鈴木理策/中藤毅彦/テラウチマサトが選んだ理由は?上位7作品の評価ポイントをチェック!
5位 「レストラン」
今村修(埼玉県)
✔心休まる、良い写真
✔じっと見ていても飽きない
✔たくさんの要素が詰め込まれているところが面白い
――続いて、5位は今村修さんの作品「レストラン」。鈴木さん、中藤さんが3位に選ばれました。
鈴木 シャッターを押したタイミングが意地悪ではなくて、素朴な感じがいいですね。上のパエリア鍋が、トーンや向き、濃さでリズミカルになっていて微笑ましかったです。心休まる、良い写真だなと思いました。
中藤 いろんな情報がこの中に凝縮されていますね。人も相当写っているし、ポスターも映り込んでいる。中央には本当にいくつもの手が重なっていて、そこだけでも見ごたえがあります。
1枚の中に、実体とポスターの複写と、反射と、たくさんの要素が詰め込まれているところが面白いなと思いました。
最初はごちゃごちゃした写真だなと思ったのですが、よく細かいところを見てみると色んな発見がありました。
テラウチ じっと見ていても飽きない楽しい写真です。中藤さんが言われた手がたくさん写っている部分の重なりが特に面白いので、そこだけにアップしてもよかったんじゃないかなと思いました。
6位 「密度」
円山貫(神奈川県)
✔タイトルの通り密度を感じる
✔作者のねらいがうまくいっている
✔伝えたいメッセージにトライしているところが素敵
――続いて6位は、自由応募で円山貫さんの作品「密度」です。鈴木さんが2位に選ばれました。
鈴木 レンズの効果なのか、タイトルの通り密度を感じますね。
窓や洗濯など家ごとに違う細かな部分も面白いです。これは合成しているのでしょうか。
影の付き具合によって空間が把握しづらくなっていて、本当にこういう場所があるのかどうか判断できない部分がありました。
テラウチ 合成したのかはわからなかったのですが、作者のねらいはうまくいっていますよね。ただ、自分もこういう場所を見たら撮るだろうなと思いました。発想力、アイディアという点で新しくはないかなと。
この場面を見つけてきたところは素晴らしいので、もう少しつくり込んだり、自分なりのひと工夫を加えられるといいですね。
中藤 それぞれの家にはそれぞれの生活があり、家族がいて、個がこの写真に集まっているように感じました。
この様子がアリの巣にも見えて、人間はアリのような存在だという作者の文明批評なのかなという気もして。
うがった見方かもしれませんが、自分の伝えたいメッセージに極端な形でトライしたところが素敵だと思いました。
7位 「私」
kyabe(兵庫県)
✔1枚の写真の中の対比がうまい
✔振れ幅がある写真
✔モノクロの質感の美しさ、作者の美意識が感じられる
――次に7位は、テーマ応募でkyabeさんの作品「私」。テラウチさんが特別賞に選ばれました。
テラウチ 重厚な石の表現と、二輪咲いている花の対比に惹かれました。儚いものと力強いものを、1枚の写真の中にうまくまとめられています。
オンライン応募の作品なので、欲を言えばどんな風にプリントを仕上げてくるのか見てみたかったですね。どんな階調で、どんな厚みの紙を選択するのかが気になりました。
すべてをプリントしろということではないのですが、この作品に関してはプリントという形で、もっと作者の感覚を味わいたいなと思いました。
鈴木 上に写っているものが僕には石ではなく雪に見えました。静かで構成も安定しているんですが、雪が降ってきたように見えたりと、振れ幅がある写真だなと思います。
確かにテラウチさんが言われたように、作者がどこまで考えているのかプリントで見てみたかったですね。
中藤 モノクロの質感の美しさがある写真だなと思いました。
石のごつごつした表面や、黒い中に白く浮かび上がった花が綺麗で、作者の美意識が感じられました。
いかがでしたか?
審査員のみなさんの評価ポイントが異なる作品もあれば、同じ点を評価する作品もあるところが面白いですね。
次回は入選作品10点の講評をご紹介します!