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HOW TO / 作品制作のヒント

自分の作品の価値の付け方|写真「販売」基礎知識 4/12


写真を売ってみたいけれど、何から始めていいかわからない。

急に「作品を売ってほしい」と言われたけれど、値段の付け方やサインの入れ方など知らなくて困った。

そもそも、写真って売れるの?

作品制作を行う写真家やアマチュアの方で、そんな経験をしたり、疑問を持っている人も多いのではないでしょうか。

いつか作品を売ってみたい写真家や、買ってみたいアートファンの方へ。

本記事は、作品販売を仕事にしているギャラリーPOETIC SCAPEのディレクター柿島貴志さんに、写真販売の基礎知識について詳しくご紹介いただく連載です。

※本記事は、現在Tokyo Institute Of Photography(T.I.P)で開催されている、ギャラリーPOETIC SCAPEのディレクター柿島貴志さんによる人気講座の内容を一部抜粋してご紹介しています。講座は若干名のみ受付中(申し込み状況によって完売の可能性あります)

柿島貴志/Takashi Kakishima

大学卒業後に渡英。ロンドンBlake Collegeを経て、Kent Institute of Art and Design(現UCA)ビジュアルコミュニケーション・フォトメディア卒。ITやアート関連企業を経て、2007年にアートフォトレーベルphotta-lot、2011年にギャラリーPOETIC SCAPEを設立。現在はPOETIC SCAPEの経営・ディレクションのほか、写真作品の額装ディレクション、他ギャラリーでの展覧会・イベントディレクション、写真系企業へのビジネスコンサルティングなどを行う。

<今後の更新記事予定>
サインの入れ方、額装やプリントの決定について
写真のプレゼンテーションとルール
成約から納品、次の展示までのTIPS
写真販売シミュレーション

写真家はエディションをどう決めているの?

さて、前回学んだエディションですが、実際に、写真家はみなエディションを決めているのでしょうか。実はそうとも限りません。

オープンエディション

限定数を設けないスタイルのことを、オープンエディションと呼びます。大御所作家(森山大道、荒木経惟など)に多いですが、若手にもいます。

エディションをつけるけど、エディション50にする作家もいます。この数字は、版画だと少ないけど、写真だと多い。写真だと最近は10以下がスタンダードです。

「写真はエディションで区切るものではない」ということを信条にしている作家もいて、有名な中堅写真家でも手に入れやすい場合があります。

安いとみんなが買ってくれるかというとそうでもありませんし、高いとセレブが買うかというとそうでもありません。

そのバランスを考えながら作品の値段をつけて行きます。

エディションはどう管理するのか?

エディションは常に最新の状況を把握しておかなければなりません。いつ、どの作品のエディションが売れたか、日ごろからの管理が大切です。

たとえば、2か所のギャラリーで同時販売している作家の場合は、ステップアップエディションだと、常に最新情報が共有されていないと価格が変わってしまう可能性があります。

ただこちらの管理は、最初に買った人のみ。転売されたときの情報まで管理することは、現実的に難しいですね。

作品の値段の付け方

アート作品の価格はワインや株と似ています。

ワインは味そのものではなく、背景にある芸術性、ストーリー、シャトーの歴史、希少性、批評家による格付けなど、多くの要素が価格に反映され、時に非常に高額なプライスになることがあります。

他の商品ではあまり起こらない「付加価値」が一度にのってくる商品。わかる人にはわかるし、わからない人にはわからない。写真も紙に付加価値がついて値段が大きく変わります。

株は、人気と価格が連動します。また価格が上がると、保有者の資産も上昇します。株券の発行数によって一株当たりの価値も変動します。

過去につけた値段、価格から変動ができない(上げることはあっても下げることができない)のは、過去のお客さまを裏切ったり、ギャラリーの信頼が下がってしまうためです。

自分の作品の価値はどう決めるのか?

では、次に、自分の作品の在り方を考えてみましょう。
下記のような質問に、自分で答えてみてください。

Q.インテリア的な作品なのか、稀有な芸術性を追求するのか?
Q.多くの人に所有してもらうのか、エディションを絞り、コレクターズアイテムや美術館ピースを目指すのか?
Q.長く定番作品を販売したいのか。どんどん新作に取り組みたいのか?たとえばエディション3で販売して売り切れるともう販売できない。でも、次々と新作に取り組める人なら、売切れたら次の新作にいこう、ということもできる。エディション数は、作家の哲学や作品のスタイルにもよります。
エディションが少ないことがデメリットになるわけではありません。

実際に値段をつけるとき、「だいたい5万円?」みたいに考える方が多いかもしません。

個人的な意見ですが、価格で迷ったら「安い方」で。「4万か5万円か」で迷ったら4万。4万からあげることはできるけど、5万から下げることはできません。

また、SALEはよほどの理由がない限り禁じ手です。安く売るときでよくあるのは、たとえばチャリティのときなどですね。

写真家のNさんは、5年前にPOETIC SCAPEで個展したときと比べると、値段は1.8倍にあがっています。それがなぜかというと、継続的な作家活動や美術館での展示実績、そしてなにより海外展開を本格化したため。そうなると価格はあがっていきます。

Oさんはエディション12、10万円からスタートしています。Oさんも数年前からすると価格は上がっています。海外のギャラリーからは作品価格をもっと上げたいと言われているようですが、日本の国内で買ってほしいという思いがあるので、まだかなり抑えられた価格になっています。

ふだんからギャラリーやアートフェアに、「買うつもり」で行ってみましょう。見る目が変わります。「写真を見る」ことの上達のいちばんの近道は買うこと。そうなると本当にシビアにいいのか悪いのか、本当に買っていいのかどうか、価値があるかを考えます。それが売る側になったときに、自分に返ってきます。

いかがでしたか?

今回は作品の値段についてお話いただきました。
自分の作品に値段をつけることは、これからのステップアップを考えることにもなり、
成長につながるはずです。
ぜひ、みなさんの作品も今回のお話を参考に、値段をつけてみてください。

次回は、サインの入れ方やプリントや額の選び方について解説していただきます!
講座は若干名のみ受付中!(申し込み状況によって完売の可能性あります)


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