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内藤由樹の海外武者修行ログ vol.15 ジャングルでのホームステイ、なんとか始めた話

Magazine, レポート


2012年関西で行われた日本最大級の写真イベント「御苗場」でレビュアー賞を受賞した注目若手作家・内藤由樹。
現在世界各地を旅しながら写真を撮影している。
http://yuki-naito.tumblr.com

アンティグアでのスペイン語教室、3週間が終わったので、
前に書いたビーチの近くのジャングルの中にある村の家族の家に遊びに行くことにしました。
(参照→https://phat-ext.com/up-date/5122

なんとなくの話の流れで、
「おいでよ!」「わかったまた来るよ!」となっただけなので、本当に行くよ!と伝えるために、
教えてもらった居候予定の家族の電話番号にかけました。
そしたら、なんだかキャリアウーマン風のキビキビした喋り方の女の人が出て、
若干イライラしながらあんた誰?とまくしたてます。
おろおろしながら、あれ、こんな感じの人、いたっけなあ?と思いながら、
「えっと、ジャングルに住んでる○○さんですよね?」と聞くと、
「は?違うわよわたしグアテマラシティに住んでんの、仕事中で忙しいから切るわよ!」と
なってしまいました。
困った。

具体的な日も決めていなかったのに、いきなり行って大丈夫かなあ…てゆうか、
また同じところに辿り着けるのか?どうしよう、行くのやめようかなあ。別にここでも楽しく過ごせるし。
んーでも、行くって言っちゃったから、とりあえず行こう、会えなかったら帰ってこよう。
と確信が無いままに出発しました。
行くって言ったから本当に、約束を守ろうとした、という事実が欲しかったんだと思います。

そうして、朝早くに、ボロボロの、乗り心地の悪いワゴンに乗って、村にたどり着くも、
観光客の来ないジャングルの中でバックパックを背負った私は目立ちまくりで、
住民の訝しげな視線を受けながら汗だくになりながら(温度も湿度も高い)、迷い、
道を聞こうとして話しかけるも住民に逃げられ、暑い、バックパック重い、逃げられて悲しい、
と思いながら迷い続け、なんとか約束をした家族の家を見つけました。

が。声をかけても誰もでてきません。
「オラー!おーい、Yukiだよー!来るって言ってた日本人だよー!来たよー!」と言い続けても、
誰も応えてくれない。
身体、精神共に疲れまくり、とりあえず休もう、と、
その家の庭に吊ってあるハンモックに腰をかけるとそのまま寝落ちでした。
そして、どれだけ寝たかわからないけど、
「Yukiiiii!!!!!」という元気な叫び声で目が覚めると見覚えのある家族がいました。
近所の人から、変な外人が庭で寝てると電話がかかってきたよ、あははは!と言われ
そのまま家に迎えられた。

着いた日の夕方、その近所の家族と一緒に海の近くにある森の中に蟹(オカズ)を獲りに行きました。
すっごい森、ただ木がたくさんある場所、でした。
鉈で道を切り開きながらどんどん進みます。
蟹を見つけたら教えてね!
と言われたものの、なんとか歩くのと、凄まじくたくさんいる蚊を追い払うのに必死で
そんな余裕はありませんでした。
長袖のシャツで覆いきれない手の甲に、蚊が群がり、手をぶらぶらし続けながら歩く、間抜けな感じでした。
それに、その森には噛まれると足が腫れて歩けなくなる虫とかいるらしく、いろいろ必死でした。
ビーサンで来てしまっていた。
森の中を駆け回る、握りこぶしの半分くらいの蟹なんて見えない、捉えられなくて、
わたしは何の役にもたたず、蟹をおいかけるおばちゃんたちに、
がんばれがんばれ!ってずっと言っていました。
3時間くらいさまよってバケツ一杯の蟹をひろいました。
必要なものを探しにいって必要な分手に入ったらやめる。というのがとてもいいなあと思いました。
ジャングルの家に帰ると、子どもたちが
獲った蟹と放し飼いにされている家畜の豚を遊ばせて、お母さんに怒られていた。

夕方5時にごはんを食べて、
7時には真っ暗になって21時にはみんな寝ます。
虫と鳥と自然の音しかしません。
と思ったら、家の娘11歳の携帯電話からトランスの音楽がガンガン流れてきます。
フォーーーーーウ!とか叫んだりしながら、ハンモックでブラブラしていました。

そんなわけで、なんとか始まりました。

内藤由樹 / ないとうゆき
1987 年大阪府生まれ。2013年 キヤノン写真新世紀 佐内正史選・佳作/第2回御苗場夢の先プロジェクトグランプリ/キヤノンフォトグラファーズセッション ファイナリスト/2012 年 御苗場vol.11 関西 レビュアー賞/写真集に「being」(2013年・TIP BOOKS)がある。

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vol.17 居候先のじいちゃんがポートフォリオの編集を手伝ってくれた話
vol.18 自転車で有刺鉄線に突っ込んで牛にモオオーと鳴かれた話

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