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フォトまち便り「Hello Local」vol.18 郡山写真部~まちの視点が変化する私の撮影実験


紀南、富山、郡山、下田の4つの地域写真部が綴っていく連載企画「Hello Local」。今回は郡山写真部の松田さんに記事を書いていただきました。今回のテーマは「撮影実験」。撮影実験?それは撮影者本人が外部から受ける情報(読み物や人の話など)によって視点がどう変化するかというものだそう。何とも面白そうな試みですね。今回は松田さんが撮影に親しんだ安積歴史博物館を舞台に卒業生のインタビューを行い、変化する撮影の様子やその時の心情について綴っていただきました。


私は普段からカメラを持ち歩き、郡山市内で撮影することが多いです。写真というものはファインダーをのぞいてシャッターを切る。シンプルな動作かもしれませんが、私にとって写真は自分の考えや心情が画に乗り移るものだと考えています。

そこで今回は考え方や撮影時の見方の変化によって撮影した写真のビフォーアフターがあるのか試みてみることにしました。

内容としては、郡山安積高等学校の卒業生の方にインタビューをします。そして、インタビュー前と後で撮る写真がどんな変化をするかという、理科の実験のような楽しそうな試みです。

今回撮影スポットは、安積歴史博物館。レトロな佇まいが写真好きの方からも人気のスポットで私もこれまで何回か訪れたことがあります。

※安積歴史博物館について。こちらは、郡山市の福島県立安積高等学校の敷地内にある、博物館です。明治22年、県内唯一の中学校・旧福島尋常中学校として開設され、国指定重要文化財でもあります。1984年に安積高校の創立百周年記念事業により博物館として整備・一般公開されています。最近では、NHK朝ドラエールのロケ地としても使用されてます。

美しくレトロな安積歴史博物館(インタビュー前写真)

まずは、撮影した写真を見て頂きたいと思います。

建築的な要素やレトロな所に惹かれて撮影していたと思います。

寒色系のトーンが落ち着きを与える講堂。県外の知り合いも見た瞬間に感動した部屋です。

大きなシャンデリアがあり、パイプ椅子が綺麗に整列されている圧巻さに目を引き、訪れる度に撮影しています。シャンデリア・パイプ椅子・左右の窓と綺麗に整列されていて、構図的にも綺麗ですね。
ここで全校集会が開催されていると想像するだけでまるでドラマのワンシーンの様なイメージを持ちます。安積歴史博物館といえば講堂という印象が強いです。

講堂と階段を挟んで隣にある教室。昔のレトロな雰囲気がそのまま残されています。

教室に入った瞬間、高校時代に座る事が多かった後ろの席へ。奥まで続く机・少し遠くに見える黒板、この目線が自然と馴染む感覚があり、シャッターを切りました。黒板を見上げてノートを書いてる懐かしい感覚になったのかもしれません。

黒板の前の教卓には、訪れて人達がコメント記載できるノートがあり、県外の方や卒業生、在校生の方たちの様々な思いが書かれています。

昭和時代の軍服と思われる展示物

安積歴史博物館には、展示物が幾つも残されています。

その中でも軍服と思われる展示物が、左側に写り込む鮮やかな緑とコントラストを生んでいて目を奪われてしまいました。

撮影した写真は以上です。目で見た建築的な綺麗さやレトロさの雰囲気を感じ取り、シャッターを切っていました。また、落ち着いたカラーが多く、歴史的な建築物であると改めて思いましたし、美しいスポットが地元にある事が誇らしくなりました。

卒業生にインタビューしてみた

今回、写真部のNon.さんのお友達であり、卒業生の隂山真由美さんと長岡満弓さんにzoomでインタビューをしました。

インタビューをスタートすると話は彼女たちの学校生活から始まり、夜遅くまで勉強をして綺麗な星空を見た話やベランダテラスで楽しく過ごした話、卒業して年月が経過しているにも関わらず、ここまで昔の学校生活を思い出すかという様な濃密なお話をしてくれました。

私も脳内で、学校生活の情景を見るかの様な感覚になり想像しながら、インタビューを進めました。ここまで深く話せるのも楽しい学校生活を送ってきた二人の仲の良さがあるからだろうなあと思います。

インタビューで印象深く残ったのが、「開拓者精神・文武両道・質実剛健」と掲げられた学校の校訓です。OB・OGの方々は実に幅広く活躍されていて、その中だと私は元お笑い芸人ビビるの大内登さんを知っています。

現在は、お笑い芸人を引退され、テレビ制作会社の社長となりマルチに活躍されているそうですが、テレビ業界の中で幅広く活躍する為の突き進む強さは、校訓や学校生活から身についたのではないのだろうかと思いました。

撮影に変化はあるのか(インタビュー後写真)

ここからインタビュー後に撮影した写真をお見せしていきます。

入口にある三人の男性の銅像。

“この像は明治大正昭和の三代にわたりこの学校で学んだ安積健児の風貌を表現したものである”と表記がある。

インタビューのお話で聞いた、「安積高校は文武両道・常に夢の実現に向けて突き進む」

三人の男性が並び上を見上げている姿を見て、そんなワードが頭に思い浮かびました。撮影した構図も常に突き進む・彼らの自信を表現したくて、ローアングルで青空を入れて撮影しました。夢の実現に向けて進むそんな強さを表現できたかなと思います。

次に気になったのがこちら。

お話を聞いてから初めて知ったのですが、歴代の卒業生のアルバムが置いてあります。入口前の銅像も”明治大正昭和の三代にわたりこの学校で学んだ安積健児の風貌を表現”したとありましたが、安積高校は歴史をしっかり残す事を大事にしているんだと、アルバムのページをめくりながら思いました。卒業アルバムを見ると、皆さんの学校生活の楽しさが表情から伝わってきます。また、アルバムも年代が新しくなるにつれて、写真がモノクロからカラーへの切り替わりを体験できて、写真的な面でも素敵だなと思いました。

1階と2階を繋ぐ階段。建設されてから何人もの人が昇り降りをしている。今後も様々な人踏まれてツヤ(歴史)が増えていく事でしょう。

最後が階段の写真です。

こちらは、インタビューで隂山さんから「階段にはツヤがある。沢山踏まれてツヤが出ており、それだけ踏みしめてきた人がいる。」というコメントを頂いて、これは撮らなければならないという使命感が生まれました。実際によく凝視をするとかなりツヤがあって、卒業生の皆さんが楽しい青春を過ごした年数の証ですよね。

実験を通して感じたこと。

今まで撮ってきた安積歴史博物館の写真は、レトロな建築佇まい・綺麗な内装といったポイントばかりに目が良き撮影していました。しかし、インタビュー後の撮影では、今まで見向きもしない箇所に目がいき撮影をしていましたが、それは学生生活の思い出や証を探して撮影していた側面があったかもしれないです。

この記事に上げた写真以外も、ドアノブの少し古びた傷や復元教室の机の落書き、図書室の昔から読まれていた本等。感情や心情が残っている様な被写体を撮影しました。

貴重な機会をいただけた卒業生のお二人に感謝申し上げます。ご紹介頂いた写真部のNon.さんも有難うございました。

今回の試み(実験)を踏まえて、私が今後写真活動をする中で一つのヒントを見つけました。

それは、「人の話を聞いて撮影する事は面白い」ことです。

人の話を聞く、つまり新しい価値観に触れることで、自分の知らない日常面だったり非日常を発見する事ができます。この気づきをテーマに半年、一年、と写真活動を続けたら面白い写真達が沢山撮れて、写真との向き合い方が変化していくのでは思っております。

いかがでしたでしょうか。この記事を読んでいただいた皆さんも是非、写真を撮る際にそのまちの人とコミュニケーションを撮ってみると面白いかと思います。


松田達也(書き手)
1986年生まれ。郡山市生まれ郡山市育ち。
郡山写真部は2期生として入部。春夏秋冬問わず、地元の街並みにシャッターを切っている。
2021年からは東北フォトウォークの運営の1人として活動、イベントの企画・開催をしている。

Non.(取材協力)
1989年静岡県静岡市生まれ。
2019年結婚を機に福島県郡山市に引っ越し。
郡山を知りたい・写真仲間を作りたいという理由で同年、郡山写真部2期生として入部。
普段は会社員として勤める中、福島での日々の景色が新鮮で撮り続けている。
写真は社会人になってからずっと続けて趣味以上のライフワーク。
フィルムとデジタルで日々の暮らしを撮影している。

郡山に住む写真好きの仲間が集まり、2018年から活動をしている「郡山写真部」。

郡山のまち、人の魅力を「写真」を通じて見つめ直し、「#郡山写真部」で発信しています。

郡山写真部が取材・記事を書いて作ったデジタルフォトマップ「郡山フォトスポットガイド」コチラ


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