美術館に作品が収蔵される喜びが支えに。選考された高倉大輔氏に聞くヤング・ポートフォリオの魅力


高倉大輔 TAKAKURA Daisuke (Japan,1980) 《monodramatic / crowd》2014©Daisuke Takakura

ヤング・ポートフォリオは「写真を通して世界の若者を支援する」ことを目的に、山梨県にある写真美術館・清里フォトアートミュージアム(K*MoPA)が1995年から行っている活動。

35歳までの若手写真家の作品を公募し、若手写真家の「原点」となる作品を後世に残すこの活動は、選考された作品を美術館がパーマネント(永久保存)・コレクションとして購入するという、ほかのコンテストと異なる特長を持つ、世界で唯一の企画です。

写真家の“原点”をコレクションする、「ヤング・ポートフォリオ」とは?

ヤング・ポートフォリオ(YP)とは、清里フォトアートミュージアムが、世界の若手写真家による優れた作品を、館のパーマネント(永久保存)・コレクションとして購入、展示することにより支援する活動。毎年35歳以下を対象に作品を公募し、2020年度の募集は4月15日(水)から5月31日(日)まで(コロナウイルス感染拡大による緊急措置として期間延長)。
詳細はこちらをチェック!>>若手写真家の作品を美術館が購入!ヤング・ポートフォリオってどんな賞?

 

本記事では、2015年度ヤング・ポートフォリオに選考され、独自の世界観で作品を発表し続けている写真家の高倉大輔さんに、ヤング・ポートフォリオの魅力についてお聞きしました。

高倉大輔
1980年生まれ。2013年「御苗場vol.13関西」にてTEZUKAYAMA GALLERY 代表・松尾良一レビュアー賞を受賞。2015年度ヤング・ポートフォリオにて作品が購入・収蔵され、同展のメインビジュアルにも起用された。2015年はfotofever(パリ)、「brave new world」(プラハ・DOX)にも参加。TEZUKAYAMA GALLERY所属。www.casane.jp

(左から)YPに応募した「monodramatic / crowd」はfotofever(パリ/2015年開催)のポスターに起用された。fotofeverへは2015年、2017年、2018年と参加。 / イタリアの雑誌「The Good Life Italia」。海外雑誌への掲載も多数。 / 雑誌PEN(2016/9/1号)の特集『世界を揺るがし、もっと面白くする若手10組。』に掲載。 / 日本カメラ(2020/2号)表紙に。

 

“自分がやる意味がある作品”を作ろうと思った

高倉大輔 TAKAKURA Daisuke (Japan,1980)《monodramatic / cait sith》2013©Daisuke Takakura

――収蔵作品「monodramatic」シリーズは、どんなきっかけで生み出された作品なのでしょうか。

高倉 「monodramatic」はひとり芝居をテーマに、ひとりの人物がもつ様々な側面や表情、可能性を物語とともに表現しています。

自分のオリジナリティはなんだろうと考えた時に、大学時代から携わってきた演劇が思い浮かびました。写真で演劇を表現する、演劇的な写真というイメージから一人芝居をモチーフにした作品を制作してみようと思い、友人の俳優を実験的に撮影させてもらいました。しかし撮影した当時は合成をして作品を作ることに対して抵抗があり、しばらくそのままにしていたんです。

その後、参加した御苗場(※)で賞がとれなかったことが悔しくて。スナップ写真をベースにした作品を出展したのですが、自分が作る意味のある作品が必要だと思い、そのままにしておいたイメージを組み合わせて作り始めました。

半年後に再度出展した御苗場で、レビュアーのTEZUKAYAMA GALLERYの松尾良一さんから賞を頂くことができ、その頃からこのシリーズをコンペなどに出品するようになりました。

※御苗場:事前審査なく、誰でも参加が可能な日本最大級の写真展。編集者やキュレーターなど、写真を見るプロ6~7名によるレビュアー賞が選ばれる。
 

日本を代表する写真家に見てもらえるチャンス

高倉大輔 TAKAKURA Daisuke (Japan,1980) 《monodramatic / classroom on the moon》2013 ©Daisuke Takakura

――ヤング・ポートフォリオにはどうして応募しようと思ったのですか?

高倉 ヤングポートフォリオのことは、ギャラリーを巡ったり、コンペをいろいろと調べていく中で知りました。

その時の選考委員だった、細江英公さん(清里フォトアートミュージアム館長)、森山大道さん、北島敬三さんに自分の作品を見ていただけるということや、現在活躍されている写真家が多数選考されていることが応募の大きなきっかけです。選ばれた作品が美術館に購入・収蔵されるということも魅力に感じました。

ウェブ応募が可能なコンペが多くなる中、プリントでの応募は少し敷居が高く感じましたが、出してみようと思った年が年齢制限的に最後の年だったので、チャレンジしてみようと思いました。応募料も比較的安いなと思いましたね。

 

ヤング・ポートフォリオの収蔵作家のなかには、国内外の様々な賞を受賞した人、写真集を出版した人、大学などで後進の育成にあたっている人など、多くの優秀な写真家が誕生している。
本城直季 HONJO Naoki(Japan、1978)《Practical Landscape》2002 ©︎ Naoki Honjo / ヤング・ポートフォリオ(2004年 計5点収蔵)

林 典子 HAYASHI Noriko(Japan、1983)《キルギス さらわれる花嫁》2012 Unholy Matrimony © Noriko Hayashi / ヤング・ポートフォリオ (2010,2011,2012,2013, 2015,2017 計60点収蔵)

古賀絵里子 KOGA Eriko (Japan,1980) 《浅草善哉》2006 Hana and Zen ©Eriko Koga / ヤング・ポートフォリオ(2006,2009,2010,2013計23点収蔵)

山元彩香 YAMAMOTO Ayaka(Japan,1983) 《Untitled from the series Nous n’irons plus au bois》2013 © Ayaka Yamamoto / ヤング・ポートフォリオ(2017 計6点収蔵)

 
――応募にあたって気を付けたことはありましたか?

高倉 撮影・プリント技術などはあまり気にし過ぎず、提出限度枚数内でできる限りたくさん送ってみました。
 

美術館に作品を購入してもらえたことが、自信につながった

高倉大輔 TAKAKURA Daisuke (Japan,1980) 《monodramatic / alice》2012 ©Daisuke Takakura

――選考・購入されて何か変わったこと、得たものはありますか?

高倉 作品を購入してもらえたということが、とても自信になりました。パーマネント・コレクションとなり、ずっと残ると約束されるのは作家の気持ちを支えてくれる、とても稀有で嬉しいことです。

(左)2015年度ヤング・ポートフォリオ展(2016年開催)のポスター。(右)同展チラシ。

また、展示の際のメインビジュアルにしていただいたので、他の露出とも併せ、「作品を見たことがあります」と言っていただくことが多かったです。他の年度で選考された方とヤング・ポートフォリオの話になったり、清里フォトアートミュージアムのスタッフさんと今でも連絡をとったりしていて、関係性の広がりもありました。

――清里フォトアートミュージアムでの展示はどうでしたか?
「2015年度ヤング・ポートフォリオ展」展示とオープニングの様子。

高倉 とても嬉しかったです。オープニングで他の購入作家さんたちと会えたり、直接選考委員の方々に作品の講評をしていただけたのも貴重な経験となりました。細江さん、森山さんに挟まれて3人で撮らせていただいた写真は、今も机の中に忍ばせてあります。
 

ヤング・ポートフォリオの歴史に自分の作品が組み込まれる

高倉大輔 TAKAKURA Daisuke (Japan,1980) 《monodramatic / step-high》2013©Daisuke Takakura

――ヤング・ポートフォリオの魅力や、応募するメリットは何だと思いますか?

高倉 選考委員の方々や現在活躍されている写真家が多数選考されていることに加えて、これからも続いていくであろうヤング・ポートフォリオの歴史に自分の作品が組み込まれるということが魅力だと思います。

選ばれなかった作品には、選考委員が作品を見た“印”が残されて返ってきます。これは惜しかったんだなとか、これはやっぱりダメだったかとか、作品について再考する機会になると思います。

選考の“印”とは?
作品選考は、清里フォトアートミュージアム館長の細江英公氏のほか、現役写真家2名が選考委員を務める。3名それぞれが良いと思った作品に付箋をつけ、3つの付箋が揃うと最終選考に残るというプロセス。作品は付箋が付いたまま返却されるので、選考委員の評価と自分の評価を比較することができる。過去には、構成を変えて再度応募し選考・購入となった作品もあれば、作風を変えて応募し、購入となったことも。
2018年度の選考の様子/(左)上田義彦氏、(中央)川田喜久治氏、(右)細江英公氏

>>細江英公氏が語る「ヤング・ポートフォリオ」動画はこちら

 

自分の原点に立ち帰るひとつのポイントに

高倉大輔 TAKAKURA Daisuke (Japan,1980) 《monodramatic / air》2013©Daisuke Takakura

――今後の活動について教えてください。

高倉 今まで制作してきたシリーズは各々折を見て制作を続ける予定です。同時に、コミュニケーションと写真の関係性にフォーカスした作品も模索しています。展示は、会期未定の延期になりましたが、EMON PHOTO GALLERYでの“ChainReaction『いま注目すべき10名の写真作家達』”に参加予定です。

――最後に、応募を検討されている方にメッセージをお願いします。

高倉 ウェブで応募するコンペよりも、時間的な余裕を持って準備をすることをおすすめします。35歳以下の方は何年も継続して送ってみるとよいと思います。できれば自分もそうしたかった。将来、自分の原点に立ち帰るひとつのポイントになると思って、収蔵を目指してみてください。

 

【5月31日締切!】2020年度ヤング・ポートフォリオに応募するには

2020年度ヤング・ポートフォリオの応募は4月15日(水)~5月31日(日)まで。プリント応募で、単写真でも組み写真でも応募ができます。詳細な応募要項は募集ページをチェックしてください。

細江英公氏が語る「ヤング・ポートフォリオ」動画はこちら

2020年度ヤング・ポートフォリオ作品募集
■応募対象者:1985年1月1日以降生まれの方/国籍 プロ、アマチュアを問いません。
■受付期間(Web登録受付および応募作品受付):2020年4月15日から5月31日(必着)まで
■応募形態/注意事項:
・単写真でも、組み写真でも最大50枚まで受付ます。
・CDなど記録媒体での応募はできません。プリントのみ受付ます。
・既発表、未発表を問いません。すでに発表された作品、受賞作品、他のコンテストに応募された作品でも構いません。
・選考された作品は、1枚につき3~10万円で購入します。ただし組写真であっても、全てを購入するとは限りません。
・ヤング・ポートフォリオで購入する作品は、当館の収蔵庫にて永久保存します。したがって、長期保存に耐えるプリント技法であることが基本条件となります。

■応募料(PayPal決済):日本国内からの応募料:2000円、海外からの応募料:US$15
■作品の発送先:受付期間内に下記住所へ送付、もしくは直接搬入してください。
〒407-0301 山梨県北杜市高根町清里3545-1222
清里フォトアートミュージアム「ヤング・ポートフォリオ」係(mail:info@kmopa.com)

 

「2019年度ヤング・ポートフォリオ展」の作品の一部を紹介!

淵上裕太 FUCHIKAMI Yuta (Japan, 1987)上野公園(いつもは、もっぱら歌舞伎町だ!!)、2017 UENO PARK (Generally, Kabukichō is the place for me!!) ⒸYuta Fuchikami

ヤング・ポートフォリオに選考された作品は、翌年の春~初夏にかけて清里フォトアートミュージアムにて開催される「ヤング・ポートフォリオ展」にて展示されます。
中間麻衣 NAKAMA Mai (Japan, 1987)港ONEWAY, 2017ⒸMai Nakama

2019年度ヤング・ポートフォリオの購入作品は2020年6月14日(日)まで展示予定でしたが、新型コロナウイルスの影響で当面の間休館となってしまったので、ここで作品の一部をご紹介。

また、清里フォトアートミュージアムのyoutubeアカウントでは、展示室と作品を撮影した動画が公開されているので、ぜひチェックしてみてください。<2019年度ヤング・ポートフォリオ展の動画はこちら

許力静 XU Lijing (China, 1986)Rat, 2010-15ⒸXu Lijing

アリョーナ・カハノヴィチ Alena KAKHANOVICH (Poland/Belarus, 1985)魂の花、2018 Flowers in the soulⒸAlena Kakhanovich

エリザベス・ハウスト Elizabeth HAUST (Russia, 1992)星の王子様、2019 little princeⒸElizabeth Haust

アガタ・ヴィオチョレック Agata WIECZOREK (Poland, 1992)Half-nude, 2018ⒸAgata Wieczorek

ライオネル・ベナン・チャイ・テック・シオン Lionel Benang CHAI Teck Siong (Malaysia, 1992)静穏、2017 SerenityⒸLionel Benang Chai Teck Siong

ピョートル・ズビエルスキ Piotr ZBIERSKI (Poland, 1987)無題「木霊・翳」シリーズより、2017 Untitled from Echoes Shades seriesⒸPiotr Zbierski

イ・ユズ II Yuzu (Korea, 1995)語る身 Kataru mi, 2019ⒸIl Yuzu

高島空太 TAKASHIMA Kuta (Japan, 1988)untitled, 2018ⒸKuta Takashima

Ryu Ika (China, 1994) Big Brother is Watching you, 2019ⒸRyu Ika

2019年度収蔵作品 全136点をWebサイトでチェック!

清里フォトアートミュージアムの公式サイトでは、これまでの収蔵作品を見ることができます。
[データベースへのアクセス方法]ヤング・ポートフォリオから、データベースをクリック。収蔵年度で探す、から2019年を選択。
<清里フォトアートミュージアム公式サイト(データベース):www.kmopa.com
 

 

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