鈴木理策/中藤毅彦/テラウチマサトが選んだ理由は?入選10作品の評価ポイントをチェック!
「春のシエステ」
kogomama
✔猫用の椅子とベッドがある状況が面白い
✔もう少し主題を明確にした方がよい
―続いて、自由応募でkogomamamさんの作品「春のシエステ」です。
鈴木 2つ椅子が並んでいますが、右側だけでもよかったかもしれません。
後ろの壁に描かれた花びらと眠る猫の表情だけで、十分愛らしさが伝わる写真になったと思います。
中藤 猫用の椅子とベッドがある状況が面白いですね。ただ、猫写真として見ると少し弱いかなという印象がありました。
テラウチ 作者が何を伝えたくてこの写真を撮ったのかがいまいちわからなかったです。
うずくまる猫の姿に微笑ましい気持ちになりましたが、もう少し主題を明確にした方がいいように思いました。
「夫婦」
三木一美(香川県・44歳)
✔いいタイミングで捉えられている
✔想像の余地を残した切りとり方の工夫ができるとさらによくなる。
―次に、自由応募で三木一美さんの作品「夫婦」です。
中藤 これから結婚する新郎新婦と老夫婦の対比の面白さがありますね。太鼓橋の右と左に位置しているところを、いいタイミングで捉えられたと思います。
橋を下る方向に老夫婦がいるので、人間は老いてやがては死んでいくという人生がここに表されているように見えました。でもそこまで悲惨な感じはなくて、ある種のユーモアとして楽しめる作品です。
テラウチ 中藤さんが言われたような作者のねらいが、きちんと伝わってきます。
新郎新婦がもつ番傘に白い円が描かれているので、なんだか逆にこの2人が天に召されていくようにも見えました。
鈴木 説明的なシャッターチャンスだったと思うんですが、逆にそうとしか見えない部分があるかなと思います。もちろんそれが作者の意図なので当然なんですが、それ以上の面白さが生まれづらいかなと。
見えた通りのものを撮るのではなく、もう少しこちらに想像させるような切りとり方の工夫を考えてみると、さらによくなると思います。
「恋とはどんなものかしら」
犬飼和嘉(岡山県・51歳)
✔アイディアが面白い
✔切り取り方や構図にもうひと工夫ほしい
―続きまして、自由応募で犬養和嘉さんの作品「恋とはどんなものかしら」です。
中藤 下の女の子のオブジェと網タイツの女性の足の組み合わせの意図が、僕にはあまりわからなかったです。
エロチックなものをねらっているのか、ここにコンセプトのようなものがあるのか、またはコミカルなものなのか判断がつかない写真でした。
鈴木 縦位置にしてみても面白かったんじゃないでしょうか。
作者がどうしたいのかという部分は読み取れなかったので難しいところですが、ヒールとストッキングと女性の足のフレームだけで撮ってみてもよかったような気がします。
テラウチ 作者の方なりの考え方や表現したいことがあったんだろうと思うのですが、技術的な部分が欠けていて、なんとなく伝わりづらいですよね。
たとえばライティングで影をつけてみるだけでも、随分印象は変わると思います。人間は立体的だから影がきちんと出てくるけど、このオブジェはそんなに深い影がでない。リアルとイラストの差がそこで表現できたかもしれません。
もう少し細かいところに気を遣うだけで、アイディアの面白さが引き立つ写真になると思いますよ。
「異次元散歩」
岩田徳彦(広島県・47歳)
✔発想が面白く、工夫して作品をつくったのが伝わる
✔切り抜き方や背景でちょっと詰めが甘かった
―続いて、自由応募で岩田徳彦さんの作品「異次元散歩」。
テラウチ 発想が面白く、工夫されて作品をつくられたのが伝わってきます。
ただ、背景が惜しいなと思いました。茶色い絨毯の上で撮られたのでしょうか。
切り抜いたスマホの上に画像を立体的に見せているところまでは考えられているのに、背景がただの茶色なところが少し雑だったかなという気がします。
鈴木 切り抜きのアイディアは可愛らしいのですが、これ以上の広がりが持ちづらいですね。
僕だったら切り抜いたものを携帯の画面ではなく写真の上に貼るかなと思います。足だけをくっつけて動くようにするとか。平面と立体のイメージにもうひと工夫ほしかったです。
中藤 思いついたこと自体はよかったんですが、実際に形にするにあたって、切り抜き方や背景でちょっと詰めが甘かったかもしれないですね。
アイディアだけで作品をつくるのではなく、完成度を高める必要があるかなと思いました。
「油断大敵。」
okirakuoki(東京都・40歳)
✔絶妙な一瞬を切りとっている
✔猫の色の対比とフォルムの面白さが際立っている
―最後に、自由応募でokirakuokiさんの作品「油断大敵」です。
鈴木 タイミングの瞬間的な面白さに尽きますね。後ろの緑色の部分に目がいってしまうのが少しだけ気になりますが、タイミングが優先されるべきだと思うので難しいところですね。
猫の顔が手にかぶさって見えない部分が、この状況をうまく説明していてよかったです。
テラウチ 絶妙な一瞬を切りとられています。
ぼけた河原の背景の中で、猫の色の対比とフォルムの面白さが際立っていますね。2匹ともが右手を出して同じ形をしているのが可愛らしいです。
中藤 見事にパンチが決まったんですね。いまは猫写真が人気なので、なかなか猫写真で抜け出すのは難しい。
この作品は瞬間的な面白さはありますが、猫写真としての魅力はまだ足りないかなという気がします。でも、この場面を見つけてこられて、ここまで仕上げられたところは素晴らしいと思います。
いかがでしたか?
次回は「もうちょっとで入選」20点の講評をご紹介します!