写真クオリティを最大限高めるためにお勧めのカラーマネージメントモニター。川音真矢さんBenQ SW270Cレビュー


写真を扱う人なら、一度は聞いたことがあるであろう「カラーマネージメントモニター」。
写真を仕上げるうえで非常に重要なツールなのですが、その重要性をきちんと理解できている人は実は多くありません。

これまで4名の写真家にレビューしてもらった、写真・映像編集用モニター、AdobeRGBモニターのSW270C
今回レビューをするのは、モノクロのストリートスナップを撮り続ける川音真矢さんです。
BenQのSW2700PTを長年使用してきたという川音さんに、比較をしながら語ってもらいました。

text:渡邊浩行

雑多な東京をモノクロで撮影し「街を往く人の表情」を捉えた作品

川音さんの作品

 

――川音さんは、どのような経緯でストリートスナップを?

川音 3年前に友人と写真展をやろうとした時に、軽い気持ちでストリートスナップを撮ったらハマってしまって。街でリアルタイムに人を撮るのがものすごく楽しかったんです。

ストリートスナップを始めたことで写真の面白さがよりわかってきて、そこから写真の勉強を始めたり海外のコンテストに応募するようになりました。運良く1年ほど前に、いくつかのコンテストで入選して、そこから本格的にストリートスナップを撮るようになりました。

――商業カメラマンとして仕事で写真を撮るのではなく、作家として東京のストリートを撮っているということですね?

川音 そうです。作家として活動しています。

――なぜモノクロで?

川音 最も重視しているのが、「街を往く人の表情」なんです。東京という都市の景観は色が派手で統一感がないから、カラーで撮ると被写体の人の表情が生きない、と思っているのでモノクロに統一しています。

ただし、あくまで「東京」で「被写体の表情を捉える」ためにはモノクロがベターと考えているだけで、モノクロに強いこだわりがあるわけではありません。

「画面上と同じプリントはできない」というイメージが覆ったことの驚き

――写真データの現像やレタッチ作業に通常使っているパソコン環境を教えてください。

川音 Windowsのデスクトップを使っています。撮影したRAWデータは『Capture One』で現像後、TIFFで出力します。それを『Photoshop』でレタッチしてからモノクロに変換して仕上げます。

――カラーマネージメントモニターを使ったことはありますか?

川音 初めて買ったカラーマネージメントモニターがBenQのSW2700PTで、現在も使っています。

――そうなんですか!

川音 カラープロファイルのこととかを全く知らなくて、最初は普通のモニターを使っていたんですが、展示向けの作品を作っている時に、モニター上で細部にこだわり作り込んでも、いざ出力すると、プリントに再現されていなかったんです。

――写真のどのあたりが「再現されていなかった」のでしょうか?

川音 色調やコントラストの感じが違ったり、シャドーの部分が潰れていたり。周囲の写真仲間も同じでした。

モニター上のイメージとプリントが違っていても「紙の問題かな」とか「そんなもんだよね」っていう感じで。画面上の写真とプリントアウトした写真は別物で当たり前だ思っていたんです。

――そこから、どうしてSW2700PTを?

川音 「カラーマネージメントの必要性」というブログ記事を読んだことがきっかけです。「カラーマネージメントモニターを使えば画面上で追い込んだ写真に近い出力ができる。こだわったプリントがつくれる」というようなことが書かれていました。

それでいろいろ探してみたら、SW2700PTはそのとき僕が調べたなかでいちばん安かった(笑)。カラーマネージメントモニターには高価なイメージがあったから「これはいい」と思って買いました。

――モニター上のイメージと実際に出力したプリントとのギャップの大きさを解消する手段として、カラーマネージメントモニターを導入したわけですね。実際に使ってどんな印象を持ちましたか?

川音 色調やコントラストなど、自分のイメージに近いレベルまでプリントを調整できることに驚きました。それ以前に使っていたモニターでは彩度を多少落とすくらいはできても、階調の再現は無理だったんです。

今でも画面上のイメージと出力したプリントを100%同じにすることはできませんが、近いレベルまでは簡単に持っていけます。プリントのクオリティが上がって、展示のモチベーションも上がりました。

――モニター選びは作品発表のモチベーションにも影響するんですね。

川音 そう思います。モニターを変えたことで、作品制作時に最後の一手を加えられる、ギリギリまでこだわれるようになったことは大きいです。

作業効率が格段にアップする「モノクロモード」「ホットキーパッド」

――SW2700PTは2016年に発売されたモデルですが、最新のSW270Cを使ってみていかがでしたか?

川音 画面が綺麗で見やすいですね。それと、モノクロモードが本当に便利。僕の場合、一度の撮影で1000カットから1500カット撮るんです。撮影したRAWデータを、まずはモノクロモードでチェックするんですが、すごく効率がいい。

SW270Cでは3段階の異なる調子でモノクロのシミュレーションできるようになりました。自分の写真のイメージに近いものをデフォルトに設定しつつ、そこから切り替えができるようになったのはすごい進化だと思います。

――新しくなったホットキーパック(G2)の使い勝手はいかがでしょう?

川音 SW2700PTと同様に、モノクロ、sRGB、AdobeRGB、それぞれにボタン一発で切り替えられるのが楽です。モノクロモードで選んだイメージをレタッチで追い込んでいく前に、元画像の光の当たり方やコンディション、色のノリを見たいので、一度カラーの状態にして確認するからすごく便利ですね。

G2ではダイヤルで細かな調整ができるようになって、より便利になったと思います。すでにワークフローに組み込まれているから、ホットキーパックがないと困るし、一度使った人は同じように感じるんじゃないでしょうか。

細かな調整がワンタッチでできるホットキーパック(G2)

細かな調整がワンタッチでできるホットキーパック(G2)

――まずは撮影したRAWデータをモノクロモードでチェック。レタッチするカットを決めたのちにカラーに切り替えて、光の当たり具合や元の色の状態を確認しながら追い込んだイメージを、最終的にモノクロのデータに変換するとのことですが、どうしてこのようなやりかたを?
モノクロ作品であれば、グレースケールに変換してからいじるのが一般的かと思うのですが。

川音 カラーの状態であれば、レタッチ時に赤だけを明るくするとか、黄色だけを暗くするとか、微調整ができるので、より細かく追い込めますから。

先にお話したように、被写体の顔や表情が一番大切なので、光が当たって顔に赤みがのっているかとか、グラデーションが綺麗に出ているかといった部分をカラーベースで微調整するほうが、モノクロイメージに変換した時に自分の思い通りにしやすい。

川音 シャドーの部分を潰す際にも、色ののりの具合によって、綺麗に潰れるか否かが変わります。明暗のバランスについても、カラーのデータのほうが微調整が効く。いろいろ試した結果、このやりかたになりました。モノクロ作品をつくる場合でもカラーのデータは大切なんです。

――なるほど。カラーのデータを色ごとに調整をしたほうが、モノクロに変換した際に細かなニュアンスを表現できるわけですね。
そう考えると、モノクロ作品であっても、SW270Cの強みである色域の広さや独自のムラ防止機能、ユニフォーミティは生きますね。27インチというサイズはいかがですか?

川音 やはり大きいほうがいいですね。作業時の見やすさだけでなく、画面が大きいとプリントアウト時のイメージもつかみやすい。展示する際の適正サイズは人によって違うと思いますが、僕の写真の場合、プリントした際の適正サイズは27インチのほうが近い。より大きめにプリントしたい場合でも、最低27インチくらいあれば、展示した時の迫力が感じとりやすいと思います。

細部に気が配られている機器は、作業全体のストレスを低減してくれる

――展示のイメージをつかむという意味では、タテ位置での表示が可能な点もメリットになりますね。ところで、ハードウェアキャリブレーションはどうしていますか? カラー作品の場合はマストだと思いますが、モノクロではどうなんでしょう?

川音 キャリブレーションは使っていますよ。自分の写真に基準を持たなきゃならないのは、カラーもモノクロも変わりません。カラーマネージメントモニターは、僕の写真にとっての、いわば中心点ですから。

――無料で提供されるキャリブレーションソフト、『Palette Master Element』は使ってみましたか?

川音 表示される指示に従って「次へ」をクリックしていくだけなので簡単でした。SW270Cはキャリブレーションの処理が速いですね。SW2700PTでは10分弱かかっていたのに5分から10分の間で終りました。

簡単さという点では、モニター自体が組み立てやすい設計になっているのも好感が持てます。梱包を解いてから使える状態にするまでに時間がかかると気持ちが萎えてしまうので。セットアップが短時間で済むは、僕にとっては大事なんです。

シンプルで組み立てやすい設計。

――Windowsパソコンを使っているとおっしゃっていましたが、WindowsユーザーにとってUSB Type-Cをサポートしているメリットは感じますか?

川音 ケーブルさえ用意すればモニターと1本で繋げて、ノートPCなら充電もできますから、助かります。そこはMacユーザーと変わりません。

セッティングが簡単、キャリブレーションが高速、ケーブル1本でノートPCと繋げるのは楽だし、重宝すると思います。細々した部分に気が配られている機器を使うと作業全体のストレスが低減する点も大きなメリットですね。

――その他に感じたことがあれば教えてください。

川音 遮光フードが最初から付いてくるのがありがたいです。内張に光が反射しにくい素材を使っていますし、高級感もある。触り心地もいいんですよ。SW2700PTと比べてモニタの縁が薄くなってカッコよくなったとも思います。

その他に、出荷前に1台1台を色調整した際のデータシートが付いてくることや、修理に出したときに代替機を貸し出してくれるサービスなど、ユーザービリティが全般的に高いと思いました。サポート体制がしっかりしていることが購入前にわかるから、信頼できるし心強いです。

クオリティを完璧なものにするためにも、モニターを妥協しちゃいけない

――東京でハイコントラストなモノクロのストリートスナップを撮るということは、森山大道さんのような先達の写真家と否応なく比較され、作家として作品を発表していくうえでシビアなことだと思います。

とはいえ、荒木経惟さんが「森山大道の凄さはシャドーとハイライトの間の階調にある」とおしゃっていたように、中間領域にこそ撮り手の個性は現れる。ゆえに、レタッチ時に中間領域の処理に気を遣うのではないかと思うのですが、いかがでしょう?

川音 その通りだと思います。コントラストを上げるということは、裏を返せば、中間領域をどの程度出すかということだと思うんです。シャドー寄りの部分を安易にグチャッと潰せばギラギラ感が強調されてしまうし、ハイライトはハイライトでデータをどこまで残すかで写真の印象は変わります。

モノクロでハイコントラストと一口に言っても、たとえば、被写体が身に付けている服の質感をどう出すかといった部分で、その強さというか表現は変わってくるんです。

――そう考えると、高性能なモニターを使うことには、モノクロ中心の写真家にとっても十分な意義があると思えます。

川音 シャドー部とハイライト部に極端に二分した作品をつくる場合はそこまでモニターにこだわる必要はないのかもしれません。

でも、モノクロ写真独特の中間領域にどこまでこだわるか、ギリギリの所まで追い込みたいなら、カラーマネージメントモニターを使うほうが有利だと思います。

――写真を始めてからおよそ6年。モノクロのストリートスナップに至っては、撮り始めて3年も経たずに海外の写真コンテストで入選と、作家として認知されるまでのペースが非常に速い印象を受けたのですが、モニターが果たした役割のようなものはあるのでしょうか?

川音 あると思います。1回の撮影で1000から1500カットを撮るということは先にお話しましたが、納得のいくカットは5000カットに1点あるか否か。歩留まりが悪いぶん、その1点に一球入魂。絶対に妥協しません。

「撮れてる」と思えたイメージを完璧に仕上げる、クオリティを確実なものにするために、モニターは重要です。それに、そこまで徹底すれば自信を持って発表できます。

不安を残した状態で出展するのは嫌だし、見に来てくれた人にバレるんです。逆に、その時の100%を出せば見てくれる人にも伝わる。モニターは妥協しちゃいけないと思います。

BenQ SW270C

☑Adobe RGB 99% 対応 映像・写真編集向けカラーマネジメントモニターSW270C
☑27インチ WQHD (2560 x 1440) の解像度
☑Adobe RGB99% / sRGB・Rec.709100%、DCI-P3/Display P3色域97%までカバー
☑正確な色再現を可能にするAQCOLOR技術採用
☑Pantone/CALMAN認証取得
☑動画編集に最適な1080/24P出力をサポート
☑Gamut Duo 機能により異なる色空間を一目で比較
☑故障時に5,000円で貸し出してもらえるセンドバックサポート!
標準で3年間の保証に加え、修理期間中に作業が滞らないように、同等性能の代替機を5000円(1回+消費税)で貸し出してくれる、有償サービスも。仕事中や作品制作中に突然の修理となっても安心。

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川音真矢(かわおと しんや)
1980年生まれ、神奈川県出身。2016年頃より東京の都市を中心にストリート写真を撮り始める。「VoidTokyo」のメンバー。マグナムフォトグラフィーアワード2017ファイナリスト、ソニー ワールドフォト グラフィー アワード2017のショートリストにノミネートされた。
HP:ashphoto.jp

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