分析的に風景を見つめる――SWPA特別功労賞を受賞・写真家カンディダ・へーファー インタビュー
写真業界における偉大な功績を讃える、ソニー ワールド フォトグラフィー アワード(SWPA)の特別功労賞。
本年度はドイツの現代写真を代表する写真家カンディダ・へーファーが選ばれた。
授賞式翌日サマセット・ハウスにて行われたインタビューに、イッセイミヤケの服に身を包んだ彼女は、静かに現れた。
取材:ヤン・ケビン(御苗場・ソニー賞 受賞者)
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カンディダ・へーファー。ドイツのデュッセルドルフ美術アカデミーにて、ベルント&ヒラ・ベッヒャーから写真を学んだカンディダは、アンドレアス・グルスキーやトーマス・ルフと並ぶドイツ現代写真を代表する作家として知られる。
初期の作品では、ドイツに住むトルコ人労働者を撮影したドキュメンタリーも撮影していたが、世界的に知られているのは、美術館や図書館といった公共施設の室内空間を撮影し、人間がつくり出した“空間そのもの”を被写体とした巨大なプリント作品の方だろう。
「ドキュメンタリー作品を撮影していたころから、プライベートな空間に入り込んで撮影することに抵抗を感じていました。一方で、その頃からすでに(トルコ人労働者たちが働く)レストランやショップなどの内装も撮影していて、人々が暮らす空間の重要性をわかっていました」。
アーティストの初期の作品において、後期の作品へと続く共通点が見つけられることは少なくない。だが、プライベートの空間から公共の施設へと被写体が変わり、そして写真の中に人間が含まれなくなることで、作品そのもののスタイルは全く異なるものへ進化した。
特に、際立っているのがまなざしの距離感だ。
「距離感の違いは明らかですね。人の撮影では被写体との距離は近くなりますし、空間の大きさも距離に影響します」。
公共空間を撮った作品からは、まるで数百年後の世代が過去の文明を観ているかのような客観性をも感じる。
「写真には、撮るという瞬間が必要です。でも、私が最も楽しみを見つけ出すのは最初のテストプリントが上がってくる瞬間なのです。目の前にあるプリントと対峙しながら、記憶ではなく、イメージそのものと向き合います。色、光、クロッピング、サイズなど、さまざまな決定がそこでは行われます。私にとって創作とは撮影後に起こるものです」。
ここで彼女が創作と答えた作業は、まさにイメージの分析作業によって決定される事柄だ。
分析的とは彼女の作品を象徴する一言であり、同時に、それは作品制作プロセスにも一貫した哲学のようにも思える。
プリントサイズはどうやって決めているのだろうか。
「私のプリント作品とカタログに掲載された写真とでは受け取る印象が全く異なるように、あるイメージには正しいサイズが存在します。サイズの変更は、イメージを変えない限りおこりません」。
現在はデジタルカメラでの作品制作を行っているカンディダ。日常的に持ち歩いているというソニーRX1では「被写体の細部に目を向けた抽象的な作品」を撮影しているという。常に進化を続ける彼女の新作からも目が離せない。
最後に、若い作家に対するアドバイスを求めると、「辛抱と忍耐」そう優しく答えた彼女は、訪れた時と同様に、静かに会場を後にした。
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