ソニー ワールド フォトグラフィー アワード|御苗場ソニー賞受賞者が体験した世界レベル写真賞にチャレンジする意義とは?
今年で11回目を迎えたソニー ワールド フォトグラフィー アワード。
全てのフォトグラファーが無料で応募できるこの賞は、初回の2007年から2016年には応募総数が100万枚を超えました。
本アワードは、賞金総額30,000USドルに加え、最新のソニーデジタルイメージング機器が授与されるほか、受賞者による展覧会がロンドンのサマセット・ハウスで開催されています。
横浜御苗場2018でソニー賞を受賞したヤン・ケビンさんが、賞の副賞として、ロンドンで行われたソニー ワールド フォトグラフィー アワードの授賞式に出席。その様子をご紹介します。
写真・文=ヤン・ケビン
賞金総額300万円以上! ソニー ワールド フォトグラフィー アワード2018 一般公募部門・受賞者発表!
賞金総額300万円以上! ソニー ワールド フォトグラフィー アワード2018 プロフェッショナル部門・受賞者発表!
分析的に風景を見つめる――SWPA特別功労賞を受賞・写真家カンディダ・へーファー インタビュー
ロンドンの高級ホテルに600人以上の写真関係者が集結
もし、写真愛好家が趣味程度に、またはプロが普段の仕事だけにとどまっていたとしたら、本当にもったいない。
それが、ソニー ワールド フォトグラフィー アワード(SWPA)の授賞式を経験した、私の今の素直な気持ちだ。
「写真を貪欲に追求したければ世界に出よう」。そう、この記事を読んでいる全ての方に伝えたいと思う。
ロンドンの高級ホテル「ヒルトン・オン・パークレーン」にて行われた表彰式。まず驚いたのは、その規模だ。会場にはメディアや評論家など、写真関係者が世界中から集まる。その数は600人を超える。
ガラ・ディナーと呼ばれる晩餐を兼ねた式に、タキシードやイブニングドレスに身をつつみ、レッドカーペットを歩き入場するその光景は、さながらフランスのカンヌ映画祭のようだ。
ステージの後ろに設置された3つの巨大なディスプレイ。そこでは各部門のファイナリスト(最終候補作品)の紹介映像が流れ、それぞれの部門の優勝者の名前をプレゼンテーターが読み上げる。
受賞者にはトロフィーが手渡され、会場からは割れんばかりの拍手でその功績が称えられる。写真の賞をこれほど盛大に祝うなんて、今までの常識が覆され驚くばかりだ。
実は、このセレモニーの少し前、国ごとの参加者に贈られるNational Awardの授賞式がホテル内別会場で行われ、そこでも世界数十か国から受賞者たちが集まりお互いの功績を祝いあう姿があったのだが、まるで写真のオリンピック開幕式に参加したような体験をした1日だった。
サマセット・ハウスでの受賞展示
翌日、大勢の一般来場者で混雑する前に、私はSWPAの受賞作品が展示されている。ロンドンの歴史的建造物サマセット・ハウスのギャラリーに足を運んだ。
ギャラリーと言っても、私たちが想像するような写真ギャラリーではない。国立美術館のような立派な公共施設で、会期中には受賞作品を見るために、約3万人の来場者が毎年訪れている。
1位の作品のみでなく、Shortlist(入選)作品も含まれており、絵画などのアート作品と同じように丁寧に額装、展示されている。
ギャラリーの中の空間も広々としており、余裕のあるレイアウトはゆっくりと、ひとつひとつの作品に目が行くように設計されていた。写真をやっている人間であれば、誰でも憧れてしまうような展示空間だ。
写真家カンディダ・ヘーファーの展示も
また、本年度の特別功労賞として表彰されたドイツの写真家カンディダ・ヘーファーの作品も展示されており、それらはさらに大きなスケールで壁一面を飾っていた。
人の身長よりも大きいプリントの前に立って作品を眺めていると、写真集などでは感じ取れないものまで見えてくる気がして、いつの間にか時間だけが流れていた。
今回、ロンドンで行われている一連のSWPAのイベントをすべて取材して感じたのは、受賞者やスタッフだけが知る特別な体験だ。それは賞金や商品以上に、「未来につながるチャンス」を手にしたという幸せな気分に思う。
開館する前のギャラリーで、SWPAを主催するWPOの創設者スコット・グレイ氏の説明を聞きながら作品をゆっくりと観られるという贅沢な待遇。世界的な写真家カンディダ・ヘーファーへの取材。そして、学生部門ファイナリストたちのポートフォリオレビューも間近で見ることができた。
ポートフォリオレビューは、日本国内と違い少し辛口でピリピリした雰囲気で、作品を並べた時点で、見せる側も見る側もみんな真剣勝負。そこから得られるものの密度もきっと違うのだろう。
いつの間にか「私も応募してみたい」というやる気が満ち溢れてきた。改めて、ここに来られて良かったと思う。
2日間の取材スケジュールを終えた後、プライベートでいくつかの美術館を巡った。ロンドンでは、ほとんどの美術館・博物館の常設展は無料だ。
ヴィクトリア&アルバート博物館では図書館的な機能も設けており、アポイントを取れば一般人でも収蔵されている写真集やプリント作品を閲覧することができる。アート好きにとってなんとも寛容な環境だ。
今日、インターネットの発展によって世界がフラットになり、世界のどこにいてもSWPAのような世界的な賞に応募が出来る。
来年、より多くの写真家がチャレンジし世界に評価されることを楽しみにしている。そのときは是非、現地に行き、アートが溢れる世界を自分の肌で感じることをお勧めしたい。
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