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HOW TO / 作品制作のヒント

かくたみほが実践! ソール・ライターのようなスナップ写真の撮り方


旅先や特別な場所ではなく、ニューヨークの自宅周辺を撮って、数々の名作を生みだしていた写真家のソール・ライター。
写真によく登場するモチーフやテクニックをお手本にして、写真家のかくたみほさんにニューヨークで撮影してもらいました。
ポイントを参考に撮れば、あなたもソール・ライター風に撮れるはず!

本記事は、「Have a nice PHOTO! Vol.18」の特集「ソールライターを探しに ニューヨーク写真旅」の「ライターのように撮るためのPHOTO LESSON」を再編集して掲載しています。

今回のお手本

写真集『Early Color』2006(Steidl)

 

ポイント① ポイントカラー

<ソール・ライターの作品>

写真集『Early Color』より「Red Umbrella 1957」

全体がシンプルな色味の背景に、明るい色を少しだけ入れることでアクセントにしているライターの作品。人物の顔をはっきり写さない写真が多いのも、ライターのスナップ作品の特長です。

写真集『Early Color』より「Barbershop 1951」

グレーや黒や白などシンプルな色の中に、赤や黄色、青などの強い色味を少しだけ入れるのがコツです。また、写真のようなバーバーショップのサインポールも、ライターの作品の中にたびたび登場するモチーフです。

かくたみほが撮影

焦点距離70mm/f5.6/1/160秒/ISO500/Photo:Miho Kakuta

おしゃれな赤い服の子供を発見! シンプルな背景にビビッドな色を見付けたら、瞬発的にシャッターを。ワンカラーでコーディネートしたおしゃれな人、カラフルな風船を持った人など、余白をたっぷりとって撮影してみましょう。

ポイント② ガラス越しの風景

<ソール・ライターの作品>

写真集『Early Color』より「Walking 1956」

ショーウィンドーや車のフロントガラス、部屋の窓に映るガラス越しの風景も、ライターが愛した被写体のひとつ。リアルに見る風景とは違って、反射して重なりあうもうひとつの世界がそこにはあります。

写真集『Early Color』より(左)「White Circle, 1958」(右)「Window Dresser, 1956」

2重にも3重にもレイヤーが重なりあった多層的な風景が現れ、その複雑な構成が隅々まで目を引き付けます。

かくたみほが撮影

焦点距離105㎜/f4/1/40秒/ISO1600/Photo:Miho Kakuta

窓ガラスやショーウィンドーを探しながら街をスナップ。多層的に映り込む場所を探して撮影してみましょう。撮影者がガラスに映り込んでしまうことも多いので、セルフポートレイトのように撮るか、映らない立ち位置を探すか、シビアな判断が必要です。

ポイント② 覗き見

<ソール・ライターの作品>

写真集『Early Color』より「Woman Waiting 1958」

「何かが起こっている」ような、ミステリアスな物語が生まれるのが「覗き見」の効果。被写体と対峙していないことで、撮影者の視線がより強く感じられます。

写真集『Early Color』より「Dog in Doorway Paterson, 1952」

被写体と撮影者の間にもうひとつ別の被写体を入れることで撮影者の立ち位置を示すのがコツ。車の窓枠のような上の写真の暗い部分が、フレームインフレームの構図の効果となって、自然と被写体の犬に目が行きます。

写真集『Early Color』より「Tanager Steps 1952」

手前の階段をぼかすことで、よりこのシーンが秘密めいて見えます。まるで鑑賞者もライターの撮影に立ち会い、一緒に覗き見ているかのような、臨場感を感じる写真です。

かくたみほが撮影

焦点距離70㎜/f4/1/1000秒/ISO2500/Photo:Miho Kakuta

歩道橋の上から、2匹の大型犬を散歩させている人物を発見。少し上の位置から撮影したことで、覗き見効果が高まりました。

ポイント④ 1/3構図

<ソール・ライターの作品>

写真集『Early Color』より「Canopy, 1958」

写真にはさまざまな構図のパターンがありますが、ライターの写真でよく見られるもののひとつが1/3構図。写真を縦か横で3分割し、その1か所にメインの被写体を配置する方法です。この写真ではタイトルにもある「天蓋」を大きく入れて、雪景色を下1/3で印象的に写しています。

写真集『Early Color』より「Tanager Stairs 1954」

写真上部1/3に人を入れて切り取った階段の写真。階段部分を広くとることで、ストーリーが感じられる1枚に。

かくたみほが撮影

焦点距離70㎜/f4/1/60秒/ISO1000/Photo:Miho Kakuta

地下鉄で撮影。横を1/3に区切って、真ん中部分に被写体を入れて撮影しました。1/3構図は写真に安定感が生まれ、グラフィカルな印象も与えます。主役以外の要素はなるべくシンプルにしましょう。

ポイント⑤ 雨粒を撮る

<ソール・ライターの作品>

写真集『Early Color』より「T 1950」

ライターの作品には雨傘がよく登場しますが、窓ガラスについた雨粒や結露によりできた水滴もよく登場します。雨の日も好んで撮っていたようです。

写真集『Early Color』より「Walk with Soames 1958」

「ソームズと歩く」と名付けられた写真。約50年間共に暮らした、元モデルで画家ソームズとの雨の日の散歩を楽しんでいたのでしょうか。

かくたみほが撮影

焦点距離105㎜/f4/1/80秒/ISO1600/Photo:Miho Kakuta

雨粒に合わせて、玉ボケを入れてみましょう。玉ボケをつくる主なポイントは3つ。①雨粒のついた手前のガラスと人工的な光のある背景の距離が離れた場所を選ぶ(人工的な光が玉ボケとなります)。②カメラの設定をAモード(絞り優先)にして絞りを開く(f値を小さくする)。③焦点距離は望遠側にして撮る(㎜数を大きくする)。

観るたびに、アイディアに満ち溢れたスナップに魅了されるライターの作品。Bunkamura ザ・ミュージアムで開催中の『ニューヨークが生んだ伝説の写真家 永遠のソール・ライター』を観に行きながら、ライター風のスナップに挑戦してみては?

かくたみほ写真展『ソールライターを探しに』を開催!
「Have a nice PHOTO! Vol.18」にて、編集部とともにソールライターのアトリエや、アトリエのあるイーストビレッジの街を訪れたかくたみほさんによる、取材時のアザーカットを紹介する展覧会を開催します。Bunkamura ザ・ミュージアムの展覧会ととともに、お楽しみください。
日程:2020年2月5日(水)~3月1日(日)
会場:72Gallery内 White Cube
住所:東京都中央区京橋 3-6-6 エクスアートビル1F
<プロフィール>
ソール・ライター
1923年アメリカ・ピッツバーグ生まれ。23歳で画家を目指しニューヨークに移る。その後写真家に転向し、1958年ころからファッション写真家として活躍。1980年代には表舞台から姿を消し、自分のためだけに作品を撮るようになった。2006年、83歳のとき、作品を扱っていたハワードグリーンバーグギャラリーに、ドイツの出版社シュタイデルの創業者、ゲルハルト・シュタイデル氏が訪れ、アシスタントのマーギットが作品を売り込んだことで写真集の出版が決まる。『Eary Color』が出版され、瞬く間に世界に知られるようになった伝説の写真家。

かくたみほ
77年三重県鈴鹿市生まれ。スタジオLOFTスタジオマンを経て、写真家小林幹幸に師事後独立。雑誌やCDジャケット、ファッションブランドカタログなどの撮影と並行し、光とトーンを活かした作風で活動中。ライフワークでは、フィルムカメラを愛用して旅をベースに光・暮らし・自然・対なるものに重きを置いて制作。全国でグループ展・個展も多数行っている。仕事では国内外様々な場所を旅しながら、作風を生かした撮影依頼を受けることが多い。

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