅組:T10 中司雅信 / 紅組:SS05 へいにゃん!(平猫! :Hey-Nyan) / 白組:T01 大塚卓司 / 白組:T02 箱入り息子 / 白組:T05 水池葉子 / 白組:W21 川本和正@かえる
小松整司(EMON,Inc. CEO / EMON Photo Gallery ディレクター)選出
紅組:T01 望月クララ
御苗場は自由な発表の場であると共に、賞を取りにいくというコンペティションの要素も魅力ですよね。その賞を狙うためには、作家さんの視点や表現技術がポイントとなって、そのアプローチが要となります。それだけに、突き抜けた表現を獲得するのは非常に難しいことでもあるわけです。
望月さんの展示は決して目立つものではありません。技術も、方法論もそうです。しかし、人と人、あるいは家族との関係、そうした最も自分に近いところに人を集めて紡ぎだしたもの、本当に力強い動機が伝わってきました。どうやってこの作品を撮ったの?質問されるよりも、なぜあなたはこの作品をつくったの?そう問われることは大事なことだと思います。この作品には、そうした根本があって、素晴らしい記録を残したと思います。(表彰式のコメントより)
紅組:W10 奥山弘道 / 紅組:W16 塩原真澄 / 紅組:W19 磯野ひろき / 紅組:T07 GENTAROABE / 白組:W27 黒水雪那 / 白組:T02 箱入り息子 / 白組:T06 Kazumi Kurokawa / 白組:T09 Minae Kawada / 白組:T14 OHO KANAKO
テラウチマサト(写真家/御苗場総合プロデューサー)選出
白組:T09 Minae Kawada
イギリス郊外の森を撮った写真を僕はとても気に入りました。出展者のみなさんと同じ撮る者としてKawadaさんの作品を見ていた時に、小さな子どもの頃、ウォルトディズニーの世界に触れた時と同じ感覚になったんですね。そこにははファンタジーもあったし、スリルや冒険もあった。少し怖い感じもあった。
Kawadaさんの写真を見ながら、写真1枚1枚をさまよっていくと、これって大人のディズニーランドだなという感じがしました。写真の持っている楽しさと、そして撮影されている方の気持ちがひしひしと伝わってくる。またそのプリントの良さ、あるいはサイズの魅力というのもありました。そういった理由で、今回力強い作品がいっぱいある中で、Kawadaさんを選出させていただきました。本当に素晴らしい作品だったと思います。(表彰式のコメントより)
紅組:W16 塩原 真澄 / 紅組:T10 中司雅信 / 白組:W32 深沢 久美 / 白組:SS04 内藤雅子
スポンサー賞
Sony World Photography Awards 御苗場賞
紅組:SS02 Tokyo Takashi
素晴らしい作品でした。この作品に私が惹かれた理由を簡単にですがお伝えさせてください。
そこには3つの理由があると言えます。
1つ目は作品の文脈です。歴史へのリンク。琳派の作風でしょうか、伝統的なペインティングから、カリグラフィ、そして漆器作品へと続く、その系譜に見れるようなカラフルで強い美学を感じました。そういった作風というのは、日本の屏風や扇子などに描かれる作品を思い起こさせてくれますよね。そんな歴史へと紐づくとても魅力的な作品のように思います。
2つ目が被写体の魅力ですね。梅というのは、桜に比べるとづしても一歩引いた存在なのですが、それでいて独特の存在感があります。日本的なエレガンスと言ってもいいのかもしれません。驚くほど繊細で、洗練されている。そのエレガンスを失っておらず、機微に保っている。それもあの作品の力強さと色合いの中でです。また作品のテクスチャーに深みがありました。デジタルで見ているにも関わらずです。それは驚くべきことです。
そして最後に3つ目ですが、いくつかのメディアのコンビネーションであるということに惹かれました。背景をペイントされているわけですが、写真というのはとても多様性にあふれたメディアで、クリエイティブな才能にあふれた人にカメラを渡せば様々なことができる可能性にあふれているのです。単にモノクロであったり、フレームされて壁に収まるだけが写真ではありません。アーティストたちがその境界線を押し広げ、他のメディアや技術と混ぜ合わせる姿は素晴らしいと思うのです。それは写真が未来のメディアだと私たちに教えてくれます。それが、Tokyo Takashiさんを選んだ理由です。
紅組:W16 塩原 真澄 / 紅組:T10 中司雅信 / 白組:W04 大谷景 / 白組:W32 深沢 久美
「写真の町」東川町賞
紅組:W16 塩原真澄
圧倒的な果物への愛情と厳しさが、伝わりました。被写体との関係性が見えてくるようでどの写真も心がザワザワしました。
「果樹園の農作業が終わった夜に撮影を行い閉散期となる冬場に編集をする」という日々に、塩原さんの、果物と写真への敬意と力強さを想像します。ご自身のイメージを更に超えていくような、そんな作品をこれからも作られていく事を、また拝見出来る事を、楽しみにしています。
紅組:T01 望月クララ / 白組:W35 ウエマリキヤ / 白組:W56 Shouji.K / 白組:T14 OHO KANAKO / 白組:S02 四高写真部
オーディエンス賞
紅組:W02 SUMI
2位-白組:T16 MARIKO OGAWA / 3位-白組:T15 成瀬夢
グループ賞
白組:W12 PPS東京18F featuring YUKI MATSUMOTO
御苗場事務局一同で審議し、選出しました。グループということで、いろいろな方にご参加いただきました。展示はセルフポートレートと2枚の写真をセットにしたもの。その展示の中でも、みなさんセルフポートレートに非常に個性がありました。セルフポートレートと組写真をあわせて楽しめるところに工夫があり、その点を評価させていただきました。
受賞されたみなさま、おめでとうございます!
受賞者のみなさんのインタビューも掲載予定ですのでぜひご覧ください!
御苗場のVRは6月末まで公開中!
御苗場公式HPでは、会場の展示の様子をVRでご紹介しています。公開は6月30日(火)まで。受賞作品をぜひじっくりとオンラインでご覧ください。