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HOW TO / 作品制作のヒント

シャッターを押したタイミングが抜群!ファットフォトコンテストVol.106入選作品発表!


6位「ふわり」アレグリ(埼玉県)

有元3位/計4pt/テーマ部門/オンライン応募

――次に6位は、テーマ応募でアレグリさんの作品「ふわり」です。有元さんが3位に選ばれました。

有元 風で揺れるスカートの膨らみ方がすごく素敵です。キャプションに「スカートの形の綺麗さを店員さんではなく風が教えてくれた」とあって、その文章も、この瞬間をおさえる視点も詩的だなと感心しました。正方形の構図もきちんと意識して撮られていますね。

大和田 僕も詩的なリズムのある写真だなと思ったんですが、この作者の意図として柔らかな質感やトーンを意識的につくろうとしたんじゃないかと思うんですね。背景の看板の赤がこのトーンになっているのを見ると、白黒のミックスの時にかなり自分で手を加えているのがわかります。そこまで意識するなら、もう少し自分の伝えたいことに合ったトーンに仕上げることができたんじゃないかなと思いました。

テラウチ カメラを持ちながら散歩をしていて、こんな風景を見つけたら思わず写真を撮りたくなりますよね。周りに直線的なものばかりがある中で、このスカートだけがふんわりと曲線になっていて、画面構成がうまいなと感じました。

 

6位「バードウォッチング」イトウエージ(千葉県・58歳)

テラウチ3位/計4pt/自由部門/プリント応募

――同列6位は、自由部門でイトウエージさんの作品「バードウォッチング」です。テラウチさんが3位に選ばれました。

テラウチ よくこの場面を見つけたなと思いました。この鳥の影は合成なのかと思ったんですが、はく製の展示が反対側のガラスに写り込んだものとのことで驚きました。鳥の影の中に実際の鳥が飛んでいたり、外を撮影している人がいたりと、色々な要素がきちんといい働きをしています。

大和田 トーンやシュールな切りとり方が印象的です。今回はカラーですが、モノクロで仕上げたら写真史に出てくる名作の1枚のようになっていたかもしれません。構成含め、完成度の高い作品だと思います。

有元 一発撮りで撮られたのは面白いですね。でも僕自身はこれが合成であってもいいんじゃないかなと思いました。合成写真が広まっている現代で、一発で撮ったからすごいというのは、ちょっと時代に反した感じがあるような気がします。画像処理などを使って、もっと自分の意図をしっかりと伝えられる形に仕上げてみてもいいんじゃないかと思いました。

 

8位「寒波」船見征二(栃木県・38歳)

有元特別賞/計3pt/テーマ部門/オンライン応募

――続いて8位は、テーマ応募で船見征二さんの作品「寒波」です。有元さんが特別賞に選ばれました。

有元 「寒波」というタイトルが気温と頭が寒いということをかけていて、ユーモアがあります。気になったものに素直に反応するのはいいですね。背景の神社やフィルムで撮られた質感が懐かしく感じました。今までにない皮肉っぽさが面白かったので、特別賞に選びました。

大和田 コントラストやシャドウの出方からは乾いた感じがしませんね。このシーンを切りとられたのは面白いです。全体的なトーンはいいのですが、あまり共感できる印象ではありませんでした。

テラウチ 僕もこの状況があったらカメラを向けるかもしれません。作者の方は、目の前にある場面を瞬間的に撮られたと思うんですが、水平垂直もきちんととれていて、背景の入れ方もうまいなと思いました。窓ガラスに映る空や、神社の紙垂の影も雰囲気があります。単純な面白さだけで撮るのではなく、切りとり方までしっかり考えて撮られていますね。

 

8位「ブラックパンサー」okirakuoki(東京都・40歳)

大和田特別賞/計3pt/自由部門/オンライン応募

――同じく8位は、自由部門でokirakuokiさんの作品「ブラックパンサー」です。大和田さんが特別賞に選ばれました。

大和田 猫の写真はいろんなコンテストでも見てきたんですが、こういう風に真横から猫のシルエットを撮っている写真はあまり見たことがなかったです。猫の写真としては新鮮ですね。すごく躍動感があるポーズで、背景の枯れた草ともマッチしています。欲を言えば、もう少しシャッタースピードを速くして明瞭な感じが見たかったなと思いました。

有元 確かにこれは見たことがないですよね。両足が蹴り出した形で伸びていて、ネコ科の動物が跳ぶときはこういう姿勢になるんだなと新たな発見がありました。目を引く写真だなとは思うんですが、タイトルにもっと工夫がみられると良かったですね。

テラウチ 猫のフォルムが見せやすい背景を選んでいて、画面構成もすごくいいですね。真ん中にきれいに猫が跳んできたうまいタイミングでシャッターを切れていると思います。

 

8位「ヘソ祭りの子」かじさわひろこ(北海道・70歳)

テラウチ特別賞/計3pt/自由部門/プリント応募

――同列8位は、自由部門でかじさわひろこさんの作品「ヘソ祭りの子」です。テラウチさんが特別賞に選ばれました。

テラウチ お腹にキャラクターが描かれている現代のお祭りの様子をうまく切りとれていますね。この写真を選んだいちばんの決め手は、派手な色彩。色彩はとても人に感情や影響を与えるものだと思うんですが、この派手な色味からは明るくて力強いパワーを感じました。写っているものも面白いし、雨が降っていたことでよりこの色彩が際立っていると思います。

大和田 色彩はすごく鮮やかで素敵ですよね。でも、全体を入れすぎたのかなという気がします。記録としてはいいんですが、作品としてコンテストに出すなら、もう少しクローズアップして撮っても良かったかなと思いました。

有元 大和田さんが言われたように、寄り引きは僕も極端にした方がいいと思いますね。赤で全部を覆ってしまうとか。迷ったから全部入れたという風にも見えてしまうので、もっと思いきった切りとり方に挑戦してほしいです。


STORY TELLER / 写真家達の物語 vol.37

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まちスナ日和